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2014年6月24日 (火)

『徒然草―美術で楽しむ古典文学』展を参観して

今日参観した『徒然草―美術で楽しむ古典文学』展は、「鎌倉時代末期、兼好(けんこう)法師(生没年未詳)によって書かれた『徒然草』は、名文の誉れ高く、『枕草子』・『方丈記』とともに日本三大随筆に数えられます。…『徒然草』流布の過程で、〈徒然絵〉とも呼ぶべき絵画作品が登場するようになります。近年館蔵品に加わった海北友雪(かいほうゆうせつ)筆「徒然草絵巻」二十巻もその一つです。そこで本展では、この新収絵巻を初公開するとともに、屏風や絵本などの美術作例を通して、一度は読みたい、今こそ知りたい『徒然草』の名場面をたどります。…『徒然草』といえば無常観の文学といわれますが、兼好は、「無常」という時代の既成概念に挑み、現世にあっていかに生きるべきか、いかに楽しむべきかを探究した現実主義の人でした。本展では、兼好の心うつりゆく世界を美術作品とともにぜひお楽しみください」との趣旨で開催された。(案内文)

 

『兼好法師像 伝海北友雪筆』(江戸時代) 『一の谷合戦図屏風 海北友雪筆』() 『徒然草絵巻 海北友雪筆』() 『徒然草・御室法師図 英一蝶筆』() 国宝『法然上人絵伝』(鎌倉時代)などを参観。

美術的価値がどれほどあるかは小生には分からなかったが、海北友雪が絵巻に描いた「徒然草」の話は面白かった。

 

その一部を紹介すると、「公世(きんよ)の二位の兄に、良覺僧正と聞えしは極めて腹惡しき人なりけり。坊の傍に大きなる榎の木のありければ、人、『榎木僧正(えのきのそうじょう)』とぞ言ひける。この名然るべからずとて、かの木を切られにけり。その根のありければ、『切杭(きりくひ)の僧正』と言ひけり。愈(いよいよ)腹立ちて、切杭を掘りすてたりければ、その跡大きなる堀にてありければ、『堀池(ほりけ)の僧正』とぞいひける。」(従二位・藤原公世の兄で、良覚僧正と申し上げた方は、とても怒りっぽい人であった。僧正の住む僧坊のそばに大きな榎の木があったので、人々は「榎の木の僧正」とあだ名をつけて言っていた。僧正は、その名はけしからんと言って、その木を切ってしまわれた。しかし、その根が残っていたので、今度は人々は「切りくいの僧正」と言った。ますます腹を立てた僧正は、切り株を掘って捨ててしまったところ、その跡が大きな堀になったので、人々は「堀池の僧正」と言ったという。)(四十五段)

 

 「仁和寺に、ある法師、年よるまで石清水を拜まざりければ、心憂く覺えて、ある時思ひたちて、たゞ一人徒歩(かち)より詣でけり。極樂寺・高良(こおら)などを拜みて、かばかりと心得て歸りにけり。さて傍(かたへ)の人に逢ひて、『年ごろ思ひつる事果たし侍りぬ。聞きしにも過ぎて尊(たふと)くこそおはしけれ。そも參りたる人ごとに山へのぼりしは、何事かありけむ、ゆかしかりしかど、神へまゐるこそ本意なれと思ひて、山までは見ず。』とぞ言ひける。すこしの事にも先達(せんだち)はあらまほしきことなり」。(仁和寺にいたある法師が、年を取るまで、石清水の八幡宮に参拝したことがなかったので、それを残念に思い、ある時思い立って、たった一人で徒歩で詣でたそうだ。そして、ふもとの極楽寺や高良社などの付属の末社を拝して、これだけだと思い込んで帰ってしまったそうだ。それから、仲間の法師に対して、「長年思っていたことを果しました。聞いていたのよりずっと尊くあらせられました。それにしても、参詣していた人々がみんな山に登ったのは、山の上に何事かあったのだろうか。私も行きたかったが、神へ参詣するのが本来の目的だと思い、山の上までは見ませんでした」と言ったという。そういうわけだから、ちょっとしたことにも、指導者はあってほしいものだ)(五十二段)

 

  第一段には、「いでや、この世に生まれては、願はしかるべき事こそ多かめれ、みかどの御位は、いともかしこし。竹の園生(そのふ)の末葉まで人間の種ならぬぞやんごとなき」(いやもう、この世に生まれて来たからには、当然願わしく思うであろうことこそ多くあるようだ。帝の御位は、たいそう畏れ多い。帝の御子や孫まで、人間の種でないことが貴い)と書かれている。これは古代以来の「現御神信仰」「現人神信仰」を継承している。

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