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2015年10月29日 (木)

この頃詠みし歌

老夫婦の住みゐし家は人気無し かくて知り人は少なくなりゆく

 

賑やかな会話をしてゐる女性群の傍らに坐してどら焼きを食す

 

大声で鳴きゐるカラス 好かれざる鳥であることは知らざる如し

 

谷中霊園秋空清く澄みわたる下に立ちゐる澤正の墓

 

島田辰巳緒形拳すらすでに亡く遠くなりゆく新国劇の舞台

 

多くの人が行き交ふ虎ノ門交差点小さき虎の像置かれゐる

 

きらきらと輝く如き絵が並ぶ会場に坐す時の華やぎ(深見東州選りすぐり絵画展)

 

あどけなき幼子(をさなご)の笑顔を見てうれしそれその父は我の甥っ子

 

わが部屋に愛らしき幼子とその父が来たり遊ぶ秋の朝かな

 

秋晴れに坂道登りまた下る人生といふもそのやうなものか

 

低く浮かぶ三日月に向かひ歩み行く異界への道を辿る如くに

 

東天の光が次第に強くなる明方時に命漲る

 

食欲の秋とは言ふも我はしも春夏秋冬食を楽しむ

 

わけの分からぬ言葉の羅列の短歌作品 謎解きの如くに讀みてゐるなり

 

スプーンにてお粥を母の口へ運ぶ時 親子の強き絆を思ふ

 

思ひ出を友と語らふこの夜は楽しくもあり悲しくもあり

 

佳き人の思ひ出を友と語らひて秋の夕べを酒酌み交はす

 

亡き父は故郷に帰らず東京の墓地に静かに眠りたまへる

 

父の故郷徳島眉山を父上と共に登りし思ひ出の旅

 

遠き日の思ひ出の中をさまよひし夢から覚めれば朝が来てをり

 

逢ひ得ざりし歌人(うたびと)の歌集をひもときて吉野熊野の山河を思ふ

 

穏やかな顔をして我と語らへる母は心も体も強し

 

明るき声で我を迎へる店の主(あるじ)それその妻も明るき笑顔

 

秋の夜の風に吹かれて街を行く もうこの年もあと二月(ふたつき)

 

線香を手向けて御霊をなぐさめる来島恒喜氏の墓の御前で

 

頭山翁の力強き書が刻まれし来島恒喜氏の御墓(みはか)拝ろがむ

 

さはやかに秋の大空広がれる谷中霊園に友ら集ひぬ

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