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2016年8月14日 (日)

浅川公紀筑波学園大学名誉教授による「米国大統領選挙と日米中関係の行方」と題する講演内容

五月七日に開催された『アジア問題懇話会』における浅川公紀筑波学園大学名誉教授による「米国大統領選挙と日米中関係の行方」と題する講演の内容は次の通り。

 

「米大統領選挙は予測が難しいから話題になっている。アメリカ国民のアメリカの国家システムに対するモヤモヤがある。トランプは極端な暴言で有権者の怒りを煽っている。それを支持する層が拡大している。既存の政治家に対する飽きが来ている。トランプはそれを良く分かっていたから有権者の怒りを扇動する発言をする。メディアは『ドラマは始まっているがトランプのやっていることは余興』と言っていた。荒唐無稽の発言をしている。テレビ受けするイメージ。これが国民に受けている。トランプは文化的素養を欠いている。伝記作家のマイケル・ダントニオは『トランプは大学時代から今まで真面目な本を一冊も読んでおらず、文化的素養を欠いている。マンハッタンのトランプタワーにペントハウスにも本を一冊も見なかった』と書いている。アメリカには内容の濃い報道よりも単純なフレーズが大衆受けする風潮がある。白人低所得者層・貧困層が熱狂している。

 

二〇〇八年のリーマンショックで数百万の白人中産階級が一気に低所得者に落ちて行った。こういう人々は経済成長の恩恵を受けていない。白人の低所得者層は自分たちだけが見捨てられたという挫折感がある。これを放置している政治に反発を持っている。不法移民が労働力になっている。税金を払っていないのに社会保障を与えているのは不公平と思っている。排他的民族主義が勢いを増している。ワシントンへの怒りが広がっている。この怒りが不信感を抱いてトランプに引き寄せられる。

 

トランプ自身も自分が被害者だと言っている。『トランプ自伝』には『良くしてくれた人にはこちらも良くする。けれども不公平な扱いや不法な処遇を受けたり、不当に利用されそうになった時には徹底的に戦うのが私の心情た』と書いている。エスタブリッシュメントの不公正への怒りがトランプにはある。

 

大統領になってもそういう事は出てくる。環太平洋パートナーシップに反対している。相手国に有利だがアメリカにとって不公平な協定と批判している。『日米安保』についてもアメリカが攻撃されても日本は何もしないのは不公平と言っている。トランプの不公平感が表に出ている。これに低所得者層は拍手している。中間層を中心として鬱積している不満が出てきている。反ワシントンブームが顕著になっている。中間層は医療保険制度に入らない人々の金を払うことに対して不満を募らせている。オバマケア(国民皆保険)があるのが良いとうのが前提ではない。

 

政治の素人がベテランの政治家よりもはるかに人気を高めたのが予備選の特徴。サンダースの善戦も既成の政治家への不信がある。庶民の不満をサンダースが代弁している。大学授業料無料化が受けている。金融機関に公的資金を投入しつつ若い学生を救済しないのはおかしいという議論がある。サンダースには若い人々の支持が多い。

 

一つの政権で国防長官が四人代るのは異例。オバマ外交がなめられている。オバマ外交への失望感がある中で、トランプがアメリカを強くするのではないかという錯覚がある。トランプは日米同盟の現状はアメリカにとって不利と考えている。軍拡競争を煽る発言をしている。世界的リーダーシップからの撤退。トランプは『世界の警察官』へは消極的。

 

アメリカは最早、自由と民主主義という価値観を世界が共有すべきであるとは考えなくなっているのではないか。かつてのアメリカとは変化している。テロとの戦いは必要だが、よその国まで出て行く必要があるのかというのがブッシュ政権末期。それを受け継いだのがオバマ。内向きの気分が高まっている。『危機に陥った全ての国の債権を引き受けることはしない』とオバマは言った。絨毯爆撃では問題は解決できない。トランプは海外との同盟に消極的。アメリカはアジアから離れて行く傾向あり。経済的発展にはアジアは重要。その点においてアメリカはアジアを無視することはできない。トランプは保護貿易主義。

 

日本が『核武装する』と言うと、アメリカはやめてくれと言ってくる。日本が独立し中国に立ち向かうことは可能か。トランプでもクリントンでも安保面では日本はもっと金を出せと言ってくる。

 

レーガンは大統領に当選する前は『世界戦争を起こすファシスト』と言われていたが、大統領になった後、冷戦を終結させた。今、立派な大統領として評価されている。共和党は自由と民主主義という価値観を大事にしてきた。しかしそう思わなくなった人が多くなった。

 

民主党はプラグマチズム。価値観外交よりプラグマチズム外交への移行の可能性あり。アメリカ人もものの考え方が変わってきている。黒人大統領も大きな変化。女性大統領が生まれるであろう。大統領候補者の支持層を人種だけで考えるべきではない。ヒスパニックの増殖率は高い。ヒスパニックの大統領が誕生するという冗談もある」。

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