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2013年8月12日 (月)

宮内庁が皇室をお守り使命を十分に果たせる状況にない

戦前の宮内省と比較すると今日の宮内庁の権限は大幅に縮小されてゐるし、皇室の尊厳性をお護りする法律も整備されてゐないので、宮内庁が皇室をお守り使命を十分に果たせる状況にない。

 

『選択』平成十七年六月号掲載の『藩屏(注・守り防ぐための垣根。皇室を守護するもの)不在』といふ記事に、皇室に関して次のやうな重大な指摘がなされてゐた。「政府に遠慮しなかった宇佐美(注・毅氏。二十五年間にわたって宮内庁長官を務め、昭和天皇のお仕へした人)に閉口して、官邸がコントロールしやすいやうに、宇佐美の後の宮内庁長官を官僚の一ポストに過ぎなくした…入江(注・相政氏。半世紀にわたって昭和天皇にお仕へした人)の実力に政治家も手が出せなかった。…宇佐美の後任、警察官僚の富田朝彦は次長四年、長官を十年勤めたが決断が鈍く、『小型』官僚の典型であった。…誰がどのようにして皇室を支へるのか。『馬齢官僚』は願い下げだが、適材なら定年など無視して構わない。学者や民間人の起用も選択肢の一つである」と書いてゐる。富田氏については部下だった佐々淳行氏も「あさま山荘事件」についての自著で「不決断の警備局長」と批判してゐた。

 

この富田氏の「メモ」が大きな問題を起こしたのは記憶に新しい。三木武夫総理(当時)が靖国神社参拝について「私的参拝だ」などと余計なことを言った。富田宮内庁長官は、その翌年の昭和五十年十一月二十日の参議院内閣委員会において、社会党の野田哲・矢田部理・秦豊両議員から、その翌日に行れた天皇陛下の靖国神社ご親拝について、次のやうに厳しくかつ執拗に責め立てられた。 (この時、秦豊は、先帝陛下に対し奉り「裕仁氏」などといふ言辞を弄した)

 

「野田哲氏『あなた(注・富田氏のこと)は憲法第二十条、国及びその機関はいかなる宗教的活動も行ってはならない、こういう規定があることは承知の上でこの計画(注・先帝陛下の靖国神社御親拝のこと)を立てられたわけですね。天皇陛下を公的に靖国神社に参拝をさせる道を開いていきたい、これが基本になっているわけなんです。やはり憲法上そこに非常に大きな問題があるということが、そうしてまた、国民の憲法20条を守っていこうという大きな世論があることが、これが実現をしない一番の基礎になっているんです。あなたはそのことを御承知ですか、そういう経過が靖国神社をめぐってはあるということ、是非はともかく経過があるということをあなたは御承知になっておられますか。』

 

秦豊氏『すでに今年の8月には何があったか。三木総理大臣が、南平台の一市民三木武夫というふれ込みと、あるいはカムフラージュで靖国に参拝したことは、これはもう公然たる事実でしょう。』『三木さんは行った、あすは天皇だ。』『自然人裕仁氏の自然行為ではない、私的行為というような強弁は聞けない、こういう立場をわれわれは堅持したいと思う。』『あなた方はあくまでやはり公のしもべ、公僕ではなくて、すめらぎのしもべという感じがして仕方がない。しかも、あなた方のやっているそういう行為の一つ一つが、あなた方が一番大事に思っているはずの天皇というものを政治的に非常に渦中にさらす、政争の焦点に立てるということに対する感受性もない。実に恐るべきぼくは鈍感さだと思う、あえて言いたい。』『私がやはり宮内庁側に、あるいは総理府総務長官に申し上げたいのは、…とにかくあすの参拝については再考慮をするというふうな柔軟な考え方がなぜ生まれないか。ぜひとも私は、この際、まだ時間もあることだから、宮内庁としても総理府総務長官としても、やはり再考慮をあられたいという要望を私は私の質問の最後にぜひとも申し上げておきたい。』

 

矢田部理氏『天皇が公式行事として靖国神社を参拝すれば憲法二十条の第3項に抵触することになると考えているのか。イエスかノーかだけ答えてください。』『宮内庁長官や侍従長あるいは政府職員がこれに随行するようなやつは私的行為とは言えないんじゃないかという問題点も出されています。さらに、費用の使い方も問題だ。私的行為であるとするならば、純粋に天皇の個人資産から支出をすべきなんです。それを公の費用で賄うということもおかしい等々の点で、どうしても私的行為だという強弁には承服しがたいわけであります。』」

 

かうした執拗にして悪辣なる社会党の国賊議員たちの国会における質問・追及が、富田氏に大きな脅威と圧迫となったと思はれる。この後、先帝陛下が靖国神社に行幸されなくなった。富田氏が、政治家の圧迫と追及に震へあがり、先帝陛下にいろいろな情報を申し上げて、先帝陛下の靖国神社行幸をお止めし、それを糊塗するために「A級戦犯云々」を「日記」に書いたと推測するのは邪推であらうか。

 

「富田メモ」が富田氏の創作であると言ふのではないが、富田氏の意志がまったく混入されてゐないといふ保証はない。「富田メモ」に書かれてゐることはあくまでも、富田氏の聞き書きであり、先帝陛下のお心を百パーセント誤りなく伝へているとは言へない。

 

現行体制下の宮内庁長官は、政治権力者と対等にものを言へる立場ではない。それが皇室の政治利用が行はれる原因である。そして国会で国賊議員からとっちめられれば、天皇陛下の靖国神社御親拝も行はれなくなる。天皇陛下の側近が政治家に顎で使はれたり、国会議員に恫喝されるやうでは、天皇・皇室を政治権力からお護りする事は出来ない。

 

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