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2018年6月17日 (日)

『さゞれ石―佐々木誠の木彫展』を参観して

本日参観した『さゞれ石―佐々木誠の木彫展』は、「天神地祇という言葉が、佐々木誠氏のこれまでの作品名に幾つか見られる。皇祖たる天神(あまつかみ)系氏族と、土地の守、氏神たる地祇(くにつかみ)系氏族―それらは太陽(/あま)と土・水(地、海/あま)との関係にも置き換えられる―の調和と統合ゆえに、日本の歴史の連綿―さゞれ石のごとくーはある。こんにち文明間の衝突は、ここに回避の知恵もあろうが、それは久しく覆い隠されているかのようだ。佐々木氏の仕事は、その知恵を顕現させることにもなるのではないか。作品から滲む敬虔さと、頂門の一針たる絶対的ちから、そして、『代()くだれりとて自ら苟(いやし)むべからず。天地の始は今日を始とする理なり(神皇正統記)』―氏はかつて正統記の一文を展覧会タイトルとした―とのやむにやまれぬ決意をもって」(田中壽幸氏が書いた推薦文)との趣旨で開催された。「久延毘古(くえびこ)」「沙々禮石(さゞいし)」「鏡」などの作品を参観。

 

日本の神話や歴史精神を制作の源泉とする木彫作品であり、迫力がある。「鏡」という作品はそのままご神体と思えるようであった。どの作品も神秘的力というか霊力を発散しているように感じられた。

 

佐々木誠氏は、昭和39年東京生まれ。日本神話から造形をイメージし制作を続けている彫刻家。これまで、「彫刻創型展」で文部大臣賞「彫刻創型展」で創型会賞を受賞し、湯島の羽黒洞で「祖形-ヒトガタ-」展などを開催した。小生が講師を務める『萬葉古代史研究会』にも参加しておられる。

 

佐々木誠氏も「やまと歌」を詠まれる。『さゞれ石』と題する佐々木の長歌を紹介する。

 

「奉祷 皇國彌榮 

苔むせる 巖(いは)が根響(とよ)み かぎろひの 磐(いは)さけ耀(ひか)り 靈(たま)(ゆら)ぐ 稜威(いつ)の神さび 凝(こゞ)しかも さゞれ石(いは)は 天地の 神祇(かみ)の氣吹(いぶき)ぞ あやに畏し

反歌

さゞれ石 むすぶ祈りは 皇神(すめらぎ)の 御代の榮えを 萬代までに」

 

日本の傳統信仰・神話と「やまと歌」を根幹にした魂の籠った彫刻を創作している人はそれほど多くはないと思う。有難いことである。

 

田中壽幸氏は推薦文で「天神地祇」について書かれてゐる。日本民族は太古より「天地の神」を信仰して来た。わが國の神は、根源は一つであるが、天の神・地の神、陽の神・陰の神に、ご使命・ご系統が分かれてゐる。

 

 

 

 天照大神の系統の神様が天の神である。天照大神の御孫であらせられ、地上に天降られて地上を統治される神が、皇室の御祖先である邇邇藝命である。また、天照大神の弟君である須佐之男命の子孫の神が國土の神であり邇邇藝命に「國譲り」をされた大國主命である。そして、神武天皇をはじめとした御歴代の天皇は、天の神・地の神の霊威を身に帯びられて國家を統治されて来てゐる。

 

 

 

 全國各地に、天照大神をお祀りした神社、須佐之男命をお祀りした神社が数多くあ鎮座してゐるやうに、わが國民は、天の神・地の神(天神地祇)を共に敬って来た。農耕生活を営む上において、天の恵み(太陽)と地の恵み(土と水)は欠かすことができないので、わが國の祖先は天神地祇を篤く信仰したのであらう。

 

 

 

 「天神地祇」と言ふやうに、日本人は、天の神・地の神を対立して考へず、一体のものとしてとらへた。天の神・地の神として全てを包み込んでしまひ、漏れ落ちることがないといふのが日本人の伝統信仰である。

 

 

 

 地の神である須佐之男命も、天の神である天照大神の弟神であられる。天の神も地の神も根源的には姉と弟であり一つなのである。

 

そして、須佐之男命は、天照大神に反抗されて高天原で大暴れするけれども、出雲の國に天降ると、豊饒の神となって、民を助ける。日本人は「天と地」・「善と悪」を厳しく峻別するといふ考へ方はなく、「悪」も見直し・聞き直しをすれば「善」となるといふ寛容にして大らかな精神を持ってゐる。

 

 

 

 キリスト教などの一神教では天と地とは隔絶した存在であり、人間がこの世から天國へ行くのは簡単ではない。イエス・キリストを神の一人子として受け容れ、信仰し、他の宗教を捨て、原罪を悔い改めなければならない。

 

 

 

 しかし、わが國の伝統信仰においては、天と地とは隔絶した存在ではないととらへてきた。わが國が四方を海に囲まれてゐて、水平線をよく見ることができる。水平線の彼方は海と空とが一体になってゐる。故に空のことも「天(アマ)」と言ひ、海のことも「アマ」と言ふ。日本人は、天地は一如であると観察してゐたのである。

 

 

 

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