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2012年7月27日 (金)

但野正弘水戸史学会理事の講演内容

『先哲に学ぶ会』における但野正弘水戸史学会理事による「継承された水戸の心-第二代藩主德川光圀(義公)」と題する講演の内容。

「関ヶ原から二十八年。大坂夏の陣・冬の陣から十数年後の戦国の風潮が残っていた時代に德川光圀は生まれた。家老に次ぐ役職であった三木仁兵衛之次の屋敷で生まれた。六歳で世子に決まる。江戸に出る。九歳で元服。十五歳から十七歳の時期は自由奔放な行動をした。江戸の町を遊び歩く。『ろっぽう・かぶきもの』と言われる。浅草でうどん打ちに興味を持つ。打ち方・切り方を習った。

十八歳の時、司馬遷の『史記』の『伯夷伝』を讀んで感動し反省し、人としての道に目覚める。光圀は、殷の紂王を討った革命思想を伯夷・叔斉が否定した事に感動した。ここから生活行動が変わる。

寛文元年(一六六一)七月、初代藩主・頼房が五十九歳で死去。その後を承けて光圀が三十四歳で二代藩主になった。六十四歳で引退するまで三十年間近世大名として生活。

毎年春、江戸城で勅使が将軍と対面、御三家の屋敷に勅使が来邸、天皇からの太刀を御下賜。御三家は返礼として伝奏屋敷(勅使の宿舎)に家老を差し遣わすのを恒例としていた。光圀は自ら威儀を正して伝奏屋敷に参上お礼を言上した。寛文二年四月、後西天皇の勅使が小石川水戸藩邸に来臨の際のことを記した『義公遺事』に次のように記されている。『官位を拝任仕り候者、上京参内之れ無きは有るべき事にあらず。況や勅使私宅へ参られ、御太刀頂戴仕り候を、使者を以て、御礼申し上る儀は、甚だ以て不敬の至、言語に及ばす候。尾州・紀州は御同心これなく候とも、此段は大義に候間、御身は向後定格を御敗候とも、毎度御礼に御越成さるべしとて、毎年勅使の旅館へ御越遊ばされ候』と書かれている。『大義に候間』という言葉と確信と理想が水戸の心を醸成。

『大日本史』の編纂事業では学問の重要さと人物を知る事によって人生の生き方を学ぶことを重視した。日本には人物中心の『紀伝体』がないので、『大日本史』編纂は『紀伝体』で行われる。『大日本史』編纂事業を通じての学問的研鑽、日本の歴史の神髄を把握。日本は建国以来、歴史の栄枯盛衰、国家的危機はあったが、一貫して天皇が国の中心。一度も革命は起らず、異民族による国家の滅亡や交替もなかった。国家的危機に際し、国の命たる皇統を護持し、歴史伝統の断絶を回避してきた事実と人物が厳然として存在。先人の血と努力によって日本の歴史は支えられてきたことを光圀は強く感じた。

光圀はその至高の人物こと楠木正成と確信。元禄五年(一六九二)、神戸湊川に佐々木介三郎宗淳を派遣し、光圀自ら隷書で『嗚呼忠臣楠子之墓』と書いて石碑を建立。『子』とは孔子・孟子の『子』と同じで『先生』という意。幕末、神戸を行き来した志士たちはこの碑を仰いで自らの決意を固めた。

支那は伯夷・叔斉、孔子・孟子が出たのに革命の国。日本には革命なし。『天皇家』という言葉は使わない。『皇室』である。

水戸二代目光圀の家訓には『我が主君は天子也。今将軍はわが宗室也。(宗室とは親類頭也)あしく了簡仕、取違へ申まじき』(『桃源遺事』)とある。尾張徳川家四代吉通の家訓には「三家之者は、全く公方(註・将軍)の家来にてはなし。今日之位官は、朝廷より任じ下され、従三位中納言源朝臣と称するからは、これまったく朝廷の臣なり。されば水戸の西山殿(註・光圀)は、我らが主君は今上皇帝なり。公方は旗頭なりとの給ひし由」(『円覚院様御傳十五ヶ条』)とある。

元禄三年(一六九〇)六月、光圀が六十三歳で引退帰国の日、三代藩主粛公綱条(つなえだ)への遺訓の詩に「旦暮忠純を慮れ。『古に謂ふ、君以て君たらずと雖も、臣臣たらざるべからずと』(註・孔安国の古文『孝経』の一節)と書いた。この『君』とは天子であろう。私はそう思う。徳川氏は旗本を含め七百万石、朝廷は公卿を含め十万石。朝廷は経済が大変逼迫していた。『君以て君たらずと雖も、臣臣たらざるべからずと』とはこの意味であろう。幕府は陽尊陰抑策をとった。

光圀は、元禄十三年(一七〇〇)一二月六日、七三歳で逝去。諡名は義公。水戸学という言葉は水戸から言い出したのではなく、他藩から言い出された」。

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