« 千駄木庵日乗二月二十七日 | トップページ | 千駄木庵日乗二月二十八日 »

2017年2月27日 (月)

この頃詠みし歌

 

母と子の姿尊し 人は皆親に育てられこの世を生きる

 

病癒え店に戻りしご主人が明るき笑顔を見せる食堂

 

部屋内に積みあげられし雑誌新聞如何にせんかと溜息をつく

 

静かなる街歩み来て風に動く暖簾を分けて酒房に入りぬ

 

幼き日ポンポン蒸気で隅田川を下り行きたる遠き思ひ出

 

寒き夜は友らと三人でうまきもの食しつつ語らへば楽しくもあるか

              ○

 

九十六歳の母が高熱を発すれば胸に手を当てて祈るほかなし

 

熱が下がりやすらひてゐる母上は我の手の平を離さうとせず

 

母上はわが手握りつつ眠りたまふ 如何に愛しきその寝顔かな

 

今日もまた坂道のぼり施設へと辿り着きたり母に会ふため

 

一日でも長くこの世に生きませとひたすらに祈る生みの子われは

 

百歳まではどうか生きませと祈るなり痩せ衰へし母の手を取り

 

医療施設介護施設の無情なる対処に憤る今宵なるかも

 

苦しめる母の頬をさすりつつ如何ともし難き我の無力さ

 

九十七歳を目前にしてわが母は衰へし体て横たはりたまふ

 

うっすらと眼を開け我を見つめつつおじいちゃんと呼びたまひたり

 

明るく気強く生きたまひたるわが母は我をのこして逝きたまひたり

 

冷たくなりし母の額に手を当てて安らかに眠れとただに祈れり

 

やさしき言葉明るき笑顔再びは聞くことも見ることも出来ぬさみしさ

 

さっきまで静かに眠りゐしわが母はついにこの世を去りたまひたり

 

父のもとへ行きて楽しく暮らしませ 九十六年生きたまひたる母よ

 

安らかに眠りたまへよ我を生み育てたまひしわが母上よ

 

|

« 千駄木庵日乗二月二十七日 | トップページ | 千駄木庵日乗二月二十八日 »

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/121949/64949997

この記事へのトラックバック一覧です: この頃詠みし歌:

« 千駄木庵日乗二月二十七日 | トップページ | 千駄木庵日乗二月二十八日 »