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2012年8月20日 (月)

高野孟氏の「日本農耕文明に回帰せよ」と題する講演内容

一水会フォーラムにおける高野孟氏の「日本農耕文明に回帰せよ」と題する講演内容。

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「社稷の社は五穀の神。稷は土地の神。周の時代から天子が壇を立て国の繁栄を祈った。転じて社稷とは国家の意となった。

福島原発事故で、使用済み核燃料プールが爆発を起こさなかったのは全くの偶然。『神風が吹いた』とアメリカの専門家は言った。全電源喪失で水素爆発を予想し首都圏三千萬人の退避を覚悟した。しかし危機的状況は去っているわけではない。

一九五四年が日本の原発元年。アメリカの押しつけによる原発導入。その先頭に立ったのが正力。使い走りが中曽根。翌年、科学技術庁が出来、初代長官に正力が就任。読売がキャンペーンを張った。一九四五年から六七年間、広島・長崎・ビキニ・スリーマイル・チェルノブイリ・福島という六大核大惨事。そのうち四つが日本。核なき世界への先導者は日本以外にない。西洋技術文明・近代化、金で買える幸せを追い求めてきた。その延長線上で考えては駄目。

七一〇年、律令国家が出来た。天皇制国家の皇祖神は天照大御神。読売は、『ついに太陽に手が届いた』と書いた。日本の太陽神は縄文にさかのぼる。古代の人類の太陽への思いに於いて世界へつながる。中国は天と地の垂直思考。日本は縄文以来水平思考。伊勢神宮をはじめとした神社の配置は、朝日を見ている。東から出て西に沈む。水平的な太陽への親しみ方が日本の特徴。『萬葉集』に『高天原』が出てきた。天照大神は垂直と水平の折衷。縄文以来の太陽信仰が律令国家・『記紀』の成立と前後して、ニューバージョンになった。

縄文以来一万三千年。太陽の恵みを生かして農耕生活を充実させていくことが始まった。稲が中心となる日本農耕文明はそれだけの歴史を持つ。太陽こそ命の源、太陽が神であるという事をもう一度かみしめなければならない。太陽こそが地球の生命の循環を司っている。

日本列島は南北三千キロ。きわめて高い生産力を持っている。豊かな風土。日本人は上手に使いこなしてきた。蝦夷・大和・琉球の三次元が日本の歴史構造の基礎。竹田恒康氏は『原発は神の土地を放射能で汚した』と言った。その通り。土地の表面は私の物。土地の中は祖先や村の皆の物。その下は神様の物。これが日本人の土地感覚。それを一瞬して何万年も使えなくするのは放射能。

江戸時代初期から中期に世界最高レベルの農耕技術に発展。土地生産力を引き出す革命を江戸中期に行った。その力が日本近代化を準備した。大阪で初めて米の先物取引所が出来た。

日本は稲作漁撈文明。西洋は麦作牧畜文明。西洋は怒りと力の文明。日本は安らぎと慈悲の文明。西洋は経営規模拡大。日本は家族労働。西洋は森林伐採。日本は森林保全。森を切ってしまうのか大事にするのかに違いがある。自然を畏れ敬う事が日本人の基本。自然に寄り添わなければ生きていけないという考え方が美しい農耕社会を作ってきた。福島県飯館村は日本で一番美しい村と言われて来たのに、今は鉄柵を作って入れなくしている。

日本人にとっての根源的な自然観・人間観・宗教観に戻らなければこれから生き残るすべはない。二十一世紀は、土に根ざした可能な限り自給的な生活をしていかなければならない。

日本の生活形態の象徴としての天皇。修学院離宮を思い浮かべる。延々とした棚田の真ん中に修学院離宮はある。日本で一番美しい棚田。新しい文明を目に見えるものとして作り出す。日本の再生は、本当に自然と一緒になって生きて行くこと。自然を畏れつつ生きる新しい文明の在り方を世界に提示する。

原子力ムラの死に物狂いの反撃で再稼働が始まった。電力不足という脅迫は嘘。火力の増強で乗り切って自然エネルギーを開発する。CO2問題も克服可能。石炭ガス化の最高の技術を日本は持つ。それをやられたら原子力村が終わってしまうという危機感がある。

金か命かの話。具体的には江戸時代をモデルにする。ヨーロッパ型の発展モデルを日本に押し付けたノー天気な歴史観が江戸イメージに覆りつつある。明治以来突っ走ってきた近代の行き詰まりから江戸時代に舞い戻る。ヨーロッパに戻るよりも江戸に戻る」。

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高野氏の文明観には基本的に賛成である。ただ、江戸時代に回帰することは果たして可能であろうか。我々は精神において、もの考える基本・生活していく基本において、古代から継承されてきている日本人の自然観に回帰することが大事である。「自然に神が宿ると信じ、祭祀を行う」という信仰精神を基本にして生きと行くことが大事であると思う。その祭祀を行って来られた方が、日本国の祭祀主であらせられる日本天皇である。

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