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2016年4月 5日 (火)

シンポジウム「アジアの価値観と民主主義」における登壇者の発言

一月十九日に大手町の日経ホールで開催されたシンポジウム「アジアの価値観と民主主義」における登壇者の発言。

 

 猪口孝氏(新潟県立大学学長、東京大学名誉教授)「ヨーロッパはヒストリーで決められてきた。アメリカは哲学で決められてきた。アジアは自然との調和で決められてきた。アジアは長い歴史がある。紀元前二千年にゼロと1の違いを見つけた。ヨーロッパよりはるかに多い人口を抱えている。自由・寛容・人権・思いやりと並んで自然との調和が強く出て来た。ゆっくりと幹が出来る範囲でやって行こうというのがアジア。中國・インド・日本から科学技術が爆発的に出ている。アジア・インド・太平洋地帯の人々が世界をリードするようになっている。人間の力を過信することが多い。人間は自然の中の一部。あきらめはしないが無駄な抵抗はしない。多様性を受け入れる」。

 

渡部恒雄氏(東京財団上席研究員兼外交・安全保障担当ディレクター)「アジアにおける多様性。国民国家の成り立ちが全て違う。多様性の中のアジアでどうやって行けばいいのか。共通項は良い統治をすること。民を慈しむ心ともかぶる話。民主主義の理屈と実際に機能させるのとは違う。日本とインドで非西洋的伝統を保ちつつ民主主義を作った。他国への影響が強い」。

 

 

アンベス・オカンポ氏(フィリピン:アテネオ・デ・マニラ大学准教授、前歴史学部長)「歴史は繰り返される。過去は自由に語られるべし。過去を以て現在・未来につなげるステップが必要。自由主義の重要性を見出すべし。マルコス夫人が三千足の靴を持っていた。息子は副大統領候補として出馬。国民が投票することが出来るようになった。識字率の問題がある。エリートが勝利するとは限らない」。

 

ティン・マウン・マウン・タン氏(ミャンマー:シンガポール国立大学東南アジア研究所ビジティング・シニア・フェロー)「ミャンマーの若い世代は過去にとらわれている。民主主義的移行は一夜にしては為し得ない。色々な利害関係者がいる」。

 

松本紹圭氏(浄土真宗本願寺派光明寺僧侶、一般社団法人お寺の未来理事)「社会観・人間観が大事。自然は『じねん』と讀まれていた。自ずからしからしむ、あるがままという意。人間と外のものとをひっくるめて考える。宗教が民主化にどういう影響を与えたのか。矛盾がある事を踏まえた上で答えを急がない。諸行無常・変化しないものはない。いい加減という言葉はネガティブに響くが、ポジティブには『しなやかにやっていく』という意味」。

 

川島真(東京大学大学院総合文化研究科教授)「アジアからアジアが出来たのではない。ヨーロッパから与えられた地域概念。かなり多様性がある。寛容性を保ち創造性を得て来た」。

 

R ヴァイディヤナタン氏(インド:バンガロール経営大学教授)「神は一つだが、神の化身は様々あると吾々の宗教は信じている。

 

ティティナン・ポンスディラック氏(タイ:チュラロンコン大学安全保障国際問題研究所所長)「アジアの権威主義の独特のパターンは何か。アジアには民主主義の筋道は複数ある。日本とインドは民主主義があるが、他の国ではまだ整っていない」。

 

ラヒマ・アブドゥラヒム氏(インドネシア:ハビビセンター所長)「西洋が民主主義の道のりを歩み始めた時と、今のアジアとは全く違う。アメリカにも人種問題や格差問題がある」。

 

シャムスル・アムリ・バハルディーン (マレーシア・マレーシア国民大学民族問題研究所所長)「アジア的価値と民主主義を別個のものとするのか、連動するものとするのか。何千年前から継承して来たものは捨て去ることは出来ない。継承して来たものの上に新しいものを置かねばならない。マレーシアは民主主義もイスラムも自分のものにした。新しい思考を持てば良い」。

 

安倍晋三内閣総理大臣「私はアジアの未来に民主主義が根付いていくことに疑いを持ったことはない。民主主義の下で暮らす人口は世界のどの地域よりも優る。民主主義は未完である。改善を重ねていくもの。その絶対的条件は、他者に対して開かれていること。他者を尊重すること。インドネシアとインドはたくさんの言葉と宗教と多様性に富む社会で民主主義を根付かせる努力をしている。ヴィヴェーカーナンダが述べた寛容の精神がインドとインドネシアの今日をもたらした。自由と民主主義・法の支配はアジア・アフリカの人々にとって、二十世紀まで普遍のものとは言えなかった。一九五九年の東京オリンピックをアジアの人々は自分のことのように喜んでくれた。二〇二〇年の東京オリンピックは、人権と法の支配を自らのものにしたことを確かめる機会となる。民主主義が言葉の本当の意味で普遍的な価値になる。先祖代々我々が大事にして来た価値がある。『仁』という儒教の概念は『いたわりの心』。イスラムにも日本にも慈しみの心がある。強き者と同じ機会を弱き者にも与えるのが民主主義。汲めども尽きない養分がある。三日前に台湾がこの事実を教えてくれた。人間一人一人を大切にしていくところから全てが始まる。『人づくりなくして国づくり無し』が日本の海外援助の発想。インドの人たちが水の流れを敬う気持ちは理屈なしに日本人に分かる。輪廻転生思想も日本人が古来大切にしてきた。慈悲・和・仁と表現は違っても民主主義を支える思想がアジアにはある。自由・人権・民主主義をわがものとして法の支配を全うできることが日本の役割」。

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