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2015年4月15日 (水)

水戸學の特質とその影響

勤皇が徳川光圀以来の水戸藩の伝統である。光圀は、常々近臣に対して、「わが主君は天子なり、今将軍はわが宗室なり。あしく了簡仕り、取り違へ申すまじき」と戒め、毎年元旦には、直垂(ひたたれ)を着して早朝京都を遥拝したという。

 

 徳川光圀の學問・尊皇思想は、各方面に多大な影響を及ぼした。それは徳川御三家にまで及んだ。御三家筆頭の尾張藩四代藩主・徳川吉通は、子孫に対する訓誡として「天下の武士は、みな公方(徳川将軍の尊称)家を主君の如く崇めかしづけども、実は左にあらず…三家(尾張、紀伊、水戸)の者は全く公方の家来にて無し、今日の位官は朝廷より任じ下され、従三位中納言源朝臣(天武天皇十三年に定めた八階級の姓(かばね) の第二位。後には、三位の人の姓(せい)の下、四位の人の名の下につける敬称)と称するからは、これ朝廷の臣なり。されば水戸の西山殿(徳川光圀のこと)は、我らが主君は今上皇帝なり、公方は旗頭なりとのたまひし由、然ればいかなる不測の変ありて、保元・平治・承久・元弘のごとき事出来て、官兵を催される事ある時は、いつとても官軍に属すべし。一門の好みに思ふて、かりにも朝廷にむかふて弓を引くことあるべからず」と述べた。

 

 「水戸學」は、天皇國日本の悠遠な真姿を示し、徳川幕藩體制のみならず鎌倉幕府以来の武家政権の転変を超えて持続する皇位の伝統を明らかにした。それは、『大日本史』の綱条の序文に、「人皇基を肇めて二千余年、神裔相承け、列聖統を纉(つ)ぎ、姦賊未だ嘗て覬覦(身分不相応なことをうかがいねらうこと)の心を生ぜず。神器の在る所、日月と並び照らす。猗歟(ああ)盛なる哉。其原(もと)づく所を究むるに、寔(まこと)に祖宗の仁沢、民心を固結し、州基を盤石の如くならしむるに由る也」とある通りである。

 

 「水戸學」は支那思想を重んじたが、無批判に支那思想を受け入れたのではない。藤田東湖は『弘道館記述義』で、「然れば則ち唐虞(唐は七世紀初めから十世紀初めまで、古代支那王朝として最も文明の発展をとげた國。虞は支那古代、舜(しゆん) が尭(ぎよう) からゆずられて帝位にあった王朝の名)の道、悉く神州に用ふべきか。曰く、否。…決して用ふべからざるもの二つあり。曰く禅譲(帝王がその位を世襲せず、有徳者に譲ること)なり。曰く放伐(徳を失った君主を討伐して追い払うこと。「禅譲」と共に、支那の易姓(えきせい)革命思想による考え方)なり。…赫赫たる神州は、天祖の天孫に命ぜしにより、皇統綿々、緒(物事のはじまり)を無窮に伝へ、天位の尊きこと、猶ほ日月の踰ゆべからざるがごとし…万一禅譲の説を唱ふる者あらば、凡そ大八洲の臣民、鼓を鳴して之を攻めて可なり。…若し彼の長ずるところを資り、併せて其の短に及べば、遂に我が萬國に冠絶する所以のものを失はん」と論じている。

 

 支那の有徳王君主思想・革命思想を否定し、皇統の無窮を説いている。さらに、支那思想の悪しきところを取り入れたならば、わが國の國體が破壊されるとしているのである。ここに「水戸學」とりわけ藤田東湖の尊皇思想の真骨頂があるのである。

 

 今わが祖國日本は確実に内部崩壊を始めた。小手先の弥縫策ではこの危機を乗り切ることはできない。我々のなすべきことは、こうした荒廃を生んだ根本的原因を剔抉することである。

 

 戦後日本の精神荒廃の根源を探っていくと、七十年前から、占領下のわが國に奔流のように流れ込んだアメリカ及びソ連製の人権至上主義、平和主義、悪平等主義、経済優先主義に突き当たる。物と金さえあれば皆が幸せになるという考え方が戦後日本の満ち満ちてきた。その結果が、今日のわが國の教育荒廃であり、政・官・財界の末期的な不祥事の続発である。

 

 わが國の歴史、伝統、文化、道義精神を断ち切って、アメリカ及びソ連が構築した戦後體制に、大多数の日本人は文字通りマインドコントロールされてしまっている。

 

 わが祖國日本は、今こそ、この日本弱體化のマインドコントロール・精神的呪縛から脱しなければならない。日本人としての魂・誇り・道義精神・文化伝統を取り戻さねばならない。それが教育の荒廃のみならず、祖國日本の内部崩壊を食い止める唯一の方策である。

 

 その意味において、我々は幕末の危機を打開した基本精神である「水戸學」の尊皇攘夷思想を今こそ學び直さなければならない。 

 

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