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2014年10月19日 (日)

「素直な心」「そのままの心」「無我の心」が大和心

わが國には、対外的危機感が伝統精神の復活・回帰の熱望を呼び覚ます歴史がある。現代もそうした時期である。共産支那及び北朝鮮によるわが國への軍事的・外交的圧迫が益々顕著になっている今日こそ、日本傳統精神を興起せしめねばならない。

 

 日本傳統精神は、「やまとごころ」「大和魂」といふ言葉で表現される。日本民族固有の精神、または、儒教・仏教などが入ってくる以前からの、日本人本来の物の見方・考え方、即ち日本の伝統的精神のことを『大和心』或いは『大和魂』という。その『大和心』を短歌形式で表白した歌が次の歌である。

 

 敷島の大和心を人問はば 朝日ににほふ山桜花

 

 近世の國学者・本居宣長の歌である。「大和心をどういうものかと人に問われたら、朝日に美しく映える山桜だと答えよう」というほどの意である。

 

 神の生みたまいし美しい國に生まれた日本人は、美しいものを見たら素直に「美しい」と感動する。その「素直な心」「そのままの心」「純真無垢の心」「無我の心」が、日本民族固有の精神である。これを「もののあはれ」という。それは、理智・理屈・理論ではない。一切の先入観を取り除いた心である。大和心即ち日本伝統精神は、純粋な感性である。嘘の無い心即ち「真心」である。

 

 「朝日ににほふ山桜花」の美しさは神々しさの典型である。宣長は、日の神の神々しさを讃えている。そこにわが國民信仰の根幹である太陽信仰(天照大神への信仰)があり、神の命に対する畏敬の念がある。

 

「真心」とは、一切の偽りも影も嘘もない、清らかで明るい心である。これを「清明心」という。その「清明心」が即ち大和心である。

 

「大和心」は「清明心」と言い換えてもよい。麗しい山紫水明の風土に育まれた日本人の倫理観は、明・浄・直の心を理想とした。「清明心」とは、私心の無い真心、くもりの無い清き心・明るい心のことである。すなわち穢れや闇さのない心である。古代日本人は、「キヨキ心」「アカキ心」(清らかさ・明るさ)を最高の道義的価値とし、「キタナキ心」「クラキ心」(汚さ・闇さ)を嫌った。日本人は、「あいつは悪い奴だ」と言われるよりも「あいつは汚い奴だ」と言われる事を嫌う。「清は善」「穢は悪」という価値観である。というよりも日本人にとって「穢」は悪以上に価値が低いのである。わが國伝統信仰たる神ながらの道で「禊祓」が重視されるものこのためである。浄穢という美的価値観と善悪という道徳的価値観とが一体となっている。

 

 天照大神は、高天原に上ってきた須佐之男命に「然(しか)らば汝(みまし)の心の清明(あか)きはいかにして知らむ」と宣(の)りたもうた。須佐之男命が高天原に上って来られた時に、命の「清明心」を証明することを求められたのであった。

 

 天照大神が、天の石戸からお出ましになった時、八百万神々が一斉に「天晴れ、あな面白、あな楽し、あな清明(さや)け、おけ」と唱えたのも、日本民族が、天皇を明るく爽やかに晴れ晴れしく仰ぎ仰慕することを道義の根本として来たからである。

 

 『宣命』には、明・浄・直という言葉が屡々使われている。今日残っている『宣命』で最も古い『文武天皇即位の宣命』には、「明(あか)き淨(きよ)き直(なお)き心以ちて、御稱(いやすす)み稱みて緩怠(たゆみおこた)る事無く、務結(つとめしま)りて仕奉(つかへまつれ)と詔(の)りたまふ大命(おほみこと)を、諸(もろもろ)聞食(きこしめ)さへと詔(の)る」と示されている。

 

 天智天皇はこの「清明心」を次のように歌われた。

 

 わたつみの豐旗雲に入日さし今夜(こよひ)の月夜清明(あきらけ)くこそ

 

 「大海原のはるかの大空に、大きく豊かな旗のように棚引く雲に入り日がさしている。今宵の月はきっと清らかで明るいであろう」という意。

 

 大らかで豊かな御歌である。この天智天皇の大御心こそが日本人の本来的に持っている精神=「大和心」なのである。この御製に「清明」という漢字が用いられている。日本人は清らかで明るい心を好むのである。

 

 明治天皇御製

 

 あさみどり澄みわたりた る大空の廣きをおのが心 ともがな

 

 さしのぼる朝日のごとく さはやかにもたまほしき はこころなりけり

 

 この御製において、明治天皇は清明心の尊さをお示し下っている。わが國において正直・真面目・潔さ・清廉潔白・光風霽月の心境・誠・真心ということが古来から尊ばれたのは、「清明心」を道義の基本に置いているからである。

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