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2013年4月26日 (金)

常盤伸東京新聞論説委員の講演内容・その一

四月十五日に行われた『一水會フォーラム』における常盤伸東京新聞論説委員兼外報部デスクによる「阿部首相の訪露を待つプーチン・ロシアの現状」と題する講演内容は次の通り。

「新聞社に入る前、ペレストロイカの時代にソ連政治史を研究した。今とは別の新聞社に入り、入社四年で崩壊直前のソ連に行った。一年弱、崩壊のドラマを見た。二〇〇五年のプーチン政権第二期、二〇〇八年グルジア戦争を経て帰国、現在に至る。先月、『ロシア日本有識者会議』に参加。

ロシアは必ずしも日本にとって友好的な隣人ではなかった。日本には、ロシアに対して両極端の立場がある。ソ連を敵対国家とする立場と、ソ連を理想国家とするマルクス主義者の立場があった。対象から距離を置いた客観的認識からは遠い。ロシア人から『マスコミはロシアの悪いことばかり書いている』というコメントをもらった。チェチェン紛争などがどうしても大きなニュースになる。八〇年代以降、文学・芸術・科学・医学が発達した面も多い。客観的に分析して伝える以外にない。

日ロ領土問題には、国内要因、国際環境、リーダーシップの三つの要素がある。この三つの変数がある複雑な方程式になっている。

プーチンの実質的三期目となってロシアは地殻変動の時代を迎えている。二〇〇九年から一一年は想定内の出来事。想定できなかったことは二〇一一年の年末の下院選挙で不正があったということで反政府デモがあったこと。最大十数万人のデモがモスクワで起きた。ソ連崩壊後最大規模。のどかで平和的なデモをした。クレムリンも予想していなかった。大統領府はアタフタした。

一昨日の世論調査で、二〇一八年にプーチンの再選を望む人は二二%、政府系世論調査でプーチンを信頼すると答えた人は三十数%しかいない。社会と国家権力との溝が深まっている。かなり大きな社会構造の変化がある。都市の中間層という固定した階層が政治の中に現われている。特筆すべき現象。生活に密着した感じで政治意識が高まって来た。ロシア社会には強い権力が必要だったが、それとは違う動き。若者中心の自分たちが参加する動きが出て来た。ロシアには中国と違ってIT統制がない。社会学者はロシア人の覚醒という形でとらえている。

KGB出身の強硬派が中心となって全面的・強権的弾圧に出ている。『色々な社会団体は外国の利益のために活動するエージェント,人権団体は欧米からの支援を受けている』として社会的信用を落とそうという動きがある。

プーチン体制は分かりにくい状況。クレムリンの奥の院は分からない。ロシアの憲法を読んでも分からない。権力に近いエリートの人間関係を調べて予測するしかない。実際の政治権力は新たな政治局のような九人のグループによって左右される。世界一の石油会社社長のセチン・ロスネフチ、メドベージェフ首相、セルゲイ・イワノフ大統領府長官(元KGB)、ボロジン大統領府副長官、ソヒャーニン・モスクワ市長、セルゲイ・チュメゾフ国営ロステクノロジー社長、ゲンナジ・チムチェンコ氏(元KGBの噂・石油輸出会社グンバー社長)、ユーリー・コワルチュク氏(ナショナル・メディア・グループ総帥)

元KGBが政治経済の両方を動かしている。外国への猜疑心が強い。ソ連の崩壊は外国の干渉によるという発想。権威主義体制の再編強化。中間層の離反を徹底的に封じ込めないと心配で仕方がない。地方自治の公選制復活を取り消した。プーチン政権の体制強化で腐敗指数が上がって行った。利権構造にメスを入れると自分たちの利権構造が破壊されてしまう。野党の無力化、テレビの統制、選挙管理委員会の統制、というクレムリンが操作できる民主主義を何とかしなければならない。しかしこれをするとプーチン体制が壊れる。矛盾した状況。

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