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2015年11月11日 (水)

この頃詠みし歌

参り来し如意輪観世音の姿見えず 御簾の奥にぞ鎮まりませば

見えぬが故に観音妙智力なほさらに強き光を発しゐるなり

父の魂肉体を離れ行きし時ベッドのそばに坐りゐし吾

横たはる父の遺体をぬぐひゐる看護師たちを見つめゐし吾

今はただ幽世より我を護りたまふ父の御霊に経誦するのみ

冬近し 街の銀杏の葉も落ちて裸木となる日は迫り来る

温風器のスイッチを入れセーターをまとへばすでに冬来たりしか

幼き日の甥を思ひ出す その甥が幼子と遊ぶ姿を見つつ

大慌てで靴を捜しゐし夢を見ぬ 何にせかるるこの頃の我

古き家は壊されてゆくさみしさよここに住みゐし人は何処に

幼き日より親しみし人もその家も消え去り行きしことのさみしさ

大乃国に似てゐる人が運び来しもつ焼きを食す小さき居酒屋

神に祈る時には姿勢を正すべしと自らに言ひ神前に坐す

姿勢を正し書を読むことの大切さ もの学ぶ時の心ととのふ

波風を立てずによろしく生きてゆくこと難きかな 今日のわが怒り

山の村に生きゐる老人を描きたる玉堂の絵に心やすらぐ

すがしくも朝を迎へし千駄木の街眺めつつ深呼吸する

秋の朝太陽に照らされし家々は明るく清くかがよひてをり

沸々と力湧き来る朝(あした)なり大日輪に照らされ立てば

(えにし)ありし人の遺詠を讀みにつつ遠き日の健やかな姿を偲ぶ

これの世を去りたる人の歌を讀み久方ぶりに会ひし心地す

少しだけの日本酒を呑み温かき心と体で家路へ急ぐ

友と共に小さき酒場で酌み交はす秋の夜の酒ほのうまきかな

母上と相撲中継を見てをれば懐かしき人が勝負審判

訥々と友は友は語れは我はまた滔々と語る今宵楽しき

 

問ひ詰めてはならぬことあり真向へる人の顔見てやっと気づけり

 

山の向ふに幸せの国があるものと言はれても山が見えぬわが町

 

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