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2018年10月19日 (金)

自然の生命を尊び、自然と人との一体感を実現する行事である「祭祀」が自然を破壊し人の命を軽んずる現代の状況を救済し打開する

自然の生命を尊び、自然と人との一体感を実現する行事である「祭祀」が自然を破壊し人の命を軽んずる現代の状況を救済し打開する。

 

日本列島はモンスーン地帯に属する温暖湿潤な自然風土であり、年間降雨量も多く、森が豊かに生育した。森では木の実や山菜など豊かな食料が供給された。そして清く豊かな水、温かな太陽、豊かな国土に恵まれてゐる。日本の自然は、時に荒れることはあっても基本的に穏やかで美しく人間に対してやさしい存在である。

 

日本の自然環境は他国と比較すれば温和であり、四季の変化が規則正しい。日本は一年中極寒あるいは酷暑が続くことはない。

 

日本民族は、自然が持ってゐるリズムに逆らふことがなければ、基本的には、自然と共生して生きていくことができる。古代日本人は、人生も自然であり、人の生活は自然の中にあるものであって、人間は自然の摂理と共に生きるべきと考へた。そして、人が自然を破壊し自然の摂理に歯向かふ時、人間は自然の報復を受け。災ひを受けるといふことを体験的に知った。報復と言って悪ければ、摂理に逆らふことによって害を受けることを知ってゐた。自然を畏敬し、自然に順応して生活することが大切であることを知った。

 

日本の神々は、今はやりの言葉で言へば、想定の範囲以上の激しい力を発揮する畏怖すべき生命であり霊である。無限の可能性を持つと言ひ換へてもいい。その無限の可能性は、人間に恩恵をもたらすばかりではなく、時に災ひをもらたす。古代日本人は体験的にそう信じた。

 

古代日本人は、自然は人間と対立するものでも、征服する対象でも、作り替へるものでもなく、人間と一体のものであるといふこと体験的に知ってゐた。自然を神々として拝ろがみ、自然に随順し、自然の中に抱かれて生活してきた。

 

自然を神として拝ろがみ、自然と自己とが霊的・生命的に一体であるといふ信仰の自然な形での実践が祭祀である。自然を畏敬し、自然に順応するといふことは、自然の神、自然の精霊たちを畏れるだけではなく、祭祀によって神や精霊たちを祓ひ清め鎮めることである。日本人が古来行なってきた「祭祀」は、まさに自然の生命を尊び、自然と人との一体感を実現する行事である。

 

日本人は旅する時には、訪れた土地の神々を祀り、山に登る時には、その山の神を拝ろがんだ。だから西洋のやうに「自然を征服する」とか「自然を改造する」などといふ考へ方は元来なかった。人の力を試すため、冒険のため、征服するために山に登るなどといふことは無かった。国土や山の神明を敬ふ旅であり登山であった。

 

日本人は、「山びこ」(山の谷などで起こる声や音の反響)のことを「こだま」即ち「木霊」「木魂」といふ。山野の樹木に霊が宿るといふ信仰から出た言葉である。まさに日本人にとって、山野には霊が宿ってをり、深山幽谷は精霊の世界だったのである。

 

原子力開発が「自然の摂理」に歯向かふものであるかどうかは、私には分らない。しかし、日本人のみならず現代の人類は、自然を破壊し自然の摂理に逆らって文明の進歩発展・経済発展の道をひたすら突っ走ってきたことは確かである。

 

近代以後、科学技術の進歩発展によって、人間生活が快適になると共に、自然を神・仏・精霊として拝み、愛し、畏れる心が希薄になってしまった。自然を征服しようとか、自然を造り替へようなどといふ文字通り「神をも恐れぬ考へ」を捨てて、自然を愛し、自然の中に神仏の命を見る心を回復しなければならない。つまり、神々を祭る心の回復が大切である。古代日本の信仰精神に回帰しなければならない。荒ぶる神も祭祀によって鎮めることができるのである。

 

自然に宿る神や霊魂を畏敬する心を復活することが大切である。太陽の神・大地の神・海の神・山の神・水の神など、ありとしあらゆるもの、生きとし生けるものを、神と崇める日本伝統信仰に回帰することが今一番求められてゐる。

 

自然保護・自然との共生は、法令や罰則の強化による以前に、日本人が本来持ってゐる信仰精神を回復し今日に蘇らせることが自然保護の最高の方策である。法令や罰則の強化は必要ないとは言はないが、それ以前に、自然に宿る神や霊魂を畏敬する心を復活することが大切である。人間が自然を支配し造る変へることは正しいとする人間中心思想を脱却するにはこうした信仰精神に回帰するしかない。

 

自然保護・自然との共生は、自然の中に宿る生命と人間の生命とが本来一体であるといふ信仰的真実を実感し、自然を畏れる心を大切にすることによって自然に実現するのである。

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