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2016年8月13日 (土)

東京財団・明治大学国際総合研究所共催 国際シンポジウム2016 ―中国はどのような「大国」か?―』における登壇者の発言

四月二十五日に、明治大学 駿河台キャンパス グローバルフロントグローバルホールにて開催された『東京財団・明治大学国際総合研究所共催 国際シンポジウム2016 ―中国はどのような「大国」か?―』における登壇者の発言は次の通り。

 

高村正彦氏(自民党副総裁)「日本は戦後七十年間、どこの国とも戦争していない。兵隊を一人も殺していないし、殺されていない。『平和努力』と『日米安保・自衛隊』という二つの抑止力が相俟って平和を維持している。日本には、『憲法第九条を持っているから抑止力は有害』と思っている人がいる。日本が平和外交努力と抑止力が平和を維持して来たことに私は誇りを持っている。私は村山内閣の経済企画庁長官を務めた。村山氏が『自衛隊合憲・日米安保を肯定する』と言った感激し、不毛な論議は終ったと思って来た。しかし最近不毛な論議が始まったことを悲しんでいる。憲法の文言に忠実であると自衛隊は合憲かということに首をひねらざるを得ないのも現実。憲法制定当時に吉田総理は陸海空三軍を持っていないのだから自衛力を持っていないと言ったのに、その後自衛隊を持ったのだから政策の大転換。憲法の文言はともかく、常識に基づいて自衛隊を持った。五十五年体制の対立は、自衛隊・日米安保の抑止力は必要か有害かの対立であった。八〇年代にアメリカで『安保ただ乗り論』が出てきた。日本はアメリカの経済を台無しにしているという批判が起った。サダム・フセインがクウェートを席巻した時、『国連平和協力法』を出したが廃案。一兆円以上のお金を出した。クウェートの感謝広告には日の丸はどこにもなかった。そこでPKOをやった。高度な政治的問題は国会・内閣にゆだねるべし。『国連憲章』には『加盟各国に個別的集団的自衛権を与えた』と書いてある。昭和四七年の政府見解の法理の部分は、『砂川判決』の法理をそのまま引き継いでいる。国会は長く議論をすれば議論が収斂するわけではない。PKOの時も、憲法学者の八割は反対。『徴兵制になる』と言っていたが、徴兵制になっていない。三国会二百時間を審議に費やしたが故に国論分裂。昭和三十四年、『砂川判決』が出た。『憲法前文の平和的生存権を考えると、憲法九条二項を文言通り読んではいけないと。必要な自衛の措置をとる』という判決。日米同盟が緊密であることを発信し続けねばならない。そうでないとアイシルとの戦いも、南シナ海での戦いも出来ない。野党から出ている『廃止法案』に対して世論調査では反対が多い。『徴兵制』になるというのは合理性が無い。今は人海戦術の時代ではない。政治的合理性も無い。トランプの『安保ただ乗り論』がアメリカの国民に受けていることを我々は考えなければいけない」。

 

川口順子氏(東京財団名誉研究員、明治大学研究知財戦略機構特任教授)「外国を理解するのは難しい。中國は特に然り。中國は不透明性が高く、早いスピードで変化している。大変大きな國なので多様性がある。国際的影響力を強めているが、よく見えない。コミュニケーションが十分でないことが紛争の種につながる。中國への理解は大事。日本では、中国に対して日中関係という二国関係で見るきらいがある。中國はアフガンに関与している。日本ではそういう情報は見えてこない。我々は何をしたらいいのか。中國はどういう国なのか。二〇〇二年、中国政府は『共産党は統治政党』と言い出した。自分たちの正当化を言い出した。中國は選挙を省のレベルまで引き上げたことはない。習近平は弾圧を始めた。習近平の『中国の夢とは中華民族の偉大な発展。二〇四九年に全面的に先進国になる』と言った。それは政治改革や選挙に結びついていない。権力の集中を進めている。習近平の汚職撲滅のキャンペーンは党のあらゆるレベルの人々への捜査が行われている」。

 

王逸舟氏(北京大学国際関係学院副院長)「母国なのにどう理解していいか分からない。膨大な国であり変化している。革命第一世代の夢は海外の大国による支配から独立することを目指した。鄧小平がリーダーシップを持った第二世代は経済成長が第一の主題。鄧小平はそれを成功させた。一人あたりの所得を八百ドルにしたいと言ったが、今は八千ドルになっている。現在は、他の大国の比較する国民一人あたりの所得も低い。地域格差もある。このまま成長を続けることは容易ではない。共産党の基盤が変って来ている。汚職が深く広くはびこっている。所得の配分が課題。南シナ海に於いて緊張が高まっている。アメリカ・日本・アセアン諸国と戦争になるのではないかと言われている。南シナ海の問題は中国にとってものすごく小さな問題。戦争にはならない。軍事手脅威にはならない」。

 

宮本雄二氏(宮本アジア研究所代表/元中国大使)「経済が持続的に発展しない限り、中国の発展と中国共産党の統治はあり得ない。中国国内の安定のためにナショナリズムをどう取り扱うか。グローバル化した経済では他国と仲良くしなければいけない。仲良くすると国内の反発を招く。中国あらゆる分野で試行錯誤を繰り返している」。

 

菱田雅晴氏(法政大学法学部教授)「社会を考える時の重要な要素は、時間の経過と人口動態の変化。解放の後に生まれた人が全体の人口の九割以上。一九七八年の改革開放スタート以後に生まれた人も六割以上に達している。天安門事件以後に生まれた人は総人口の半分。中間層は現状肯定的であり、体制の担い手。中國は平等な貧しさから不平等な豊かさになった。絶対的貧しさ、失うものは鉄鎖のみという人々によって革命は起った。不満は広がっても体制転覆はない。権力構造を潰すことはない。パナマ文書に習近平の親族の名が出ても驚くに値しない。十三億のサイズを忘れてはならない。これをガバナンスとして統治して行くには共産党以外の組織があり得るのか。中国共産党統治が根底からひっくり返ることになっていない。他の選択がない」。

 

宮本雄二氏(宮本アジア研究所代表/元中国大使)「中国は三十数年にわたって十%以上の成長率を続けている。十三億の人口の所で人類が経験した事のない大変革。社会変革とは価値の多様化。清朝末期、中国人・漢民族は自分たちの考えていることは正しいと思い、他民族の考えていることは間違っていると思っていた。今の中国も同じ」。

 

エフィ・フィトリアニ氏(インドネシア大学国際関係学部長)「シンガポールは四百万人しかいない。中國とどう比較するのか。インドネシアは一億二千万人。中國ではベストではないが共産党以外に選択肢がない。国民に必要なのはいい政府であって必ずしも民主主義ではない。人口の多い国に適応できるシステムを作らねばならない。南シナ海での活動はマイナスイメージになっている。ASEAN諸国との平和的関係を保つことは小さい問題ではない。南シナ海で中国がやっていることは、世界で懸念が高まっている。アジアの国々は黙っていることはない。声をあげる時には声をあげる。中國が今のままでは声をあげなければならない。緊張が高まり脅威になり、アメリカが入って来たら、安定的関係は不可能になる。中國の戦略にアジアとしては対応しにくい。政治的経済的信頼関係の構築が必要。一帯一路の中国の提案は南シナ海での中国の行動があるので受け入れがたい」。

 

柯隆氏(富士通総研主席研究員)「経済力だけが強化されても大国にはなれない。経済・軍事力・文明の力の三つがなければ大国にはなれない。今の中国は文明が発展していない。大国にも強国にもなれない。三十五年間の改革開放の成功の功績は経済の成長ではない。三億人の中国人が自分の頭で考えるようになった。これが一番素晴らしいこと。しかし貧困層はそうなっていない。産業経済は政治統制下にある。国有企業の民営化はできない。民営化と私有化が混同している。経済をさらに自由化しなければならない。如何に消費を刺激するか。社会保障が出来ていない。格差がある。日本で爆買いしている人間は、中国で造られている製品を信用していない。資本ストックが過剰。中国独自の製品が出来ない。『模倣するとはメイドインチャイナと訳す』という冗談がある。今の中国のマーケットは最終消費財で競争が激しい。国有銀行が資金を独占しているが、これを取り除かないといけない。イノベーションをどう起こすのか。中國発の技術を開発しなければプラントは出せない。朱鎔基は改革に尽力した。スタンフォード大学からアドバイザーを呼んだ。今の政権には海外からのアドバイザーがいない。

 

肖耿氏(香港大学経済・工商管理学院教授、HSBC社外取締役)「中国は西欧・日本・アメリカをコピーする。真似し続けている。中国人はそこが嫌なら別の所に移動する。日本ではインフラはすでに作られている。中國は十分ではない。中國は三十年前は全てが不足していた。地方公務員のインセンティブがなくて経済が停滞した。安定した経済が必要。生産性の上がりそうなところにお金が流れ込んでいかないのが問題。我々の統治のシステムでは新しい投資はできない。経済圏構想である『一帯一路』は、習近平はお金を使ってインフラを作れば皆発展すると見ている。しかし軍事的戦略と誤解された。中国人も理解していない」。

 

津上俊哉氏(津上工作室代表/元経産省通商政策局北東アジア課長)「中国は解決するのに困難な深刻な問題を抱えている。今の共産党の合議システムで正しい解決が図れるのか、道は長い。中國は右と左に振り子のパターンが大きく振れる。中國は危なくなると危機回避のためにプラグマチズムの対応をする。三中全会のリフォームプランは七十点で終わる。落第はしないが『優』は取れないのが中国共産党。中國はとんでもない事だけにはならないでくれ」。

 

エリック・ヘジンボサム(マサチューセッツ工科大学主席研究員)「一九七八年から中国は改革をやって来たが、国有企業の民営化などこの二、三年改革できないことが出てきた。中國では大規模な市場改革が国有企業改革につながらない」。

 

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