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2016年1月28日 (木)

『中央乃木會主催講演会』における大久保利泰氏の講演内容

昨年十月三日に行われた『中央乃木會主催講演会・近現代偉人の子孫が語る歴史秘話シリーズ第五回』における大久保利泰(としひろ)(大久保利通の曾孫)による「大久保利通が生きた明治時代」と題する講演内容は次の通り。

 

「乃木大将と大久保利通とは、西南戦争の時に会ったかもしれない。私の父が、乃木大将が院長をされていた学習院の初等科の生徒だった時、乃木大将のお話を伺った。私の父は、明治三十三年生まれ。利通は明治十一年に亡くなった。利通に関して私には本による知識しかない。

 

利通は内務卿として、一人で責任を負った。慶應四年の鳥羽伏見の戦いが大きな転換。鳥羽伏見が開戦した時の西郷隆盛から大久保利通への手紙がある。幕府軍は力を出し切れなかった。緒戦で官軍は成果を収めた。官軍は錦の御旗を立てた。幕府軍は錦の御旗に手向かうと賊軍になる。官軍は三日間で勝利を収める。大きな戦果を挙げて朝廷に政権が移った。

 

その頃、明治天皇は二十歳になっておられない。御所の中で女房に囲まれる生活であった。大久保利通は、御所を大阪に移したらどうかという建言をする。公卿たちの猛烈に反対に遭い、取りあえず大阪に行幸していただく。御所から外に出て頂き、五十日間街を歩いていただいた。中古時代以前は別として、天皇が海をご覧になったのは初めて。

 

慶應四年八月、京都で即位の礼。明治と元号を改める。『新しい都は江戸が良い』と建議した人がいた。明治元年、明治天皇に東京にお出ましをいただいた。十二月に京都に還幸された。明治二年三月に再び東京に行幸。江戸を東京と改めた。太政官を東京に移す。この時点で、首都機能が京都から東京に移った。遷都の日付ははっきりしない。当時の若き指導者の熱意がこうしたことに現われている。

 

明治元年から二年に大きく動いた。当時の政治家の偉大さを今日の政治家は見習ったら良い。明治四年の廃藩置県で落ち着いた。明治五年十一月、大久保は岩倉使節団に加わり副使として横浜から欧米回覧に出発。三条実美、西郷隆盛は日本に残った。ドイツでビスマルクとモルトケに会った。西郷宛の手紙で、『ビスマルクに会って感銘した。これからは武力、国力が大事。国力を欧米に追いつかせないといけない』と書いている。

 

征韓論問題が起こり、早く帰国してくれとの連絡があった。大久保と木戸孝允との対立が起こり、お互いに別の船で帰国。外国との戦いの前に国力を充実させねばならないということになった。農業収穫物を増加させることが第一ということになった。土地開発が行われた。明治九年、天皇の東北御巡幸の先駆けとして、郡山に赴いた。当時の郡山は殆ど原野だった。猪苗代湖から郡山に疎水を引くことを建議。この動きを始める直前、大久保は暗殺された。西南戦争が終わった後、農学校を作る。絹が産業の中心だった。殖産興業で動き始めた直後に暗殺された。霞が関の自宅から太政官に向かう途中で殺された。明治十年に、仮設も含めて電信網が出来上がった。三十代、四十代の若いリーダーが私心を捨てて活躍した。大久保利通は、『明治に入って十年間は騒乱の時代、次の十年が不肖自ら内治に力を注ぐ。次の十年は後進にゆだねる』と語っていた。

 

利通は、冷酷で専制政治家と言われている。しかし子孫にとっては、そんなことはなかったと思う。他人の話をよく聞き、その意見を持ってきた人に実行させる。ただし『責任は自分が持つ』と言った。子供たちにも自分で考えさせ、子供たちの自立心を育てた。岩倉使節団から帰国してから、家でも洋装、朝はパン食。西洋のものをどんどん取り入れた。外国のものなら何でも良いというのではなく、日本の行く末を見定めてそれに必要なものをとり入れる。

 

大久保のあとは、伊藤博文。山県有朋が引き継いだ。専制政治家が死んだら、その政策はすべて否定される。大久保は専制政治家ではなかった。日本は外交交渉が下手。しかし大久保の北京会談での行動は見事。近代日本の基礎を固めたのが大久保だという気がする。

 

大久保の三つ年上の兄貴分が西郷さん。征韓論で立場を異にした。お互いに国を思ってのこと。大久保は内治優先。利通は西南戦争開戦の時、西郷が入っていなかったと思い、そう信じた。西郷が城山で死んだ時、大久保は涙を流さなかった。西郷が立ったと聞いた時、大久保は涙を流した。その時、覚悟を決めた。西郷に別れを告げた。大久保は立場をわきまえることが出来た。意志が強い。西郷家と大久保家とは遠い親戚。

 

大久保が暗殺された時の馬車の馭者も切られた。身寄りが無かった。馬も斬られた。青山墓地の大久保利通の墓の横に馭者と馬の墓もある」。

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