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2018年3月17日 (土)

昨年十一月二十三日に開催された『第三十四回新嘗を祝ふ集ひ』における稲貴夫氏(元神社本庁総合研究部長)による「御代替はり大嘗祭」と題する講演内容

昨年十一月二十三日に開催された『第三十四回新嘗を祝ふ集ひ』における稲貴夫氏(元神社本庁総合研究部長)による「御代替はり大嘗祭」と題する講演内容は次の通り。

 

「この度の御代替わりは、昨年(平成二十八年)八月八日の『象徴としてのお務めについての天皇陛下のお言葉』が出発点になっている。本年(平成二十九年)六月九日、『天皇の退位などに関する皇室典範特例法』成立。ご退位が、皇室会議で正式に決まる。今上陛下には長く御在位いただきたいという願いがあったが、想定外の事態となった。今上陛下は象徴としてのおつとめに全身全霊を込めて来られた。

 

戦後の皇室制度は、未整備のまま今日まで続いてしまった。ご譲位を是とするか否かは議論がある。近代以前を含めて考えるかどうかで結論も変る。天皇のご存在は憲法以前のもの。憲法を超越するご存在である。こういう観点から考えるべし。御代替わりには、即位礼、大嘗祭という国家と皇室の重儀が行われる。

 

現行皇室法には重大なる欠陥がある。皇位継承に不可分の『神器』『大嘗祭』が欠落している。葦津珍彦先生を中心とした皇室法研究会の『現行皇室法の批判的研究』(昭和六十二年十二月刊行)によって、政府関係者に皇統継承のあり方について理解が深まった。戦前は『登極令』があったが廃止された。戦前は、皇室財産である御料林は帝室林野局が管理した。国の財政とは独立していた。昭和三十五年に『伊勢の神宮の御鏡に関する質問に対する政府答弁書』で御鏡は皇位継承と不可分との答弁があった。根本的な法的整備が難しいが、一歩でも二歩でも正しいあり方に近づけたいという先人の努力。

 

大嘗祭の位置づけについて当時論争があった。國の行事とすることによって世俗・政治・政界の横槍が入らないように努力。大嘗祭に関する論争がある。『邇邇藝命が真床追衾にくるまって降臨する。大嘗祭には寝座にやすまれることによって天皇靈を身に付ける』という論があったが、多くの学者によって否定された。秘儀はない。天皇靈が身に付くことはないということになった。しかし、大嘗祭の信仰的・精神的意義を深く考えるべし。新穀をいただくことによって霊が蘇える。

 

平成の御代替わりでは日本の國柄を確認する行事が行われた。しかし極左のテロがあった。三十社の神社に時限発火装置が仕掛けられた。しかし、当時の神社関係者はテロに屈しないと決意した。平成の御代替わりと同様、今度も皇室と国民との強いつながりを確認し、盛り上げていくことが必要。

 

式年遷宮が国民の奉賛があったと同様、大嘗祭も国民全体が奉賛させていただく。日本文化の根底には稲作がある。人間の命の根源である食べ物の有難さを思う。皇位継承と密接に結びついている。稲を中心とする日本文化を考えるべし。

 

アジア島南部にはじまり、生産性が高く連作もできる水田稲作は、その栽培に適したモンスーン地帯へ広がって行ったと考えられる。その時代や経由地については諸説あるが、日本人が稲とその栽培技術を国家形成の基盤と捉えてきたことは間違いない。そのことは、私たちの祖先が辿って来た歴史にも、そして神話の中に記されたコメの起源神話などにも明らか。そして今日のいたるまで品種や栽培技術の改良が続けられてきた。

 

 

 

かつては三食お米を食べることが日本人の夢であり、先人たちはその実現を追い求めてきた。その営みは戦後まで続き、コメの完全自給を達成したのは昭和四十二年のこと。その頃、コメの生産量は過去最高の千四百万トン超を記録したが、以降は逆に余剰が問題となり、生産調整が進められた。現在の生産量は最盛期の半分程度であり、広大な耕作放棄地が生まれている。

 

 

 

同時にその間、食の多様化や経済のグローバル化の渦中に晒され、米離れは今日の過疎問題の原因ともなっている。現実と理想の狭間でコメ離れが進んでいく中、私たちの将来に関わるこの大きな課題を、国民全体が真剣に考える時を迎えている。

 

昭和三十四年生まれの私は、臨海学校に米を持参した。『斎庭稲穂の神勅(ゆにはいなほのしんちよく)』を継承し、御代替わりの際に深く考えることが大事」。

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