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2014年12月29日 (月)

渡辺利夫拓殖大学総長による「どう解く、日中・日韓の縺れ」と題する講演の内容

十月四日午後二時より、内幸町の日本プレスセンターにて開催された『アジア問題懇話会』における渡辺利夫拓殖大学総長の「どう解く、日中・日韓の縺れ」と題する講演の内容は次の通り。

 

「習近平のステイトメントのキーワードは『中華民族の偉大な復興が中国の夢』。阿片戦争敗北以来の屈辱をすすぐべき時が来たという感じ。二〇〇一年、中国はGDPでは日本を超えた。世界第二位の経済大国になったという事で、中華民族の復興をつかまんとする直前にいるというナショナリスティックなステイトメントを出している。偉大な復興すべきものが過去にあって再生させたいという願望。要するに大国意識ルネッサンス。十四世紀のイタリアの古典・古代への文芸復興という感覚ではない。

 

習近平の考えている偉大なる過去とは、大清帝国。清は十七世紀中ごろに生まれた王朝。清の領土と富は圧倒的であった。世界の富の三割から四割を占めた。明王朝より三倍近い領土。チベット・ウイグルなどを併合した。偉大なる中国=清に戻りたい。『領海法』制定、領空識別圏設定という対応をしているのは、傳統的観念を現代に復元させようという考え。

 

傳統中国の国際秩序観念は『華夷秩序』。これは中華を中心にして同心円的に広がり、周縁に位置する人種や民族ほど文明度が低いという価値観念。冊封体制とは、中華の礼式に復させ、見返りに王位を与えてその王に領土と領民の支配をゆだねるという伝統的国際秩序観念。

 

日本は、中国の影響は受けたが独立していた。服属関係にはなかった。朝鮮は清朝と君臣関係にあった。李氏朝鮮の開祖・李成桂(イソンゲ)は『小を以て大に事(つか)ふるは保國の道なり』いう『事大主義』標榜し、明国による王位・国号の承認、慶弔使の派遣、中国の使者を受け入れた。ソウルには中国からの使者を迎える『迎恩門』というのがあった。中国の使者をその門のところまで迎えに行った朝鮮の王は、『三跪・九叩頭の礼』を取った。対等の関係ではない。

 

ヒマラヤを水源とする黄河の下流から中流域、河南省・鄭州を中心に広い平原がある。ここが漢民族発祥の地。ここが中華であり中原。そこの支配者が天子で、ここを中心にして広がっていく。ある限界を超えると蛮族の世界。北狄はモンゴルで、騎馬・狩猟民族。獰猛な存在。東夷は漁労・農耕。南蛮は畑作・漁労。西戎は牧草地域。人間の顔をしていても人間ではない。蕃夷。中国はランキング・序列を好み重視する。真中が価値が高く、外へ行けば行くほど価値は低くなる。これを華夷秩序・中華思想と言う。

 

清国は満州族・女真族の征服王朝。少数の満州族が巨大な漢民族を支配するのは無理だった。次第に同化された。漢民族の満州への移入は法律で禁止された。

 

台湾は化外の地。李鴻章は伊藤博文に『阿片と土匪で苦労するよ』と言った。拓殖大学は台湾近代化のために努力する。

 

習近平は、アメリカがハワイの東、中国が西を支配すると言い出した。中国の『領海法』によると東南アジア諸国は外洋をすべて失ってしまう。中国は『領海法』第二条で、『中華人民共和国の陸地領土は、中華人民共和国大陸およびその沿海島嶼、台湾および釣魚島(尖閣諸島)を含む附属各島、澎湖列島、東沙群島、西沙群島、中沙群島、南沙群島およびその他すべての中華人民共和国に属する島嶼を包括する』と規定している。日本はこの法律制定の時に口頭注意しただけ。この『領海法』が制定された年の十月に、両陛下が御訪中された。日本の対中外交の奇妙さが浮かび上がる。この『領海法』の『その他すべて』は中国が解釈する。

 

朝鮮にとって蛮族たる満州族によって明朝が滅亡した。清朝は満州族なので中華思想の原理に合わないという事で、李氏朝鮮は面従腹背・内心軽侮のダブルスタンダードになった。鬱屈した国家観のみで生きて来たイデオロギー国家。朝鮮は中華より中華的であることを誇りにしている。現実の国際関係において朝鮮は清国に服属。その儀礼は守りながら、民族心理の深層においては清朝を軽侮する生き方を選択。表層と内面の葛藤、圧倒的なイデオロギー社会でありイデオロギーのみで生存し得た王朝が朝鮮。

 

中華より見れば、日本を国と見做していなかった。日本を卑小な存在と見做した。それなのに日本は朝鮮を併合するとは何事かということになる。韓国は昔から反日。今の韓国そのメンタルが表面に出て来た。日韓の所得水準はそんなに開きはない。物価も同じくらい。日韓の相対的力関係は狭まっている。伝統的に事大してきた中国が大きくなっててる。韓国は安んじて反日気分を露呈できる。

 

アメリカの力の低下によって、中韓は連携して反日になっている。日中関係のロジックは非常にはっきりしている。反日的センチメントを恒常的に醸成するために、尖閣を利用している。日本の対応は、ハードウェアの充実。自衛隊部隊の南西へのシフト。韓国の反日に対しては手の打ちようがない。日韓関係ほど和解がきかない関係は世界にない。厄介な二国関係。韓国と交渉する人はそういう絶望感を持ちつつ交渉すべし。日本の世論の分裂が敵に塩を送っている。

 

中国人自身中華民族という民族が存在するとは思っていない。モンゴロイドを漢民族とも思っていない。人種・エスニックとしての中華はあり得ない。人種と言語が同一地域と一致するという日本は例外的。韓国の若者は北朝鮮への篤い思いを持っている。北に武装解除しているところがある。韓国には建国の物語がない。出自に対する釈然としない気持ちを持っている。独立闘争の物語がない。北には嘘ではあるがパルチザン闘争をしたという独立闘争の物語がある」。

 

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