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2016年9月10日 (土)

歴代天皇に傳えられたわが國の道統

 神話時代・萬葉時代からの道統である忠孝精神は、幕末において強く発現し開花した。そして明治維新の原動力になった。

 

 水戸藩士にして幕末勤皇論に大きな影響を与えた會澤正志斎は、その著『新論』において、「君臣之義、父子之親」という二つの徳目を重大視し、あらゆる人間の道はこの二つの徳目の上に立つと論じた。そして肇國以来の皇國の道は忠孝の道にほかない、天祖の神勅も、祭政一致の傳統も、忠孝の道を説いていると述べ、「忠孝ヲ以テ國ヲ建ツ」と論じた。會澤正志斎は「忠孝」を國體の精神の根本としたのである。

 

 江戸後期の尊皇思想は、儒教の大義名分論の影響もあったが、その根本は神代以来のわが國の傳統を継承したものであった。わが國の傳統精神は外来の仏教思想や儒教思想を包容摂取してわが國の國體精神・傳統信仰と融合せしめたのである。     

 

 さらに明治の御代になると、明治天皇は、欧化の風、知育偏重の教育を憂いたまい、日本の教育精神・倫理の根本は「忠孝精神にある」との大御心によって『教育勅語』を渙発あそばされた。

 

 『教育勅語』には、「…我カ臣民、克ク忠ニ克ク孝ニ、億兆心ヲ一ニシテ、世世厥ノ美ヲ濟セルハ、此レ我カ國體ノ精華ニシテ、教育ノ淵源亦實ニ此ニ存ス」と示されている。

 

 親の恩愛を感ずる者が、天皇をお慕いする勤皇のまごころを持つ。親は、子に生命を与えてくださった方である。そしてその生命は溯っては祖先、くだっては子孫へと続いている。生命の連続とは単に肉体と血液の連続ということではない。慈愛の継承であり、心のつながりである。

 

 わが國の國體は、天皇を中心とした信仰共同体である。祭祀主としての天皇の神聖なる権威が日本國家の安定と統一の基礎である。その信仰共同体としての國を基礎としてその上部に政治機構としての國家が成立した。政治組織・権力機構としての國家の基礎に天皇を祭祀主と仰ぐ信仰共同体のとしての國がある。 

 

 政治機構としての國家は法律と権力によって運営される。しかし、その根本に傳統信仰を基礎とした國がある。その中心者が天皇であらせられるのである。

 

現実の國家はそれを構成する國民の私欲の追求によって悲惨な闘争が起こる。それを可能な限り抑制するのは、私欲を超越した無私という倫理性を体現する存在である。わが國においては天皇がそうした御存在である。

 

 肇國以来今日に至るまでわが國の歴史を貫き、将来にも継続する君主が、祭祀主日本天皇であらせられる。

 

 天皇は祭祀主として君臨されている。決して権力や武力によって國を支配しているのではない。権力や武力によって國を支配されるのではないということが、日本天皇の國家統治の御本質である。それは日本民族の稲作生活から生まれてきた傳統である。

 

 新渡戸稲造氏がその名著『武士道』において、「我々にとりて天皇は、法律國家の警察の長ではなく、文化國家の保護者(パトロン)でもなく、地上において肉身をもちたもう天の代表者であり、天の力と仁愛とを御一身に兼備したもうのである。」と論じている通りである。

 

天皇は、権力や武力の暴走、言い換えると権力者の私欲による権力と武力の行使を制限し抑制される権威をお持ちになる。天皇は権力や武力と無縁の御存在だということではない。むしろ権力や武力に対して道義性を与えられる。中世・近世・近代を通じて武家権力や軍に対してそういうおはたらきをされて来た。

 

 わが國の傳統的倫理・道義は、<神に対する真心の奉仕><神人合一の行事>である祭祀として継承されてきた。日本人の実際生活において行じられる祭祀そのものが倫理精神・道義感覚の具体的な現れなのである。 

 

 信仰共同体國家日本の祭祀の中核は天皇の祭祀である。したがって、日本國家の祭祀主であらせられる天皇は、日本道義精神・倫理観念の継承者であらせられるのである。

 

 明治天皇は、『教育勅語』に示された徳目を、臣民にだけ行じさせるのではない。『教育勅語』には、「朕爾臣民ト共ニ拳拳服膺シテ咸其徳ヲ一ニセンコトヲ庶幾フ」と示されている。天皇が道義実践の中心者であらせられる。それが皇祖皇宗から御歴代の天皇に傳えられたわが國皇室の道統なのである。

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