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2014年11月28日 (金)

『宮中の和歌―明治天皇の時代』展を拝観して

本日拝観させていただいた宮内庁宮内公文書館・明治神宮共催展示『宮中の和歌―明治天皇の時代』展は、「本展示では,ご生涯で約93千首余りの御製をお詠みになり和歌を大切にされた明治天皇が,伝統を踏まえ,また時代の変化に対応しどのように和歌を受け継がれたかを,明治神宮宝物殿と宮内庁宮内公文書館に所蔵されている資料でたどっていきます。

 

 まず,明治に至るまでの歴代の天皇の御製を展示し,皇室の歴史の中で天皇が和歌を詠まれることが伝統的な営みであったことを紹介します。

 

 次いで,新年の歌会始について資料を展示し,明治天皇が皇族や公家などが天皇に和歌を奉るという伝統的な形式を受け継ぎつつも,広く国民から詠進を募るという新たな制度を確立され,現在の歌会始の基礎を築かれたことを示します。

 

 また,新年だけでなく毎月決まった日に明治天皇が催された月次歌会に関する資料や,さらに明治天皇の御製,昭憲皇太后の御歌の紹介などを通して,明治天皇の和歌に対するお志や宮中において和歌がご生活の一部となっていたご様子がしのばれるような展示会とします」との趣旨で開催された。(案内書)

「後桜町天皇宸翰和歌懐紙幅(図書寮文庫所蔵)」「孝明天皇宸筆懐紙掛軸」(宮内庁所蔵)「明治天皇宸筆御製 孔明(明治神宮所蔵)明治天皇宸筆の御製御色紙」「歌会始の図(宮内公文書館所蔵)」明治23年(1890)に行われた歌会始を元に描かれた図。二世五姓田芳柳(ごせただほうりゆう)作。「鳳凰の間装飾下絵(宮内公文書館所蔵)歌会始が行われた明治宮殿「鳳凰の間」の壁面装飾下絵。明治25年(1892)の作」「御歌所日記(宮内公文書館所蔵)天皇の御製・皇后の御歌や歌会始に関する事務などを掌った御歌所で作成された事務日誌」「歌会始詠進懐紙(宮内公文書館所蔵)明治14年(1881)に詠進された,有栖川宮幟仁(たかひと)親王の御懐紙(かいし)」「明治天皇御製(宮内公文書館所蔵)明治天皇の御製を御歌所寄人などが色紙に書き付けたものを,手鑑(てかがみ)帖に仕立てた資料。大正~昭和初期頃に作成された。全12枚の色紙が収められている」などを拝観。

 

『明治天皇御幼時御詠草』を拝観したが、孝明天皇が御自ら添削されてゐた。明治天皇におかせられては、御幼少の砌、孝明天皇より直接和歌のご指導をお受けになられたのである。明治天皇がはじめて詠まれた御製を記させていただく。

 

「月見れば 雁がとんでゐる 水のなかにも うつるなりけり」

 

明治天皇が、ご生涯で約93千首余の御製を詠まれたのは、御幼少の頃、孝明天皇の慈愛に満ちたご教導の賜物であると拝察する。日本天皇の国家統治の道統は、祭祀と和歌が基本である。和歌は天皇統治と一体てれある。和歌は単に趣味や芸能の一分野ではなく、『古今和歌集』の序に「民の心を和らぐる道」とあるように、国を平和に治める基本であった。

 

天皇は、神の御心のままに國を治められると共に、臣下・民の心を良くお知りになり、お聞きになって、この國を統治あそばされるのである。

 

そして、天皇と民の心をつなぐものが「やまとうた」=和歌である。天皇は御製によってその御心を民に示したまひ、民もまた歌を捧げることによって民の心を天皇にお知りいただくのである。その傳統は、毎年行はれる「新年歌會始」に継承されてゐる。

 

天皇統治とやまとうたは切り離し難く一体なのである。君民一体の國柄は和歌によって保たれてきた。神代の昔より、今日に至るまで、高下貴賎の区別なく継承されて歌はれて来た文藝が和歌である。かかる優雅にして清らかなる君民一体の國柄は他の國には見られない。

 

小田村寅二郎氏は、「遠い遠いところに居られるやうに感じてゐた御歴代の天皇がたが、御歌を拝読するわれわれの目の前に、身近にお姿を現され、お聲をかけてくださるやうな気さへしてくる。『詩歌』とはまことに不思議なものであり、とくに『和歌』を介しての作者と読者とは、時空の隔たりを超えて心一つに通ひ合ふことができさうである。」(『歴代天皇の御歌』はしがき)と論じてゐる。

 

 天皇・皇室は、神代以来、祭祀を継承されると共に、和歌の道を連綿として継承されてきた。そもそも和歌の起源は、皇室のご祖先であられる神代の神々のお歌に遡る。わが國の文藝(歌・物語)の起源は祭詞から発生した。わが國は祭祀國家であり、天皇はわが國の祭祀主であらせられる。天皇の國家統治は、祭祀と和歌がその基本である。

 

天皇主宰のもとに行はれる「勅撰和歌集」の編纂が、和歌の継承に不可欠であった。今日、「勅撰和歌集」が編纂されなくなってゐるのは、わが國の國柄が正しく開顕してゐないといふことである。

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