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2016年11月20日 (日)

この頃詠みし歌

萬葉の戀歌を讀みわが心切なくなりて書を閉じにけり

 

思ひ出の人はつひにこれの世を去り行きにしと聞く悲しさよ

 

乙女なりし人の面影いちしろく浮かび来たれることの切なさ

 

その人の兄と語らひ幼き日の淡き戀をばなつかしみをり

 

日の本の國の子として生まれ来てそのよろこびに魂(たま)ふるふなり

 

悔しさをかみしめにつつ今日の夜は一人筆を持ち日記書きゐる

 

贈られし松茸を焼き食しつつ友の情けをしみじみと思ふ

 

心のどかに生きてゆかんと空仰ぎ月の光を身に浴びにけり

 

幼き日より親しみて来し森永のキャラメルをなめつつ原稿を書く

 

一仕事終へたる後のやすらぎにキャラメルを口に入れにけるかな

 

原稿を書き終へしのち目の上にそっと手を置き疲れ癒せり         

 

神まつるみ社に来て手を合はすこの静かなる時を尊ぶ

 

大騒ぎすることも無しと思ひつつ妙な髪形のアメリカ人を見る

 

罵り合ひの果てに選ばれし大統領 自由民主国家アメリカ合衆国

 

昼の月ぼんやりと浮く空眺め うつつともなきわが心かな

 

わが父はこれの世を去り懐かしき面影のみぞ眼裏に立つ

 

二度と再び逢へざる父か さりながら御霊は常に我を護らす

 

紅葉の美しき庭に佇める秋の夕暮れの幸ひの時

 

電車の中に坐りゐる人の半分はスマホといふものに目を凝らしゐる

 

神々しき菩薩立像の白き姿仰ぎて今日の喜びとする

 

くどくどと愚痴こぼす如き歌ばかりの現代短歌を拒絶せんとす

 

口語短歌は何と貧しき表現かとても調べとはなりてはをらず

 

萬葉も古今も新古今も忘れたる如き短歌は滅びるが良し

 

我もまた独りよがりの思ひをば歌に詠みゐるかと自ら苦笑す

 

須佐之男命鎮まる根津神社 産土の神の御稜威かしこむ

 

切り忘れ伸びたる爪を愛ほしみ明日のいのちの恙なくあれ

 

黄葉の日に照り映える谷中墓地 眠る御霊も喜びゐまさむ

 

焼け落ちし五重塔の跡所 母と子供らが遊びゐるなり

 

清らけき天王寺の庭を眺むれば浄土は今ぞ此処にありける

 

散り敷ける黄葉を踏み歩み行く晩秋の日の谷中寺町

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