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2015年12月12日 (土)

この頃詠みし歌

父の上着を揺り椅子の上に置きしまま三年経てり懐かしみつつ

 

留守番電話にのこる父の音声を消すことはなし我生きる限り

 

東都北鎮根津権現の氏子として今日も暮らしゐるこの千駄木に

 

色冴えぬ紅葉見つつ せはしなく年の瀬の街を歩み行くなり

 

静か夜は煙草くゆらしもの思ふことぞよろしき一人居の部屋

 

一日に五六本の煙草吸ふ事をとがめられることあらざるや

 

よくしゃべる老人の隣に一人座し酒を呑みをり耳は塞げず

 

かすかなる水音頼りにのぼり行き小さき流れに巡り合ひたり

 

冬日さす路上に寝そべる猫一匹人を恐れず我を見つめる

 

黄葉はあと幾日か散らざるや街路樹見上げる師走の夕べ

 

喫煙可の茶房に坐りて落ち着きぬさて一杯のコーヒーを飲まむ

 

古き茶房の老いたる店主がつくりたるコーヒー美味し今日もまた飲む

 

メンチカツ食してうまきビヤホール神保町の街眺めつつ

 

その昔吉田健一と出逢ひたる古き酒房で生ビール飲む

 

古書店の懐かしき看板を眺めつつ図書館勤務の若き日を偲ぶ

 

小宮山も大雲堂も未だ健在ああ懐かしき古書店の街

 

そのかみの栄華を偲び佇めば黄葉かがよふ今日の六義園 

子を思ふ母の心の歌を読み胸迫り来る今宵なりけり(中河幹子先生歌集『悲母』を讀みて)

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