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2014年9月13日 (土)

皇祖たる日の神の神靈と稲穂の神靈とは一體である

 伊勢の神宮御正殿の建築様式を「唯一神明造」といふ。弥生時代の高床式の穀倉形式である。素朴であり、何の豪華さもない。しかし、いふにいはれぬ清浄さと威厳がある。日本文化の簡素さと清浄さを體現する建物である。日本人の信仰精神の結晶である。

 

神を祀る社殿のことを祠(ほこら)といふは、穂倉(ほくら)に由来するといはれる。人々の生命の根源である稲などの穀物の収蔵庫は神聖視されたので、神のまします建物が穂倉の形になったのであらう。

 

稲作は、日本人にとって、天照大御神の「みこともち(御神勅)」によって天照大御神の「ことよさし(御委任)」を受けたところの神聖なる「なりはひ」である。稲作生活そのものが神聖なる行事なのである。

 

稲穂にとって太陽の光と温熱は、生命の原動力である。稲などの穀物は、太陽の光明温熱がなければ発育しないので、自然に日の神祭祀と穀靈祭祀が二つながらに発展し、豊かにし、洗練され、高度化され、統一されて行ったと思はれる。

 

皇祖神たる日の神の神靈と、稲の命たる稲穂の靈(穀靈)とは一體となった。日靈・祖靈・穀靈は一體の関係にある。國民一人一人も、穀靈・日靈・祖靈の神靈に生かされてゐるのである。

 

日本民族の主食である稲穂の「ホ」とは、日であり火であり穂であるとされる。皇室の祖靈であらせられる火照命(別名・火須勢理命、邇邇藝命の御子) 火遠理命(別名・彦火火出見尊、邇邇藝命の御子)の「ホ」は、穂であり火であり日である。つまり、皇室の祖靈は稲穂の靈であり太陽神の靈であせられる。

 

 天照大御神は、「以吾高天原所御斎庭之穂、亦當御於吾兒」(吾が高天原に所御(きこしめ)す斎庭の穂を以て、亦吾が兒(みこ)に御(まか)せまつるべし。わが高天原に造ってゐる神に捧げる稲を育てる田の稲穂をわが子にまかせやう)といふ神勅を下された。「日本國の統治者たる天皇は常に稲穂の豊饒を最高の使命とすべし」とご命令されたのである。

 

天照大御神は、日神・穀靈・皇祖神としての御神格を有せられる。ゆへにその生みの御子たる天津彦彦火邇邇藝命も日神・穀靈を體現されるのである。高天原の主神たる天照大御神の生みの御子たる天皇が豊葦原瑞穂國の主であらせられると拝するのは、ごく自然な信仰である。

 

『日本書紀』には、物部大連尾輿と中臣連鎌子が、欽明天皇に奏上した言葉として、「我が國家(みかど)の、天下に王(きみ)とましますは、恒に天地社稷(あまつやしろくにつやしろ)の百八十神(ももあまりやそかみ)を以て、春夏秋冬、祭拝(まつ)りたまふことを事(わざ)とす」と記されてゐる。

 

天皇は祭祀主として日本國を統治されるのである。天皇の神聖権威の根源は祭祀主たることにある。

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