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2015年12月28日 (月)

この頃詠みし歌

久方ぶりに「昭和維新の歌」歌ひたり 逝きにし友を偲ぶ集ひで(『早雪忌』)

 

凄まじき描写を息呑み見つめをり 藤田嗣治の戦争画の前(「藤田嗣治作品展」)

 

かくまでにむごきいくさを描きたる藤田嗣治の見事なる絵筆()

 

今に続く人と人との殺し合ひ げに恐ろしき人類の歴史()

 

「あれから四十年」と笑ひ飛ばせぬ我は思ふ 若き日の母甦り来よと

 

「家に帰らう」と我に問ひかける母悲し すでに帰るべき部屋あらざれば

 

母と子の会話楽しむひと時にしみじみと命尊しと思ふ

 

車椅子の母と語らふこの夕べ甦り来よ若き日の母

 

母と共に上野寛永寺に参りし日が次第に遠くなるを悲しむ

 

パソコンに頼らざるを得ぬわが人生『モダンタイムス』の映画を思ふ

 

文明の進歩は人間に 平安をもたらすことはさらにあらざる

 

宗教は数多くあれどテロ貧困飢餓を救へざる現実を如何に

 

花の都パリと言ふとも人間の果てしなき闘争の外にはあらず

 

コークスのストーブも霜焼けの耳たぶも木造校舎も懐かしきかな

 

喪中葉書次 々と来る 年の暮

 

古き時代の古き歌手たちを懐かしみ今宵もパソコンの動画を開く

 

パソコンの動画に出で来る歌手と共に歌を歌ふは楽しかりけり

 

いまだ元気に渡辺はま子の歌ひゐる「蘇州夜曲」を共に歌へり

 

人さはに満ちて歩める南禅寺 物見遊山か信仰心か

 

観光はお断りのの看板を掲げる寺をややうべなひぬ

 

車椅子で街を行く人増え来れば何とも邪魔なのは電信柱

 

空港の巨大な看板に「総統萬歳」と書かれをりたり独裁体制下

 

はじめての海外旅行は台湾でありにしことを懐かしみ思ふ

 

街角に白きヘルメットの憲兵が立ちにゐにけり戒厳令下

 

バスガイドの初老の男性は高らかに 明治天皇御製を朗誦せしかな

 

ベル鳴らし「太太在不在」と呼び掛けし日本人女性は外省人の妻

 

「莒に在るを忘るること勿れ」と書かれたる標語をめずらみ見し日本人我

 

蒋介石の銅像が其処此処に建ちてゐし四十年前の台湾の街

 

和歌を詠む台湾の人々と逢ひにける遥か昔の旅は懐かし

 

林森北路中山北路といふ町は皆国民党指導者の名前

 

他人様の欠点が妙に気にかかるこの頃の我は老いにけるかな

 

足取りは確かに保たんこの道を神に祈りつつ歩み行く我

 

花の水取り換へし朝亡き父の遺影に真向ひ手を合はせたり

 

夜となれば火の用心の声が聞こえ来る千駄木三丁目北部町会

 

卵黄が浮かび出る如く昇り来る朱色の満月の不可思議な光

 

満月が諏方台の上に昇り来てこれから長き冬の夜が始まる

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