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2014年10月 8日 (水)

日本国家の本質と憲法

 日本国は権力や武力を持った者が人工的に作り上げた国家ではない。また人と人とが契約を交わして作り上げた国でもない。美しき自然の豊饒に包まれ、人々が相和し、平穏に生きてきた日本民族の悠遠の歴史と信仰の中から自然に生まれて来た国である。ゆえに、日本国の始源は神話の世界にある。

 

 日本神話の精神(伝統信仰)は古代日本人の生活から生まれてきたものである。日本人の主食は米である。ゆえに米の豊作を神に祈る祭り事を大切にして来た。日本国の生成は、稲作生活において行われる祭祀を根幹とする国土・国民の信仰的あるいは祭祀的統一である。

 

 日本国の基盤には農耕生産という共同生活を行った人々から生まれた共通の信仰・祭祀があった。その中心に祭り主たる天皇が在ますのである。稲作生活が祭祀を生み、その祭り主が天皇であり、日本という国は祭り主日本天皇を中心とする信仰共同体なのである。

 

 信仰共同体の祭り主は、共同体を代表して神意をうかがい知り、農作物の豊饒と民の幸福を祈念する。祭祀において神の意志をうかがいそれを民に伝えるために祝詞・宣命を下す方が祭り主たる日本天皇である。神の意志を民の伝える言葉が祝詞・宣命である。ゆえに、日本(やまと)という国は、「大倭根子天皇」(おほやまとねこすめらみこと・大倭根子とは大和の大地にしっかりと根を張る天皇の御地位を象徴する尊称)の祝詞(のりと)の下る範囲内を示す言葉あるといわれている。

 

 従って、日本国は、人間と人間とが契約を交わして成立した人工的な国でないし権力支配組織でもない。天皇を中心とした祭祀国家である。ゆえに日本天皇は、武力や権力によって命令を下す外国の君主(皇帝・国王)とは全くその本質を異にする。天皇は西洋の国家法人説による権力国家・利益国家の代表としての元首ではない。

 

 日本神話によれば神武天皇が大和橿原の地に都を開かれる過程において、「荒ぶるもの・順はぬもの」に対して「言向和平」(ことむけやは)したと記されている。これは言語の力を以て「荒」なるものを和やかに鎮めることを意味している。その結果邪神や反抗するものが恭順するというのである。信仰的に言えば荒ぶる神を和魂(にぎみたま)で鎮めたということである。これは平和的・宗教的に国家を統一したことを意味している。

 

 世界各地の神話では、人類最初の男女神は人間を生んでいる。しかし、日本神話では始源の男女二神たる伊耶那岐命・伊耶那美命はまず国を生んでいる。ここに日本神話の大いなる特質がある。日本神話においては神が最初に生んだものが国なのである。しかも創造したのではなく生んだのである。また人は神の子孫であるとされている。神と國・神と人とは親子関係にあるのである。ゆえに、日本国においては神と國と民とがその根源において一体なのである。そして神と國と民とを精神的に統合し一体化する御存在が祭り主たる天皇なのである。

 

 ところがキリスト教の神話においては神が最初に創造したものが人間であるとされている。「創造する」ということは創造者と被創造者との間は絶対的に隔絶しているということである。しかも神によって創造された人間は原罪を背負う。神と隔絶し原罪を背負った罪人である人間同士が契約を結び、かつその罪人である人間の中で武力・権力が優越している者が君主となって国を治めるというのである。ゆえに、国家は人工的な存在であり本来罪を背負っている。また本来罪人である国民同士の信頼関係は希薄である。君主も国民を力で強制することによって国家を治めるのである。このキリスト教の国家観・人間観が西洋国家法思想・法思想の根幹となっている。

 

 このように日本と外国との国家観・君主観の違いは大変大きい。そのことを端的に示したのが、北畠親房の『神皇正統記』冒頭の「大日本は、神國なり。天祖始めて基を開き、日神長く統を傳へ給ふ。我が國のみ此の事あり。異朝には其の類無し。此の故に神國といふなり」という文章である。

 

日本国は、神話の世界から「天皇を祭祀主と仰ぐ信仰共同体」たる傳統を保持している。そうした日本の国柄・國體を西洋の国家思想で定義する事は誤りである。「現行占領憲法」は、アメリカ憲法の模倣である。アメリカは欧米の契約思想・権力国家観に基づいている。日本國體に基づいた憲法ではあり得ない。第一、わが国には本来、権力国家ではないし、主権が国民にあるとか君主にあるというような「二元論」は無かった。現行憲法の原理を否定しなければ「現行占領憲法」の改正にもならなければ自主憲法制定にもならない。法理論上、かつて谷口雅春先生が主張された「『大日本帝国憲法』を復元し、改正すべきところは改正する」という思想が正しいと思う。

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