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2015年5月 1日 (金)

『笹川平和財団 笹川中東イスラム基金主催講演会・中東政治変動の展望 「アラブの春」の終焉とその後』における登壇者の発言

二月九日に開催された『笹川平和財団 笹川中東イスラム基金主催講演会・中東政治変動の展望 「アラブの春」の終焉とその後』における登壇者の発言は次の通り。

 

ロリー・ミラー氏(ジョージタウン大学ドーハ校国際関係学科長)「非常に数多くの問題が中東にはある。ISIL(アイシル)だけではない。カリフ(預言者ムハンマド亡き後のイスラーム共同体、イスラーム国家の指導者、最高権威者の称号)制国家樹立が重要なのか。イスラム国家が実際に機能するのか。カリフ制というユートピア的観念がアイシルによって取り上げられた。カリフ制がすぐにできるわけではない。抽象的観念。急激に領土を拡大し、石油に関する違法な取引で稼ぎ、暴力によってコントロールしている。フランスは断固たる態度を取った。革命の後のイランは、政治的・軍事的にプラグマチックな行動をとった。アイシルが生物兵器をパリ・ロンドンで使用するか。それは悪夢。アイシルには道徳的自制力は無い。アイシルは通常兵器しか持っていない。アイシルの脅威を受けているすべての国がアイシルを追放しようということになった。冷静な計算でやらねばならない。日本も冷静で現実的な視点を持つべし。シリアの三十%の国土がアイシルに占領されている。アイシルが成功した原因は住民の不満を生かすことが出来たから。クルドの急進派がサウジの王室にマイナスの影響を及ぼしている。サウジがアイシルの資金源を取り締まらなければ、効果は上がらない。ヨルダンはアイシルのシンパを刑務所に入れた。ヨルダンのパイロットがあれだけ残虐に殺された。アイシルはシナイ半島のプランテーションを破壊しようとしている。先制攻撃は自衛という事では肯定される。アメリカは地上軍を投入しない。空爆はいくらでもしていい。アイシルの危機はアメリカのイラクへの先制攻撃の結果。先制攻撃は道義的には肯定できない。アイシルの資金源を断つのは本当に難しい。石油売買を追跡できるのか」。

 

サイモン・ワルドマン氏(キングスカレッジ講師)「アイシルはトルコの安保上の重大な脅威。一五〇万のシリア難民がトルコにいる。テロの脅威もある。シリアの過激派がトルコに入って攻撃する危険あり。トルコの国際的位置づけは今が最悪の状況。友好国が少ない。湾岸諸国との対立が深まっている。欧州諸国もトルコに背を向けている。トルコの国境を経て外に出る。シリアとの国境を警備するのは非常に難しい。過去一〇年のトルコの外交政策は現在のトルコ首相のアフメト・ダウトオールの影響下にあった。トルコの戦略的位置づけをダウトオールは考えていた。それは、トルコはユーラシアの中心的大国ということ。トルコは文化的歴史的つながりをヨーロッパと中東とに持っている。これを利用することによって大国になるという戦略。イランとの関係も近くなった。戦略的論理で説明。それがトルコの外交戦略。トルコのクルド人組織はイスラム世界観を持っている。外交官の安全確保をトルコはしている。トルコは反アイシル有志連合との間に陰りがある。トルコが国境警備のために何をしているかをアッピールすることが必要。トルコにおけるクルド問題が一番重要。トルコの国民はトルコが出来るだけシリアのことに関与しないことを望んでいる。難民キャンプだけに難民がいるのではない。レバノンも課題が多い。危険な状況。トルコは北米とNATOの延長線上に自らを置くべし」。

 

長澤榮治氏(東京大学東洋文化研究所教授)「中東には二つの大きな歴史的遺産がある。①欧米の介入により国境が決まった。②イスラム秩序を作るという動き。それがアイシルを生み出した背景。二〇〇三年のイラク戦争とその後の統治の失敗があった。アイシルのイデオロギーはカリフ国家の再興。中東の周辺部で起きているが、もともと辺境ではなく、周辺化されてきた地域。ネットワークもありお金がグローバルに動いている。アイシルは部族的構造と結びついている。かつてのバース党と関係の深かった部族と共闘。欧米の価値観で現状を解釈してはならない。近代的イスラム国家と大国が同盟を結ぶことが今日の中東を作って来た」。

 

渡邊啓貴氏(東京外国語大学大学院総合国際研究院教授)「パリのテロで十七人の犠牲者を出した。一月九日のフランスの世論調査で、シリアへの空爆を強めることに賛成が六〇%。フランスにはフランス革命の頃からテロがある。長くテロと付き合ってきた国。テロリズムの脅威は政治的文脈から出て来るだけではない。フランス的価値観への脅威には断じて戦うという世論が九〇%。反ユダヤは完全にご法度。ヨーロッパ近代文明が揺らいでいる。冷戦が終わり国際社会で異なった文化の交流が重要になっている。多文化共生を掲げている國はあるがうまくいていない。同化政策をとった国もきっちりとした制度が出来ていない」。

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以上は小生のメモと記憶によって書いた記事です。文責は小生にあります。

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