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2014年6月27日 (金)

袴田茂樹氏の講演内容

五月十日に行われた『アジア問題懇話会』における袴田茂樹新潟県立大学教授の「ウクライナ情勢から新たな世界秩序を読む」と題する講演の内容は次の通り。

 

「プーチンのクリミア併合によって、国際パラダイムが根本的に再検討を迫られている。近十年から二十年、ポストモダニズムという考え方が、先進国の政治学者・政治家に広まっていた。『国家・国民・主権・国境は。グローバル化が進展している二十一世紀には博物館行きになる。国際問題が生じたのは、二十世紀までのモダンの世界でのこと。欧州連合が示しているように、国民国家は意味を失っている』という考え方が主流になっていた。今回のロシアのクリミア併合はポストモダニズムと逆の現象。ポストモダニズムの甘さが露呈した。国際社会は生地の部分は百年前も今日の全く変わっていない。二十世紀前半の状況に酷似している。ヒトラーのチェコズデーデン、オーストリア併合と全く同じ論理で、プーチンはクリミア併合をやった。冷戦時代は、東西両陣営という枠組みが強く作用して国家・民族・宗教というファクターが抑え込まれていた。それは冷戦時代の産物であり、歴史的に例外。人間の本質は変わっていない。

 

プーチンは昨日クリミアに乗り込んだ。三月に併合を宣言。三月十六日に住民投票を行った。欧米社会はそれを黙認している。ウクライナ東部と南部のクリミア化が問題になっている。これは日本にとってかなり深刻。中国は『沖縄は朝貢国』という認識を持っている。

 

ロシアがウクライナ東部・南部併合を目指しているとは思わない。あまりにも欧米諸国を刺激しすぎる。プーチンの志はもっと大きい。ウクライナ東部のクリミア化すると西部・中部が西側・NATOに走ってしまう。ロシアはウクライナの連邦化を主張。ウクライナ東部は、ハンガリー、オーストリアの文化的影響下にある。西ヨーロッバの文化圏。東部・南部はロシアの文化圏。ロシアにとってウクライナが最後のバファゾーン(緩衝帯)。スターリンもその他の指導者も、共産主義を外に広めるよりも、ロシアを守るという意識が強かった。フィンランドはスターリンに安心感を与えるためにNATOに入らなかった。

 

西側が『経済制裁』と言っても、ロシアは大笑いしている。短期的には大きなダメージを与えないが、長期的にはダメージを与える。新しい冷戦の始まりという見方があるが、それは冷戦の定義による。世界が二つに別れて対峙するという冷戦にはならない。冷戦時代に封じ込められた国家・宗教・民族のパンドラの箱が開かれた。地政学的な国家間の対立、駆け引きが生じる可能性あり。

 

クリミアは元ロシア領でロシア系住民が六割。黒海艦隊の母港がある。一つの主権国家の中で、一地域が主権を決めることはできない。地域主権という言葉は論理的に成り立たない。沖縄県民、名護市民は、米軍基地について決定権を持っていない。

 

プーチンの強硬姿勢の背景はオバマの無力・無戦略。プーチンはオバマを軽蔑している。ロシア国民に大国主義的メンタリティを満たすことが重要。プーチンはそれを満足させた。支持率八割以上。最大の原因は、ウクライナの軍・治安機関の無力。世界が軍事力を減らしている中で、中露だけは軍事費を伸ばしている。日本も対ロ政策で大きなジレンマを抱えている。G7(ジーセブン)の中でロシアに力で領土を侵害されているのは日本のみ。ウクライナの痛みが一番よく分かるのは日本のみ。クリミア問題できちんとロシアを批判するのが日本の権利であり義務である。安倍さんも『力を背景とした現状変更は看過できない』と言った。

 

メドベージェフが国後を訪問した時、当時の玄葉外相は秋田犬を持ってロシアに行った。ソチで外相会談をした。それを注視したのが李明博。彼は竹島に行った。天皇陛下への謝罪要求がターニングポイントになって日韓関係が悪化。日本は主権侵害に真剣ではないことを国際社会に示した。日本は主権国家として当然の行動をとるべし。岸田外相訪露延期は適切。プーチン訪日取りやめは覚悟しておくべきだ。プーチン訪問で北方領土は返還されない。

 

中ロ関係は複雑。公式的には良い関係にある。しかし本当の意味の信頼はない。中国の軍事力強大化をロシアは懸念している。『中国人が俺たちを馬鹿にするようになった』と思っている。歴史問題は、『対日勝利』を中露が共に出して来る可能性あり。尖閣問題ではロシアは中国を支持しているわけではない。

 

ヨーロッパとアジアは違う。主権制限の共同体はアジアではできない。中国は主権を制限したアジア統合など毛頭考えていない。中国共産党は抗日戦争がアイデンティティの基礎であった。今日も然り。政権の正統性が抗日戦争。九十年代のロシアはアナーキー・無秩序になった。プーチン時代に石油価格の上昇で経済が好転。偉大なロシアで統合。大国主義的ナショナリズムになった」。

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