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2018年4月16日 (月)

『現行占領憲法』の思想的欠陥

 

 『現行占領憲法』の三原理の一つである「基本的人権の尊重」の精神的支柱は「個の確立」「主体性の確立」であるが、「個」や「自我」というものを如何にとらえるかが大事である。正しき人間観・國家観の確立なくして、正しき「個の確立」も「主体性の確立」もあり得ない。道義精神なき「個の確立」は欲望民主主義に陥り、正しき國家観なき「個の確立」は利己主義となる。それが今日の日本の姿である。

 

 國民一人一人の福祉・自由・生活のゆとり・文化的生活そして平和を求めることは大事である。しかし、その前提になるのは、日本國という共同体であり、日本國民の自覚という同胞意識である。しかし、戦後日本は「愛國心」とか「國家への忠誠」ということを「悪」として軽視されてきた。むしろ「國のため」という意識は「軍国主義である」として否定された。

 

 戦後世代すなわち戦後教育を受けた世代が、わが國の政界・官界・財界などの指導層になった頃から、國家意識の喪失が深刻化して来たと思う。戦前の教育を受けて来た官僚・政治家・財界人が健在であった時期の日本は、戦後復興に努力し、経済大國として蘇生して来た。戦後復興を為し遂げたのは戦前の教育を受けた世代の人々である。ところが、そうした世代が第一線を退いて行くと共に、日本はおかしくなって来た。

 

 國家意識の喪失とは、「國家」とは何かという基本問題に対する理解がおかしいために起こって来た問題である。大東亜戦争の敗北によって、「國家悪」というものが強調され、國家は國民を抑圧し、國民を搾取する権力機構であり、國民あるいは人民・市民に相対立する存在であるという、考え方が支配的になった。そして、「國を愛する」とか「國家に忠誠を尽くす」ということは犯罪的行為であると言う考え方に國民の多くが汚染されてしまったのである。

 

 戦後日本は戦勝國によって西洋の國家観を押し付けられた。西洋の國家観は、契約思想に基づいている。西洋は、神と人間とが契約を結ぶキリスト教という宗教がその基盤にある。アメリカから押し付けられた『現行占領憲法』はまさにアメリカの国家観に基づいている。

 

國家もそれを構成する人々の合意と契約によって成り立っていると考えられている西洋近代國家論の歴史的淵源はキリスト教の聖書である。『旧訳聖書』とは神と人との古い契約のことであり、『新約聖書』とは新しい契約のことである。近代思想家のロックにしろ、ルソーにしろ、社會契約説を唱える場合、必ず聖書の契約を持ち出している。

 

しかし、國家社會が人間と人間との契約によって成り立つという考え方は、全く架空の観念でありフィクションである。原始社會において人間が社會や國家を作ろうと合意して契約を結ぶなどという馬鹿げたことはあり得ない。家庭・社會・共同体で育てられない人間は狼少年になる以外にない。

 

ところが、この「社會契約説」はアメリカ合衆國という國を作り出すためには大きな役割を果たした。アメリカという國は建國以前は、全く法律のない「新天新地」であり、言ってみれば無法地帯であった。そこには天から天降った君主もいなければ、総督もいなかった。だから、植民者が自らが自らを治める以外になかった。こうしたことが契約國家論がアメリカにおいて受け容れられた原因である。

 

 メイフラワー号(一六二0年にイギリスからアメリカに上陸した清教徒の船。清教徒とは、十六世紀後半、イギリス國教會に反抗して起こった新教徒の一派。清浄に生活することを主張した。ピューリタン)で結ばれた『メイフラワー憲章』には、「主権在民」「信託による統治」「法の下における平等」が謳われていた。『現行占領憲法』の原理の淵源がここにある。

 

 今日のアメリカは「自由民主主義國家」の見本のように言われているが、かつては、メイフラワー号で渡米して来た清教徒たちの子孫が特権階級となっていた。メイフラワー号の子孫にしても、最初から船に乗っていた純粋な清教徒は四十一名とその家族だけで、途中から乗船した残りの人たちはいわゆる「ならず者」「刑余者」であった。清教徒たちはセインツ(聖者)として尊敬され、残りの者たちはデヴィル(悪魔)として差別された。

 

 そして、アメリカで一六四一年に制定された『マサチューセッツ法』では、「第一条 異神(キリスト教以外の神)を信じたものは死刑。第二条 魔女も死刑。第三条 神も死刑」と規定されていた。また「インディアンと一緒に住んだ者は三年の懲役」という規定もあったという。さらに、マサチューセッツでは、知事をはじめとした役人は必ず何処かの教會に属するクリスチャンでなければならなかった。

 

 これは一神教の排他独善性、残虐性が如実に現れた法律である。アメリカがキリスト教國家であるイタリアやドイツには原爆は落とさなかったが、非キリスト教國家であるわが國には原爆を二発も落とし、東京に大規模な焼夷弾攻撃を行い、大虐殺を敢行したのも、一神教の排他独善性、残虐性及び有色人種への差別意識にその原因があると思われる。また先住民の駆逐、奴隷制度などの有色人種に対する迫害、虐待も行われた。

 

 「現行占領憲法」の骨格となっている思想である「自由と民主主義」、そして「契約國家論」の淵源である「アメリカ建國の精神」及びキリスト教というものは、このような恐ろしき性格を有していたことを我々は正しく知っておくべきである。    

      

 

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