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2014年8月 8日 (金)

シンポジウム「東シナ海での危機回避に向けた日中対話の必要性」における登壇者の発言

五月二十九日に行われた笹川平和財団主催『公開シンポジウム「東シナ海での危機回避に向けた日中対話の必要性」―航行安全をめぐる日中民間対話の試み―』における登壇者の発言は次の通り。

 

羽生次郎氏(笹川平和財団会長)「最近の日中戦闘機の接近はかなり危険。解決・協議・対話の糸口もない。偶発的衝突が起こる可能性あり。日中では海洋法の解釈が異なる。衝突をどう回避するかが問題。パトロールボート同士の衝突をどう防ぐか。国際海洋法条約の解釈が問題となる。日本の海保と中国の海警との信頼関係が重要。敵対する二国間でも信頼醸成は有効。冷戦時代でも米ソで一九七二年に協定が結ばれた。CBМ(信頼醸成装置Confidence-building measures)は機能する可能性高い。船舶同士の衝突による損傷、相手国民の逮捕などが考えられる。両国政府の明確な合意が必要。相手方のパトロールボートが自国海域で違法行為をしなければ強力な措置をとらなくて良いが、逆の場合も出る。情報交換、武器使用についての協定が極めて大事。偶発的事故が起こる可能性あり。そしてナショナリズムの対立につながる危険あり。法執行機関同士の信頼関係醸成が大事。憲法の制約内で『集団的自衛権』の行使可能」。

 

朱鋒氏(北京大学教授)「中日関係はどのようなルートでも、とても複雑な状況を改善しようと努力している。中日両国の安定は必要であり、危機管理が必要。双方の国民感情が遠く離れすぎている。政治的対抗がある。両国にナショナリズムが立ち上がっている。政府レベル民間レベルで中日関係の衝突を減らしていきたい。釣魚島問題でCBМを立ち上げたい。お互いに責めるだけではいけない。双方とも柔軟性が必要。釣魚島問題がどちらに帰属するかと話しても解決できない。それを横に置いて危機管理と信頼関係醸成に努力した。ただ単に相手方を非難するのではなく、中日の専門家として目や能力を尊重した。日中双方の専門家が、率直に意見交換ができた。それぞれの国内法を理解することができた。透明性が高くなった。お互いの信頼情勢のメカニズムが必要。危機管理措置を構築しようとしている。時限爆弾の危険性を下げるには、危機管理が必要。お互いの行動は抑制的であるべきだ。政治的チェックを働かせる必要あり。西側の学者は『世界第一、第二の大国が、人が住んでいない島で争うのが不思議』と思っている。釣魚島の危機管理は衝突を避けるだけでなく、感情的対立を減らしていくことが大事。日本は集団的自衛権行使を容認すべし。しかし、憲法改正をしないのは日本の民主主義に合わない。また集団的自衛権行使の狙いが釣魚島であればそれは危険。緊張を増す。釣魚島に日本が軍を派遣すれば、中国も軍を派遣することになる。私は日本の法律改正を尊重する。日本を民主主義国家として尊敬する。しかし釣魚島を想定した法改正には悲観してしまう。これは脅しではない。戦略的忍耐力が必要なのに何故できないのか。その原因は。①中国の三十年間の発展が早すぎた。②中国の外交が国内のナショナリズム抬頭の虜になっている。中国国民は中国外交が弱腰だと思っている。民意によって外交ががんじがらめになっている。③陸上では十五、海上では七つの国と国境を接しているという中国の特殊性。日本は明治維新以後近代国家に仲間入りした。国際法をきちんと理解している。しかし中国は一九四九年から今日まで、毛沢東の『革命の時代』・鄧小平の『改革開放の時代』・習近平の『中国の夢の時代』を経験している。中国と世界の関係を合理的に考える時代はまだ来ていない。中国外交はおかしな方向に飛んでいく。釣魚島問題は、中国にとって日清戦争後の歴史の一部である。日本は二千年に及ぶ隣国として中国をやさしく見てほしい。中国はまだ十八歳くらいの高校生。反抗期。グローバリゼーションか高まれば中国は成長する。これからの二十年が大切」。

 

中谷和弘氏(東京大学教授)「対話はアカデミックにして友好的に行われた。領有権については一切話さない。個人の資格で参加。何かあるとナショナリズムが湧き起る。日中の見解の相違は致命的ではない。お互いの法制度・法解釈を理解することが大事。空域においても航行安全の対話が必要」。

 

洪農氏(中国南海研究院)「東支那海には国際法・国内法を適用すべし。国が違えば法執行の在り方も違う」。

 

真山全氏(大阪大学教授)「この報告書は領有権問題を棚上げにして信頼関係を醸成できるのか。お互いに法執行をしないことができるのか。日中専門家で大事な枠組みができた。領土問題はないと日本は考える。中国は、紛争はないとしている。紛争があるとすると『国連憲章』の平和的解決の義務が発生する。紛争はないのならそういう義務は発生しない。法的には双方に武力行使はできないという歯止めがかかる。この報告書は紛争があるかないかには立ち入らない。日中いずれの主張も原理的には衝突しないという報告。そして具体的措置が書いてあるところがこの報告書の最大の意義。お互いに妥協していない報告書。法執行の一般論として限界を検討している。この報告書の通りになれば緊張は緩和できる」。

 

飯田将史氏(防衛省防衛研究所主任研究官)「個人の立場で発表する。CBМの可能性は難しいが必要性はある。国家間の不確実を減少する措置。中国の公船の活動が活発化している。海軍の権益取得が活発化している。中国がレーダー照射を行った。海保と海警が接近して牽制している。中国機が自衛隊の情報収集機にスクランブルをかけた。海上と上空での信頼醸成が必要。先例から学ぶべし。これまでの積み重ねがある。『海上事故防止協定』は米ソで一九七二年に結ばれた。一九八八年の黒海での米ソ間船の衝突のエスカレート防止に役立った。日中でのCBМ実行の前提条件は①領土主権・海洋権益を損なわない形で行う。この条件はクリアできる。②両国に不測の事態を起こしてはいけないという共通認識がないと実行は難しい。現実的には楽観できない。規範の共有と深化のための定期協議が必要。エスカレーションの防止には様々のレベルで連絡機関が必要。共同訓練の実施も考え得る。海警・海保は直接の通信は行われていない。グレーゾーンとは既存の法制度・法体系では対応できないこと。法改正につなげていく」。

 

干鉄軍氏(北京大学准教授)「二〇一二年に中日関係が急速に悪化した。国民感情も対立。日中は危機状況にある。衝突が発生すれば厄介になる。CBМの構築は日中の急務。危機管理は広い範囲のCBМの一つ。当局同士の対話と意思疎通が必要。そのメカニズムを構築すべし。政治家とメディアが相手方をよく理解し、相手方の立場に立って考えるべし。アメリカが建設的役割を果たしてほしい。習近平時代になって日中対立は高まっている。憲法改正について他国がどうのこうの言うべき事ではない。危機管理にはガイドラインがある。ゼロサムの形で相手の譲歩を求めてはならない。中国は後発組。発展したがダメージもある。既存の体制にとって発展する国は脅威となる。今の中国は発展が早すぎた。自分をどう位置付けるかはっきりしていない。外国に強硬なイメージを与えてしまう。一方、国内では弱腰という批判が起る」。

 

李恩民氏(桜美林大学 教授)「歴史の中で民間外交に注目し研究して来た。民間外交は大きな役目を果たせる。梅屋庄吉と孫文、魯迅と内山書店というように戦争の時も民間交流は堪えなかった。戦後の周恩来と稲山嘉寛。民間の協力なくして安定した関係はできない。グローバルに視点が必要」。

          ◎

共産支那の知識人には比較的まともな考え方を持つ人もいるということか。これが支那国民全体の共通認識になれば良いのだが…。しかし、共産支那の領土拡張・軍事的覇権確立の動きは世論に動かされているだけではなかろう。

 

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