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2014年9月16日 (火)

『一水会フォーラム』における鳩山由紀夫元総理の講演内容

七月十六日に行われた『一水会フォーラム』における鳩山由紀夫元総理の講演内容は次の通り。

 

「真の愛國者を育てることが大事。一見愛国者ぶっている人が政治家には多い。国の為とか人のためというそぶりを見せながら結局はポストとか根を満たすためという場面にしばしば遭遇した。本当に大事なことは真の意味でこの国を愛する人を増やすことだと思う。木村代表は本当にこの国を愛していると思った。三島由紀夫先生の生き様を学びつつそこから啓発されたこの国のためにという自覚。私は名前を『由紀夫』から『友紀夫』に変えた。友愛の理念を広めるためである。『由紀夫』という名前は、『紀元節に因る男』という意味で両親が付けた。三島先生の息子さんの名前は『威一郎』で私の父と同じ名前。何となく縁を感じた。

 

尖閣の事で木村代表と議論した。『日本固有の領土ではないことは分かっている』と木村氏が言ったので敬意を表した。木村氏は『尖閣は既有の領土』と言っていた。

 

私は政治家にはまるで向いていない。政治家のファミリーに生まれたのが嫌だった。三木武吉先生・河野一郎先生が来られていた。玄関は常に開けっ放し。プライバシーもない。子供心に政治家になりたくないと思ってゐた。鳩山邦夫がおじいさんの後を継ぐと言っていたので『これは有難い』と思った。変調を遂げたのはアメリカに留学してから。四十五年前、バイオテクノロジーをやりたかった。しかしなかなか簡単にいかないと感じた時、一九七六年、アメリカは建国二百年で一年中沸き立っていた。アメリカ人であることを誇りに思ってゐた。国を愛するなんて私は考えたこともなかった。当時は、愛国心は軍国主義と表裏一体と考えられていたので、愛国心という言葉を使う事が躊躇された。私は果たしてそうなのかと思い、政治家の道に行こうと思うようになった。

 

政治家の世界はあまりにも皆さん方の世界とはずれている。金がかかり、金を集めなければならない。一番頭をよぎるのは金になる。私自身も母から『子ども手当をもらっている』と言われた。母が私に内緒で色々やってくれていたことが仇になり、総理を引責辞職した。

 

国会議員は、自分なりの憲法観を持つべきと思ってゐる。国家統治はどうあるべきかを考えねばならない。二〇〇五年に『新憲法試案』という本を出した。一院制を謳ってゐる。自分なりに『國の形』を考えて書いた。国から地方に出来るだけ権限を譲るべし。人口三十万から五十万の基礎自治体に権限をできるだけ移そうという考え。不出来なものではないと思う。

 

この国は残念ながら自立していない。真に自立した独立国に仕立て上げることはできないのか、それが私の一大眼目である。国民は官僚に依存し、官僚主導政治にしてしまった。選挙の洗礼を受けないので、国民の声を聴くことができない。天降り、無駄遣い、癒着が過ぎた日本になった。〇九年の政権交代で『無駄を無くせ』という言葉・発想で国民が政治に新しい力を与えてやろうと、楫を切っていただいた。地方主権の発想。

 

日本はアメリカに依存している。日本はアメリカと戦って負けた。マッカーサーによって日本は大きく変わった。アメリカは寛大だった。日本はアメリカにお世話になった。日米安保で日本は安全だった。アメリカに感謝しなければならない。しかし、国の自立性を持って、言うべきことは言って行ける対等の友人関係にしなければならない。日米規制改革委員会でアメリカの要求によって規制改革していかなければにならないということになった。郵政民営化がそれ。しかしアメリカ自体が郵政を民営化していない。アメリカの金融が日本に上陸しやすい環境を作りたかった。日本がアメリカの影響を受けやすい典型。私の政権の時に日米規制改革委員会を止めた。結果として『年次改革要望書』は提出されなくなった。最近はTPPでさらにひどい状況になった。

 

九・一一の大事件でアメリカはアフガンに兵を進めていく。『ショウ・ザ・フラッグ』と言われ、海上自衛艦をインド洋に派遣した。政権交代して私が、カルザイと会った時、自衛隊への感謝の言葉はなかった。イラク戦争当時、日本は陸自部隊をイラクに派遣した。田中均さんは『イラク戦争は間違ってゐた。アメリカは間違ってゐた』と言っていた。英米共に間違ってゐたと認めた。

 

米国依存の最大のものは日本に米軍基地があること。『常時駐留なき安保』という事を以前から申上げて来た。有事の時は駐留してもらいたいということを方向性として訴えて来た。『普天間基地の移転先を何処にするか、最低でも県外』と強く主張した。うまくいかず、国民と沖縄県民に大きなご迷惑をおかけした。これも『常時駐留なき安保』の発想からの発言。

 

東アジア共同体の核になるのが沖縄。辺野古にジュゴンが住んでゐることが確かめられている。こういうきれいな海にでかい滑走路を二本つくるという気持ちになるであろうか。総理になって『日米地位協定』の改定をしようとした。日米の役人同士の話し合いの結果を聞くという間接話法では限界があった。直接オバマと交渉できなかったことを申し訳なく思ってゐる。

 

麻生総理の頃から『価値観外交』という言葉が出て来た。『自由と繁栄の弧を作る』ということ。しかし価値観の違う国がどうやって折り合っていくのかが外交。『価値観外交』とは中国包囲網を作ろうという話。『価値観外交』を止めて東アジア共同体の構想で、価値観の違う国といかに共存共栄するかに力を入れて行こうとした。温家宝総理と首脳会談をした時、東シナ海のガス田開発を再開していく話があった。東支那海を友愛の海にしようということになった。その三日後に総理辞任となり、その後、衝突事故がありおかしくなった。

 

『集団的自衛権』には百%反対とは思ってゐなかった。解釈は非常に広い。『集団的自衛権』の現実の行使容認は手段が極めてまずい。国民の意志を問わねばならない。大きな政策転換であるにもかかわらず、閣議決定で穴を開けてしまった。解釈改憲は姑息。国会での議論を二日間で終えるのはとんでもない。手段が悪い。強がりであり、弱さの表れ。

 

日米両国の一方の国に対する攻撃があった場合、それぞれの国が協力しなければならないということになってゐる。『安保条約』第五条に日本の施政下にある地域で自衛権の行使が規定されている。孫崎享氏は「第五条を越えた地域ー日本の施政下にない、つまりは世界中で自衛権行使が求められるのではないか」と危惧している。必ずしも武力攻撃のない時にも、敵が攻撃して来るという予測に立ってこちらが武力攻撃できるということになる。やられそうになったらやる。一概に否定するのではないが、議論が分かれる。アメリカに対等にものを言えない政府の下で『集団的自衛権』は慎重であらねばならない。いかにして武力を使わないでこの地域を平和にしていくかに努力すべし。そのための東アジア共同体。

 

地球環境問題は大変深刻。原発がゼロになっても、CO2二五%削減の実現を考えねばならない。全ての人が一%削減する努力を行えば、目標の四割を削減できる。太陽光を五割増やしていけばCO2が削減できる。こういう時こそ日中協力が必要。『北京の空を青空にしてあげる、日本に任せろ』という具体的行動が必要。

 

クーデンホーフ・カレルギーの汎ヨーロッパ主義からEUが生まれた。ヒトラー、スターリンの全体主義に対して生まれたものであった。自由と平等の間にいかに架け橋を構築するか、それが友愛の精神が日本の進むべき道保目指してゆく原動力と思う。日中が仲良くする事業を行うなら、日中の指導者が尖閣・靖國の問題で方向性を見出すことは不可能ではない。

 

田中均さんは『もう一度総理が靖國に行ったら致命的になる』と言っていた。私も、英霊に対するお参りの気持は大切と思ってゐる。しかし靖国神社に行かず、靖国神社の方向に向いてお参りすれば良い。心は大事だが心の表わし方は指導者の自制心におさめるべし。安倍氏がもう一度靖國に行ったら、日中関係は決定的になる。

 

尖閣は『ポツダム宣言』にならって考えれば、固有の領土ではない。しかし、私は『中国の領土だ』とは一回も言っていない。一八九五年の閣議了解した日本の領土。その閣議決定は官報に載せなかった。本来なら官報に載せて世界に知らしめるべきであった。標柱を立てて堂々と日本領であると宣言すべきだった。彼らに『盗み取った』と言わせる隙を作ってしまった。互いに言い分があるのだから、係争の地と認めればいい。しかし実効支配は続くのだから日本の何の不利益もない。オバマは『安保適用』を言ったのが『領有権については中立』と言っている。しかし日本は実効支配をしている。故に『日米安保』は適用される。エスカレートさせないで議論すべし。棚上げにしておくのが一番賢明と私は思ってゐる。『東アジア共同体』の構想について前向きに考えて頂きたい」。

 

              〇

 

鳩山友紀夫氏の主張はほとんど受け入れがたいものである。書き記しながら腹が立ったが、「報告」として掲載した。鳩山氏の主張は、理想と現実がごっちゃになってゐる。現実を全く無視した理想論は幻想であり、極言すれば危険な妄想である。

 

なお、小生の「友愛精神谷口雅春師の思想の関係」などについての質問に答えて鳩山氏は「谷口雅春先生は尊敬されるべき人。私の妻は『生命の実相』全四十巻を讀んでゐる。私の母・薫子は自宅のはなれで生長の家白鳩会の会合を開いていた。谷口哲学は自己の尊厳と他者の尊厳を認める」と答えた。しかし、友愛精神と生長の家の思想については語らなかった。谷口雅春師と鳩山一郎氏夫妻の事については、いずれ詳しく論じたいと思ってゐる。

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