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2015年12月20日 (日)

「ますらをぶり」は日本民族の基本的道義精神である

 

 

神武天皇御製 

 

 「みつみつし 久米の子らが 粟生(あはふ)には 臭韮一茎(かみらひともと) そねが茎 そね芽繋ぎて 撃ちてしやまむ」(威勢のよい久米の人々の、粟の畑には臭い韮が一本生えて いる。その根のもとに、その芽をくっつけて、やっつけてしまうぞ)

 

 九州日向(宮崎)の美々津の浜を出発され、十年かかって橿原の地に至り、建國を宣言された。反抗した長髄彦を討たれる際に、皇軍を激励して詠まれた御歌である。烈々の攻撃精神が充満している。天皇の大御心は「和」「仁慈」だけではない。剣の精神・戦いの精神もあった。上御一人日本天皇はもののふの道の體現者であらせられた。

 

 「ますらをぶり」とは、日本民族の基本的道義精神である。「清明心」は、一度戦闘となれば神武天皇御製に歌われたような「そねが茎 そね芽繋ぎて 撃ちてしやまむ」という雄々しさ・勇気・戦闘心となる。

 

 ただし、神武天皇の御東征の御精神は、『日本書紀』に「…神祇(あまつやしろくにつやしろ)を禮(ゐやま)ひ祭(いは)ひて、日の神の威(みいきほひ)を背(そびら)に負ひたてまつりて、影(みかげ)のままに壓躡(おそひふ)まむには。かからば則ち曾て刃に血ぬらずして、虜(あだ)必ず自らに敗れなむ…」と記されている。御東征の戦いは神を祭り、神の霊威を背負い神の御心のままの戦いであり武であった。故に武は神武であり、剣は神剣であり、戦いは聖戦となるのである。

 

 「天皇中心の神の國」がわが國體であるが、この萬邦無比の國體を護ることが最高の道義なのである。天皇の統治したまえるわが國は、言葉の眞の意味において「平和國家」である。神武肇國の御精神・聖徳太子の十七条憲法・明治天皇御製を拝すれば、それは明らかである。また、御歴代の天皇は常に國家と國民の平安を祈られてきた。しかし、そうしたわが國の伝統は、「武」「軍」「戦い」を否定しているのではない。

 

 「三種の神器」は、皇霊が憑依すると信じられ、日本天皇の國家統治言い換えれば日本民族の指導精神の象徴である。天皇の日本國御統治は「三種の神器」に表象されている。「三種の神器」は皇位の「みしるし」であり、御歴代の天皇は、御即位と共にこの神器を継承されてきた。

 

 「鏡(八咫鏡・やたのかがみ)」は、「澄・祭祀・明らかなること・美意識・和御魂・太陽崇拝」の精神を表象し、「剣(草薙剣、くさなぎのつるぎ)」は、「武・軍事・たけきこと・克己心・荒御魂・鉄器文化」の精神を表象し、「玉(八尺瓊勾玉・やさかにのまがたま)」は、「和・農業・妙なること・豊かさの精神・幸御魂・海洋文化」をそれぞれ表象している。祭祀・軍事・農業を司りたまう天皇の御権能が「三種の神器」にそれぞれ表象されているのである。また、知(鏡)・仁(玉)・勇(剣)とも解釈される。

 

 これらは別々の観念として傳えられているのではなく、三位一體(三つのものが本質において一つのものであること。また、三者が(心を合わせて)一體になること)の観念である。

 

 「剣」は武勇、そして克己の精神を象徴している。『日本書紀』の「仲哀天皇紀」に、天皇の軍が筑紫に進軍したのを歓迎した筑紫の県主・五十迹手(いとて)が、「この十握剣(とつかのつるぎ)を堤(ひきさげ)て、天下(あめのした)を平(む)けたまへ」と奏上したと記されている。剣は天下を平らげる武力を表しているのである。つまり、武こそ真の平和を実現するのである。

 古代日本における劔・矛・弓などの武器は、鎮魂の祭具であり神事的意味を持つ。八千矛神(多くの矛を持つ神)は武神であると共に呪術的機能を持った神であった。弓は弦を鳴らして鎮魂する。

 

 「ますらをぶり=武士道」と「剣」とは一體である。剣は殺傷の武器(いわゆる人斬り包丁)ではない。日本刀=剣は製作過程からして既に神道祭式の宗教儀式になっている。刀鍛冶は職人にして単なる職人ではなく、朝から斎戒沐浴して仕事(これも仕えまつるということ)にかかる。仕事場に榊を立て、しめ縄を張り巡らせて、その中で仕事をする。

 

 剣の製作は、神の魂が籠るものを作るのであるから神事であるのは当然である。わが國においては武器が、倫理精神の象徴・神社における礼拝の対象となっているのである。「刀は忠義と名誉の象徴」「刀は武士の魂」として大切にされたのもその根源はこうした信仰にある。

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