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2016年3月24日 (木)

『勝川春章と肉筆美人画―<みやび>の女性像』展参観記

本日参観した『勝川春章と肉筆美人画―<みやび>の女性像』展は、「江戸時代中期の浮世絵師・勝川春章(1726-92)は、迫真的な役者絵版画で人気を集める一方で、晩年には自らがひと筆ひと筆、絵の具と墨を引き重ねてあらわした肉筆美人画の制作に専念するようになりました。その多くは身近で日常的なモチーフをとらえながらも、同時に優美で上品な雰囲気をたたえています。生誕290年を記念した本展では、春章による肉筆美人画を特集し、彼が目指したみやびやかな女性美の世界をご紹介します」との趣旨で開かれた。(案内書)

 

勝川春章の「美人鑑賞図」「立姿美人図」「文を読む遊女図」「桜下遊女図」「柳下納涼美人図」「遊女と達磨図」「衝立二美人図」「竹林七妍図」「見立江口の君図」など、菱川師宣の「秋草美人図」「二美人図」、鳥文斎栄之の「乗合船図」喜多川歌麿の「更衣美人図」西川祐信の「詠歌美人図」作者不詳の「邸内遊楽図屏風」などを参観。

 

春章の「美人鑑賞図」は、駒込の六義園で十一人の美女が絵画を観賞している光景が描かれている。六義園は小生の家の近くにあるので親しみを覚えた。この作品や作者不詳の「邸内遊楽図屏風」を見ると、徳川中期が平和な時代であったことが実感できる。私は徳川氏の天下取りの歴史や朝廷軽視の姿勢には嫌悪感を覚えるのだが、「徳川三百年の太平」という言葉がある如く、德川氏が戦国の世を終わらせ、平和で繁栄した世の中を築いたことは事実だと思う。

 

春章は単に美女を描いただけではなく、日常的情景の中の美女と日本や支那の古典とを関連させているところが面白い。「竹林七妍図」という作品は竹林の中に立っている七人の美女を描いている。これは支那の「竹林七賢」と関連させている。「妍」とは優美な・美という意。「遊女と達磨図」は、十年の奉公を終えると自由の身になる遊女と、九年間の坐禅修業を終え解脱の境地に至った達磨とを対比させている。とても面白い着想である。「見立江口の君図」は、観阿弥の謡曲『江口』の西行と遊女との交流の物語を絵画化した作品で、遊女「江口の君」が普賢菩薩となり白象に乗って天に昇って行く絵である。

 

鳥文斎栄之の「乗合船図」は、春の隅田川の渡し船に、猿回し・芸者・僧侶・幼児・武士が一緒に乗って行く光景が描かれている。堤に咲く桜の花が美しく描かれていた。江戸時代の風俗・生活が偲ばれる作品であった。

 

勝川春章の作品は、浮世絵であっても肉筆画である。肉筆画は摺り物である版画と異なり、作家が一筆一筆描き上げるので、美女の着衣や背景の景色などが実に精緻に描かれている。江戸時代は階級社会であり、浮世絵師は、日本画家の格下に置かれていた。肉筆画を描いた勝川春章は、他の浮世絵師とは一線を画したという。春章は単に美人を描いたのではなく、精神性と優雅さがある作品をのこしたと言える。

 

本日は、昼過ぎまでは雨が降ったが、夕刻には晴れ、出光美術館の休憩室からは、緑豊かな皇居の森、富士見櫓、宮内庁、桜田門が美しく眺められた。

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