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2017年2月 6日 (月)

この頃詠みし歌

天津祝詞唱へて今日を恙なく生かしめたまへと神に祈れり

 

窓開けて朝風入れるすがしさよ 今日の一日(ひとひ)の始まりの時

 

大きなる樹木を仰ぎ 生命の力強さをわれも生きゆかん

 

空海のその名のごとく大らかな文字で書かれし墨跡を観る

 

閉じられし酒房の前を通り過ぎあるじ夫妻のことを思へり

 

老いといふ事を拒絶して生きゆかん そんな不埒は許されざるや

 

不慮の死といふ言葉は深く胸を打つ 懐かしき友の写真を見つつ

 

悲しみの深きしらべの歌を読み こみ上げてくる涙なりけり

 

あれもこれも読むべき本が並びゐる書棚を見つつ溜息をつく

 

眼鏡とは体の一部といはるるに置き忘れること多きこの頃

 

飼ひ主に従ひにつつ愛らしき仕草で犬はわが前を行く

 

カランカランとニコライの鐘の聞こえ来る昔と変わらぬお茶の水の駅

 

半世紀近き昔の三番町 木造校舎で『史記』を学べり(二松学舎の思ひ出)

 

赤きシャツ着て学校に行きしかば漢学の師にひどく叱らる(同)

 

『土佐日記』を講ずる萩谷朴先生その面影は今も眼裏にあり(同)

 

をのこゆゑお化粧をすることはなし 人前にさらす顔はこの顔

 

四十年前若妻たりし人は今日 孫の手をひき摺れ違ひたり

 

一人して夕空仰げば今日といふ日は暮れてゆく我は生きゆく

 

三日月がぼんやり浮かぶ空の下 歩み行きなばやすらぐ心

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