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2015年8月24日 (月)

大国主命のご神名について

 大国主命はまた、数多くの別名を持っておられる。『古事記』では、大穴牟遅神(おほあなむぢのかみ)葦原色許男神(あしはらしこをのかみ) 八千矛神(やちほこのかみ)宇都志国玉神(うつしくにたまのかみ)、さらに『日本書紀』では、大物主神(おほものぬしのかみ)大己貴命(おほなむちのかみ) 大国玉神(おほくにたまのかみ)顕国玉神(うつしくにたまのかみ)という別名が記されている。

 

 これらの御神名は、大国主命の様々なお働き・権能の構成要素を示しているのである。ただし、書紀の本文は大己貴神で一貫している。さらに、『出雲國風土記』『萬葉集』『古語拾遺』『出雲國造賀詞』などに様々な御神名が記されている。

 

 高崎正秀氏は「(大國主神注)に御名が八つ、御子神の数が百八十一柱といふのは、その神格の幅の広さ、出雲びとのこの大神に結んだ憧憬の深さ強さを見せるもので…それは一方から云へば、出雲的世界の枢軸をしめくくる自然神、人文神、英雄神の統合体であり、綜合的神格でもあった訣であらう…地域的に横に見て、幾多の別個の人格の活動の跡を、すべてこの大國主神の御名に包摂して来てゐる点も認めねばならない」(『神剣考』)と述べておられる。

 

 一即多、多即一として把握するのが、日本のものの考え方の特質であるが、大国主命の様々な神名もまた、神のお働きの多様性を表示しているということである。

 

 そこで、それぞれの別名の意義について考えてみたい。まず、大穴牟遅神(おほあなむぢのかみ) とは、「オホ」は美称であり、「アナ」とは土地のことであり、「ムチ」とは貴の意であるという。つまり、貴くも大いなる大地の神という意であり、大地主神・土地の守護神・国土の開拓神である。なお、「アナ」とは文字通り穴であり、洞窟の神とする説もある。また、この神は各地を巡遊して、前出した『小学唱歌』にも歌われているように、兎の火傷を癒すという医療神の性格も持つ。

 

 次に、須佐之男命から色々な厳しい試練を受けられた時の御名が、葦原色許男命(あしはらしこおのみこと) である。「シコ」とは「強い」とか「頑丈」という意である。ゆえに、葦原色許男とは、地上の世界(葦原)の頑丈で強い男の神という意味である。日本武尊(日本の武の神)と相似の名である。日本武尊も父君・景行天皇により様々な試練を課せられた神である。

 

 八千矛神(やちほこのかみ)とは、八(や)とは数多くのという意であり、千(ち)は霊のことであり、矛(ほこ)は武器の意である。即ち、数多くの霊的な武器を神格化した神である。この場合の武器とは、神霊の憑代(よりしろ・神霊のかかってくるもの) である。この八千矛神は、『古事記』においては、妻神と恋歌を交換する神である。

 

 このように大国主命は、神話の色々な場面で、自在に名を変えられる神なのである。そして色々なお働きをされ国づくり、国民の幸福のために尽くされる神であらせられるのである。

 

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