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2017年6月 5日 (月)

『はじめての古美術鑑賞ー紙の装飾ー』展参観記

昨日、根津美術館にて参観した『はじめての古美術鑑賞ー紙の装飾ー』展は、「日本の古美術はなんとなく敷居が高いという声に応えて企画した『はじめての古美術鑑賞』シリーズ。二回目の今年は、『読めない』という理由から敬遠されがちな書の作品にアプローチする一つの方法として、書を書くための紙、すなわち料紙(りょうし)の装飾に注目しました。華麗な色や金銀あるいは雲母(うんも)によるさまざまな装飾技法を、当館コレクションの作品を中心にやさしく解説するとともに、絵画に取り込まれた例もご覧いただきます。この展覧会が、書の作品に親しく接する機会となり、さらにはより深い古美術鑑賞への足がかりとなれば幸いです」(案内文)との趣旨で開催された。

 

大聖武 伝聖武天皇御筆 奈良時代 8世紀

五徳義御書巻 伝後陽成天皇御筆 桃山時代 16-17世紀

尾形切 伝藤原公任筆・平安時代 

百人一首帖 智仁親王筆・江戸時代 17世紀

今城切 藤原教長筆・平安時代 12世紀

難波切 伝藤原順筆・平安時代 11世紀

相生橋図 冷泉為恭筆・江戸時代 19世紀

百人一首帖 智仁親王筆・江戸時代 17世紀

八幡切 伝飛鳥井雅有筆・鎌倉時代 13世紀む

風俗図(部分)・ 江戸時代 17世紀

 

などを鑑賞。「書蹟」が多く展示されていた。書籍特に仮名文字は判読するのに大変苦労する。崩し字・変体仮名が多く讀み難い作品が多かった。『百人一首』や『萬葉集』に収められている歌は、初句さえ読めれば何んとか分かるが、それ以外は読解するのがとても困難である。しかし大変に美しい作品ばかりであった。

 

「大聖武(おほしょうむ) 伝聖武天皇御筆」は、聖武天皇が『賢愚経』(釈迦が、比丘たちに、三業の善悪とその果報について説いてゐるお経といふ)を書写されたと伝承される作品。紙本墨書。雄渾にしてたっぷりとした堂々とした大字で書写されてゐる。長い歳月、聖武天皇の御宸筆として尊ばれてきた。

 

第四十五代・聖武天皇は、佛教への信及び佛の慈悲と加護によって災厄から國家・國民を救ひたいと念願あそばされ、天平十三年(七四一)三月に『詔』を発せられて、諸國に國分寺(金光明四天王護國寺)・國分尼寺(法華滅罪寺)を建立するように命じられた。これらの寺は、鎮護國家の祈りを全國的な規模で行おうとしたものであった。さらに、聖武天皇は、天平十五年(七四三)『盧舎那大佛造立の詔』を発せられ、鎮護國家の祈りを全國的規模で行ふ日本國の総國分寺として東大寺を建立された。深い仏教信仰を持たれた天皇であらせられる。しかし、聖武天皇は、日本伝統信仰の祭祀主・現御神としての御自覚は正しく厳然と継承あそばされてゐたことは疑うべくもない事実である。奈良の大佛=盧舎那大佛建立は、日本の傳統的な信仰精神の佛教的表現である。盧舎那大佛は、太陽神の仏教的表現であり、天照大神のお姿そのものなのである。天地生成の神である伊耶那岐命・伊耶那美命二神の御子神が、太陽神であり皇祖神であらせられる天照大御神である。天照大神は高天原の主宰神であらせられ、その「生みの御子」を日本の永遠の君主と仰いできた。

 

日本民族は太古より太陽神を崇拝してきた。これは、日本民族は本来的に太陽のような明るさ・大らかさに強い憧れを抱いていたことを証明する。広大な前方後円墳にしても、東大寺の盧舎那大佛にしても、暗さは少しもない、明るく大らかである。また威圧感もなく円満である。

 

「五徳義御書巻 伝後陽成天皇御筆」は、儒教で説く五つの徳目「仁・義・礼・智・信」の要旨が書かれた書である。江戸時代以来、後陽成天皇の宸翰とされてゐる。法書(先人の筆跡を臨書したもの)として、青蓮院流(しょうれんいんりゅう・青蓮院門跡、尊円法親王を始祖とする書の流派)の堂々たる書風である。

 

第一〇七代後陽成天皇は、近世初期の天皇であらせられ、豊臣秀吉の権力掌握と豊臣家の滅亡、そして徳川家康の天下統一の時代の上御一人であらせられる。

 

聖武天皇・後陽成天皇の宸筆はまことに以て上御一人の書として大きな気宇を感じさせていただいた。

 

根津美術館の庭園を散策。鬱蒼と茂る樹木、池、そして所々に仏像や石塔が置かれている。東武鉄道創業者である初代根津嘉一郎氏は相当深い仏教信仰の持ち主であったと思われる。江戸時代の大名ではなく、近代になってからの個人邸宅跡の庭園としてはまことに広大なものである。東京には、根津家のほか、岩崎家(三菱)、古河家(古河鉱業)、五島家(東急)など大企業グループ総帥の屋敷跡の庭園が公開されている。何故か、堤家(西武)の屋敷跡とか堤家の美術館というのがないのが不思議である。

 

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