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2018年4月21日 (土)

『生誕一五〇年横山大観展』参観記

本日参観した『生誕一五〇年横山大観展』は、「東京美術学校に学んだ大観は、師の岡倉天心とともに同校を去り、日本美術院を設立。新たな時代における新たな絵画の創出を目指しました。西洋からさまざまなものや情報が押し寄せる時代の中、日本の絵画の伝統的な技法を継承しつつ、時に改変を試み、また主題についても従来の定型をかるがると脱してみせました。やがてこうした手法はさらに広がりを見せ、自在な画風と深い精神性をそなえた数々の大作を生み出しました。本展では、40メートル超で日本一長い画巻《生々流転》(重要文化財)や《夜桜》《紅葉》をはじめとする代表作に、数々の新出作品や習作などの資料をあわせて展示し、制作の過程から彼の芸術の本質を改めて探ります。総出品数約90点を展観する大回顧展です」(案内書)との趣旨で開催された。

 

《屈原》明治三一年 《白衣観音》明治四十一年 《迷児まよいご》明治三五年 《瀑布(ナイヤガラの瀧・万里の長城)》明治四四年 明治四五年頃 《ガンヂスの水》明治三九年 《瀟湘八景》大正元年 《彗星》《焚火》大正四年 《群青富士》大正六年頃 《生々流転》大正一二年 《龍蛟躍四溟》昭和一一 《海に因む十題》昭和一五年 《或る日の太平洋》昭和二七年 《夕顔》昭和四年 《風蕭蕭兮易水寒》(昭和三〇)などを参観。

 

横山大観は明治大正昭和の三代を生きた偉大なる日本画家である。どの作品もその強烈さに圧倒される。初期の《屈原》は、共に東京美術学校を追放された岡倉天心をイメージして描かれたという。屈原は支那楚の時代の伝説的詩人で国政に関わるも讒言により追放され自死した人物である。屈原の無念さがその表情に表現されている。大観の師・岡倉天心の無念さが重ねられている。私はこの作品を見るたびに前進座を追放された河原崎長十郎が追放された後に演じた屈原を思い出す。テレビ中継で見たのだが、長十郎が「そなたたちは私を陥れたのではない。我が楚の國を陥れたのだ。全中華の人民を陥れたのだ」という鬼気迫る台詞が蘇える。《瀑布(ナイヤガラの瀧・万里の長城)》は大観が実際にかの地を訪れた時の雄大な景色の印象を同じ画面で描いた異色作。《彗星》は明治四三年に見たハレー彗星を描いた作品。彗星を描いた絵画は他にないと思う。《瀟湘八景》は支那の景色を描いている。「瀟湘」というと「君がため 瀟湘湖南の 少女らは われと遊ばず なりにけるかも」という吉井勇の歌を思い出す。吉井勇の歌は支那湖南省ではなく相模の国の湘南のことをしゃれて歌ったという。《群青富士》は今回展示された大観の富士山の絵では一番美しいと思った。富士山の青と雲の白と他の山々の緑の対照がまことに見事である。《生々流転》は長さ四十メートルを超える大作。自然の河の流れを人の一生に譬えているという説があったように思う。「大観」という号の通り、大自然と時間の流れを大きく観た作品である。《龍蛟躍四溟》は凄まじい作品というほかはない。龍と雲が今にも動き出すかのように見える。白と黒の色彩で描かれている迫力満点の作品。《風蕭蕭兮易水寒》は晩年の作であるが「風蕭々(しょうしょう)として易水(えきすい)寒し、壮士(そうし)一たび去って復(ま)た還(かえ)らず」という司馬遷『史記』の中の詩を題材にしている。秦の始皇帝の殺めようとして出発する荊軻のことを詠んだ悲壮な詩である。荊軻は事破れ逆に惨殺されてしまう。易水のほとりで荊軻を見送る犬がとても可愛く描かれている。もっとも初期作品は屈原を題材とし、大観が亡くなる二年前の最晩年の作品が荊軻を題材としている。どちらも悲劇の主人公であるのは不思議なことである。

会場で上映されていた記録映画では、岡倉天心が横山大観などと共に谷中初音町に創立した日本美術院の院歌を横山大観が歌っている声が流されていた。「谷中うぐいす 初音の血に染む 紅梅花 堂々男子は 死んでもよい」「奇骨侠骨 開落栄枯は 何のその 堂々男子は 死んでもよい」という美術学校の校歌とは思えない勇壮な歌詞である。

 

谷中初音町は小生の住む千駄木の隣町である。そして大観の墓所も谷中霊園にある。また、大観の住んでいた家は私宅近くの池之端にあった。そこは今、横山大観記念館なっている。この三つは私は散策する所である。

 

 

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