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2019年1月 1日 (火)

新しき年を迎えて

皆さま新年あけましておめでとうございます。

 

十代の頃から天長節皇居参賀・新年皇居参賀をさせて頂いている。一回も欠かしたことはない。しかし、昨年末の天長節と今年の新年は皇居に参賀することができない。まことに残念だし。申し訳ない。

 

 

天長の佳節なるに参賀にも行けずに一人病室に伏す

今上陛下最後の天長の佳節なれど我は一人で病室に伏す

天長の佳節の空を仰ぎつつ皇国日本の彌榮を祈る

天津日子の天降りませる日の本は永久に滅びることなきを信ず

昨年末に詠んだ拙歌である。

 

 

『萬葉集』は神話の時代来の「日本の中核的な傳統精神」をうたいあげた真の意味の「古典」であり國家変革・激動・外患の危機の時代の歌集である。

『萬葉集』は、大化改新・壬申の乱・白村江(はくすきのえ)の戦ひ(唐新羅連合軍と日本百済連合軍の戦ひ)の敗北という國家変革・激動・外患の危機の時期の歌集である。『萬葉集』が生まれた時代は、明治維新の時期とよく似ている時代であり、今日の日本の状況ともよく似ていた時代であった。

 

『萬葉集』の時代は、わが國が外国の思想・文化・政治制度・法制度を受容した時代であった。わが國が異質の文化(特に仏教・儒教という精神文化と唐の政治法律制度の受容)に遭遇した激動の時期であった。これに対峙するためにわが國傳統的精神文化が興起した結晶が『萬葉集』である。 

変革の意志のないところに価値のある文藝は生まれない。『萬葉集』は復古即革新=日本的変革の歌集である。古代日本の律令體制下において、文化革新・文化維新を希求した歌集である。現代においてもそのような文化維新が望まれる。

 

わが國は白村江の戦い・元寇・明治維新・大東亜戦争など、國家的危機の時に、ナショナリズムが燃え上がった。そしてそれ一體ものとして「まごころを歌ひあげる言の葉」としての和歌が勃興する。それが『萬葉集』であり、幕末維新の志士の歌であり、大東亜戦争で散華した英靈たちの歌である。

『萬葉集』は、決して平和安穏の世の文藝ではない。内憂外患交々来るといった國難状況の時に生まれた歌集である。それは明治天皇が

 

「世の中のことあるときはみな人もまことの歌をよみいでにけり」

 

と歌われている通りである。

今日の日本も萬葉時代と同じようにわが國には朝鮮半島及び支那大陸からの外患が迫って来ている。精神的・経済的・政治的・軍事的苦悩を強いられてゐる現代においてこそ、また自然災害の危機がいつ訪れるか分からない今こそ、『萬葉集』の精神の復興が大事である。『萬葉集』に歌われた精神の回復によって現代の危機を乗り越えなければならない。混迷の極にある現代においてこそ『萬葉集』の精神へ回帰するべきである。

 

『萬葉集』の掉尾を飾るに相応しいうたが、大伴家持の日本讃歌である。

 大伴家持は、日本の國の國柄の素晴らしさを後世に伝へなければいけないといふ使命感を持って、『萬葉集』の編纂に関わり、自らも歌を数多く詠んだ。

 

三年春正月、因幡國の廳(まつりごとどころ)に、國郡の司等に饗(あ へ)を賜へる宴の歌一首

 

新しき年の始の初春の今日ふる雪のいや重(し)け吉事(よごと)」

 

 大伴家持が四十二歳の時の賀歌(お祝ひの歌)で、『萬葉集』最後の歌である。天平宝字三年(七五九)の正月(太陽暦では二月二日)、因幡の國(鳥取県東部)の國廳(行政を扱ふ役所)で、因幡守(今日の県知事)であった家持が、恒例により郡長などの部下に正月の宴を与えた時に詠んだ歌である。

 

「いや重け吉事」の「重け」はあとからあとから絶える事なく続くこと。通釈は、「新しい年のはじめの初春の今日降る雪の積もるように良きことが積もれよ」という意。

 

元旦に雪が降るのは瑞兆で、その年は豊作であるといわれるていた。しんしんと雪が降り積もるようにめでたきことも重なれよという願いを歌った。雪の降る眼前の光景を見て歌った平明で清潔で堂々たる『萬葉集』の掉尾を飾るに最も相応しい名歌である。

「言事不二」といふ言葉がある。「言葉と事實と一致する、言葉と事實は二つではない一つである」「言葉に出したことは實現する」といふ意味である。

家持が、「いや重け吉事」と歌ったのは、めでたい言葉を発することによって吉事が本当に事實として實現すると信じたのである。

 

『萬葉集』の最後の歌にこれを収め、一大歌集の締めくくりにしたのは、國が混乱し、世の有様は悲痛であり慟哭すべきものであっても、否、だからこそ、天皇國日本の國の伝統を愛し讃へその永遠の栄えと安泰を祈る心の表白であらう。

 

『萬葉集』編者(家持自身とする説が有力である)は、祝言性豊かなこの歌を全巻の最後に置き、『萬葉集』を萬世の後まで伝へやうとする志を込めたといはれてゐる。ともかくこの歌は、わが國の数多い和歌の中でもとりわけ尊くも意義深い歌である。

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