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2013年4月21日 (日)

「春の優品展 和歌の世界」を参観して

今日参観した「春の優品展 和歌の世界」は、「五島美術館と大東急記念文庫の所蔵品の中から、歌人の肖像画『歌仙絵』、平安・鎌倉時代の『古筆』、歌銘をもつ『名物茶入』『茶碗』など、名品約70点を展示。『萬葉集』『古今和歌集』などの名歌が生み出す雅な世界を展観します」(案内文)との趣旨で開催された。

国宝「源氏物語絵巻」(平安時代)、重要文化財「上畳本三十六歌仙絵 紀貫之像」(鎌倉時代)、重要文化財「高野切古今集(第一種)伝 紀貫之筆」(平安時代)、『古今和歌集序 伝尊円親王筆』(鎌倉時代)、重要文化財「蓬莱切 伝 藤原行成筆」(平安時代)、「小倉色紙 藤原定家筆」(鎌倉時代)、「唐物肩衝茶入 銘 安国寺」(南宋時代)、重要文化財「愛染明王坐像」(鎌倉時代)など多数の文物が展示されていた。

和歌に関わる美術作品である。

『古今和歌集序 伝尊円親王筆』には、「やまとうたは、ひとのこころをたねとして、よろづのことのはとぞなれりける。世中にある人、こと、わざ、しげきものなれば、心におもふことを、見るもの、きくものにつけて、いひいだせるなり。花になくうぐひす、水にすむかはづのこゑをきけば、いきとしいけるもの、いづれかうたをよまざりける。ちからをもいれずして、あめつちをうごかし、めに見えぬおに神をもあはれとおもはせ、をとこをむなのなかをもやはらげ、たけきもののふの心をもなぐさむるは、うたなり」と美しい文字で書かれてゐた。

明治天皇は『古今和歌集仮名序』を踏まえられて、「世の中のことあるときはみな人もまことの歌をよみいでにけり」「天地をうごかすばかり言の葉のまことの道をきはめてしがな」「まごころをうたひあげたる言の葉はひとたびきけばわすれざりけり」と詠ませられてゐる。

和歌は決して遊びごとでもないし単なる美辞麗句を連ねたものでもない。まさに「まごころをうたひあげたる言の葉」なのであり、「世の中のことあるときによみいでる」ものなのであり「天地をうごかす」力を持つものである。神代の昔に発生し日本の道統を継承する最高の文藝が和歌である。

藤原行成の書は名筆であり、私も大学時代書道の授業でお手本として習ったことがある。藤原定家の書は実に個性的である。「唐物肩衝茶入 銘 安国寺」は、戦国時代から安土桃山時代にかけての活躍した禅宗の僧侶にして武士・安国寺恵瓊(えけい)が所持していたものである。安国寺恵瓊は毛利氏の外交僧であったが、後に豊臣秀吉に側近として仕えた。関ヶ原の戦いで、西軍の参謀格となった。敗戦後、六条河原にて斬首され、石田三成・小西行長と共に梟首に処せられたという。

「愛染明王坐像」は、小泉策太郎(号・三申)が所持していたもの。小泉策太郎は、明治から大正初期にかけて活躍した政治家。俳優の小泉博、画家の小泉淳作の父君である。林房雄を転向させた人物という。小生が書生をしていた野依秀市先生は、小泉氏から贈られた「文章は経国の大業にして不朽の盛事なり」という言葉が書かれた書幅を大切にしておられた。そして野依先生はそれを林房雄氏に贈呈された。

五島美術館は、昭和35年(1960418日、東京急行電鉄株式会社の元会長・五島慶太氏によって創立された。五島慶太氏が蒐集した美術品を中心になっている。また五島氏が収集した古文書などが保管されている大東急記念文庫も同じ場所にあり五島美術館と最近合併した。

五島慶太氏は、西武鉄道の堤康次郎氏と「強盗慶太、ピストル堤」と並び称されていたが、この美術館に所蔵品は、五島氏が強盗をして集めたものではない。

五島氏の私邸であった庭園も実に広大で、急な崖がある。「おみ足とご相談の上散策願います」と案内書に書いてあった。雨も降っていたし、「おみ足とご相談」の結果、残念ながら崖の下には下りなかった。しかし崖の上からの眺めは実に良かった。

私宅近くの上野公園にある美術館・博物館にはしょっちゅう行くのであるが、世田谷区は遠いので、静嘉堂文庫というのもあるし、長谷川町子記念館というのもあるのだが、なかなか来ることが出来ない。この五島美術館には、学生時代に授業の一環として『源氏物語絵巻』の参観に来たことがある。その時、松村達雄さんという俳優に会った思い出がある。『男はつらいよ』に度々出演した人である。

今日は雨降る中、はるばると上野毛まで来たが、みやびの世界にしばしひたることが出来たことを喜んでいる。

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