2020年7月 7日 (火)

この頃詠みし歌

中村メイコ黒柳徹子は何時までも生きてゆくらしと思ふ時あり

よくしゃべる女性は長生きするらしも寡黙ならざる我どうなる

髭の似合ふ人と今日は語らへり爽やかな日本人元一等陸佐

横山大観小堀鞆音が住みてゐし谷中の街を今日も散歩す

堂々男児は死んでもよいと歌ひたる人達を思ふ夕暮の谷中

学生時代の友の消息を知りたしと古き年賀状をめくりゐるなり

如意輪観世音おはす御堂の前に立ち祈りを込めて経誦しまつる

父と母が護りたまへる観音堂われも日日(にちにち)参るかしこさ

父母(ふぼ)の墓所に祈り捧げる孫の顔 菩薩の如く見えにけるかも

墓石の上を飛び歩く猫一匹わが菩提寺は平和なりけり

千駄木の町をへ巡り過ぎし世を 偲べば新緑が眩かりけり

走り回る幼子たちを避けにつつ夕暮時の公園を歩く

中条百合子の屋敷のありし跡所(あとどころ)当時の門柱が残りゐるのみ

財閥とプロレタリア作家と大彫刻家の住みゐし建物が並びゐし所(安田楠夫・中条百合子・高村光雲光太郎父子)

宮本顕治百合子夫妻の住みてゐし屋敷の前に内務警保局官舎ありたり

|

2020年6月29日 (月)

この頃詠みし歌

飲食店に客は戻らずさみしげな顔をして主(あるじ)は厨房に立つ

朝倉文夫記念館の書棚には野依秀市氏の著書並びをり(朝倉文夫・野依秀市両氏は大分出身也)

すでにして店は閉じられ食すこと不可能となりし長崎ちゃんぽん

自衛隊の制服を着て帰宅せし父と遭遇せし押し売りは脱兎の如く逃げ行きにけり

駄菓子屋は消えてなくなりスーパーのお菓子売り場で幼児が泣く

真夜中の地震は恐し本棚より崩れ落ち来る書籍を如何にとやせん

六月の緑の木々は太陽に照らされにつつ光放てり

大観の住まひゐし屋敷は高きビルに挟まれりけり令和の御代に

溜息が出るやうなつまらなき歌並びゐる『角川短歌』

何時よりかすずらん通りといふ名がつきぬ昔は小便横丁と呼ばれゐし路地

わがことを施設の玄関で車椅子に座して待ちゐし母を偲ぶも

これの世を去りし父母(ふぼ)を幾年経ちても思ひ出すなり深き嘆きに

父もゐまさぬ母もゐまさぬこれの世に我はまだまだ生きゆかんとす

|

2020年6月17日 (水)

この頃詠みし歌

空家の前を今日も通り過ぎ住みてゐし老婦人の姿を思ひ出しをり

お茶の出ない初夏の会合何となく苛立ちて来るを許させたまへ

久しぶりに乗りたる地下鉄乗客少なく空気もきれいで清々しきかな

街は清く静かなりけれど経済の疲弊のことを嘆かざるべからず

何時死んでもかまふものかと思ひをれど次第に命が惜しくなりたり

爆破せよ何もかも爆破せよ自分の祖父と父の像も爆破せよ

三十二年間も元大統領の娘をば監獄に入れんとする今の大統領は地獄へと歩む

北も南も異常なる人間が国政を牛耳りをれば友好などあり得ざるなり

|

2020年6月13日 (土)

この頃詠みし歌

世の更けの廊下に足音響きゐる薄気味悪きマンション生活

我は我他人は他人己が意志を曲げることなく生きゆかんとす

安倍晋三も小池百合子もそんなに悪人と思へねど嫌悪の情を持つ人多し

靄の中にそっと浮かべる朧月 昨日も今日も都を照らす

うっすらと見ゆる月影を仰ぎても地上の騒乱鎮まることなし

雷鳴が響き雨が降り出せば良きシャワーなりと喜びてをり

警察官が膝つきて民衆を弾圧せぬ姿勢を示すアメリカは良き國

明日もまた生きゆかんとす明後日もまた生きゆかんとすそれが人生

鎮守の森も社(やしろ)もなべて美しけれど神に仕へる人々は如何に

|

2020年6月 3日 (水)

この頃詠みし歌

酔ひし友より電話かかり来ぬ静かなる夜に霹靂の如く

 

あと三十年は生きねばならぬと思ひつつひと日ひと日を大切にする

 

父母(ちちはは)は一体何処(いづこ)におはします逢ひたけれども逢へぬ悲しさ

 

父にも母にも会ひ得ざる悲しみは深くわが心に刻まれてゆく

 

味の素を使ふ人はほとんどいなくなり化学調味料といふ言葉もなし

 

吉井勇の祇園を歌ひし歌読みて過ぎにし旅を思ひ出しをり

 

今日よりは平常営業と居酒屋の主人は嬉しげに言ふ初夏の夕暮れ

 

容保公の悲劇の生涯を偲びつつ會津中将といふ酒を酌む

 

朝敵と断じられたる悔しさを万斛の思ひと言ふべかりけり

 

孝明帝の下したまへる感状を抱きつつ生涯を終へし松平容保

 

生涯に一度はあるべしあの世への道歩み行く旅に立つこと

 

我はまだ若き命をみなぎらせ今日のひと日を健やかに生きん

 

|

2020年5月25日 (月)

この頃詠みし歌


真夜中の如くに暗き街となるわが千駄木の午後八時過ぎ

食べ物を詠む歌多き我をしも食ひしん坊なるかなと恥ずかしく思ふ

美しき女(ひと)の面影懐かしく今日も浮かびて我を励ます

美しきものは永遠の喜びなりとの言葉くりかへし人を偲びぬ

今度会ふ時までは元気に生きようと友と自らに言ひ聞かせゐる

久しぶりに来たりし酒場で昔からの知り人と密な接触しつつ酒酌む

お馴染みさんといふ言の葉のピッタリな人々がカウンターに並び酒呑む

隣席に座りゐる青年は楽しげにチューハイを何杯も呑む

元大統領を三十六年も監獄にぶちまんとする文在寅次は汝の番と覚悟せよ

バスは走りタクシーは走り人は歩き日常の生活戻りつつあり

次第次第に人も自動車も多くなるを喜ぶべきか不安な心

ホテルと旅館閉館のニュース聞くごとにわが旅心萎へてゆくなり

十二億の民を支配するに強権と武力に以外に術なき如し

吉井勇の歌を讀みなばわが心癒されてゆく京を思ひ出し

近江路に雪は降りつつ湖に船浮かびゐて静かなりけり

古代よりの歴史を刻む近江の海に訪れし日に雪降りしきる

|

2020年5月13日 (水)

この頃詠みし歌

油虫も虻も動き始めたり新型ウイルス猖獗してをれど

谷中霊園でひときわ大きな墓石は徳川慶喜と渋澤栄一

妻もゐて子供らもゐたる友達も何ともさみしき生涯を終へぬ

大量の人を殺せば英雄で少なく殺せば犯罪者とチャップリンは言ふ(映画『殺人狂時代』)

惨き兵器を用いて多くの人々を殺したるスターリン・トルーマン・毛沢東は英雄なるか

歴史上の英雄譚を肯定する心少しく薄らぎてきぬ

混迷の世に夜空を仰ぎたればアララキララ星座は今日も広がりてをり

若き医師の言葉を一語一語真剣に聞きつつ明日よりの健康を期す

腹一杯になるを喜ぶ我にして團子坂下にてカルボナーラ食す

塩分をひかへるべしとの御託宣は何としても守らねばならぬ

カラスミもコノコもコノワタも食したけれども食してはならぬ

夕食をつくると言ってもレンジに入れチンをするだけの手間にぞありける

贈られしマスクをつけて商店街を闊歩する時の心地良さかな

若き友が背中を丸めて料理作る夕闇迫る根津のパスタ店

林檎一つ買ひて家路を急ぐなり半世紀以上の独身生活

はるばると訪ね行きる奥飛騨の村人たちとの宴懐かし

奥飛騨の村人たちの作りくれし山菜料理を今に忘れず

仏像も神像も我に有難く展覧会場で早く拝みたし

何時になったらこの国難は終るのか上野なる美術館に早く行きたし

もうすでに七十歳は過ぎたるになかなか安穏の境地にはなれず

|

2020年5月 5日 (火)

この頃詠みし歌

「マスクをつけ顔の三分の二見えない人多しこの頃会ふ人みな美しき」

與謝野晶子の歌「清水へ祇園をよぎる桜月夜こよひ逢ふ人みなうつくしき」の「本歌取り」です。
かういふことは入院してゐた時に看護師さんを見る度に思ひましたが、今や町全体がそんな感じですので、思はず腰折れ歌にしてしまひました。

|

2020年5月 3日 (日)

この頃詠みし歌

皆家に籠りゐるらし人影のなくなりし道灌山交差点に立つ

 

父母を送りて強く覚知せり如何ともし難き父母との別れ

 

大聖寺藩下屋敷跡といふ公園に鬱蒼と茂る樹木を仰ぐ(千駄木にある須藤公園は品川弥二郎屋敷跡なり)

 

明治維新を権力の移動なりと厳しく批判せし人もゐるなり

 

山県有朋品川弥二郎は殿様になりたる気分で豪邸に住みぬ

 

明治政府を足軽政府と罵りし荷風散人を半ば肯定す

 

家に籠り原稿書きてゐれば良き我はまだ幸せなるや

 

骨壺に入りて帰宅せし女優これほどあはれなる事なかるべし

 

白髪の随分増えたるその夫骨壺抱へて礼をして家に入る

 

あまりにもあっけなく世を去る人多し医学進歩せりといふ今の世の中

 

遠き日を思ひ出しをれば出でて来る友らの多くはこの世を去りし

 

会へずなりて五十年は過ぎにけり静岡引佐に住みゐたる友

 

お暑いこってと挨拶されし老人は引佐の郡のわが友の父

 

幻よりもはかなくも浮かび消えにけり友の故郷の引佐の山河

 

一心欲見佛不惜身命人の命の力強さよ

 

現世安穏後生善処を信じつつ生きてゐるなる人の幸せ

 

キャンキャント吠えるばかりのレンホーさんもう好い加減に引っ込むが良し

 

総理も都知事もやや疲れたる顔をする内憂外患のうち続く日々

 

足を引っ張りケチをつける他に何もなき立憲共産は汚らはしきかな

 

悪逆ロシアに奪はれにける島々を取り返すべき時近づきぬ

 

友達と知床半島を旅行きてカムイワッカの滝に遊びぬ

 

奪はれし国後島が目の前に見ゆるが悔しき知床の旅

 

 

 

 

|

2020年4月23日 (木)

この頃詠みし歌

次第次第に感染者増えゆき人々の不安は増し来る末世の如く

中学時代にはじめて讀みし法華経の自我掲をば今日も忘れずにゐる

「唯仏与仏乃能究尽」といふ言葉何故か忘れず今も覚えゐる

近頃は丁寧にシャワーを浴びるなり加齢臭とやらを防がんとして

嫌な言葉を拒みて耳を塞ぎたし加齢臭とアルツハイマー

頑張りてあきなひ続けるお店にてイカと牛蒡の天婦羅買いて来ぬ

負けるものかとの心意気ひしひしと感じる夕暮れの市場

日常の喜怒哀楽を歌に詠み心たらへる我にしありける

十万円を貰ひたい人は手を挙げろと麻生財務大臣はのたまひにけり

寒き夜にパスタを食べに来たりけり幼馴染みが生みし子の店

一つの文章を書き終へて安堵の胸撫でおろす春とは言へど寒き夜の更け

人間は老い病み衰へて死にゆくが何とも切なき定めなりけり

|

より以前の記事一覧