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2012年7月 6日 (金)

「日本刀─悠久の美をみつめて」展を参観して思ふ

本日参観した「日本刀─悠久の美をみつめて」展は、「日本刀文化について多くの方々に理解を深めてもらう事を主軸とすると同時に、その伝統技術の継承を担う現代刀職者を支援することも大きな目的としております。公募作品コンクールにおいて行われた、厳正な審査の結果を基に『作刀』『研磨』『外装』各部門の受賞作品を中心に展示いたします」(案内書)との趣旨で開かれた。

最近作られた剣、最近研磨された鎌倉期から今日までの剣が数多く展示されてゐた。それぞれ眩しいくらいの光を発してゐた。また形も美しい。鐔・柄巻・白鞘なども展示されてゐた。刀剣は武器であると共にまさに美術品である。剣を見ると身も心も引き締まる思ひがする。武器であって単なる武器ではなく、美術品であって単なる美術品ではないのである。

美しくそして清らかに研がれた剣を見て、大伴家持の歌である「剣太刀 いよよ研ぐべし 古(いにしへ)ゆ 清(さや)けく負ひて 来にしその名ぞ」(武門の象徴である剣太刀を愈々研ぐべきだ。昔から清く背負ってきた大伴といふ氏の名であるぞ、といふ意)を想起した。

日本の「武」はまさに剣と共にある。それは素戔嗚尊・神武天皇・日本武尊から発するわが国の伝統である。そして剣は、『神器』として敬はれた。

日本武尊は、「孃女(おとめ)の 床の辺(へ)に 吾置きし つるぎの大刀 その大刀はや」(孃女の床のほとりに、私の置いて来た大刀、あの大刀よ、といふ意)と歌はれた。

天皇の日本國御統治は「三種の神器」に表象されている。「三種の神器」は皇位の「みしるし」であり、御歴代の天皇は、御即位と共にこの神器を継承されてきた。鏡(八咫鏡・やたのかがみ)は祭祀、剣(草薙剣、くさなぎのつるぎ)は軍事、玉(八尺瓊勾玉・やさかにのまがたま)は農業、をそれぞれ表象してゐる。祭祀・軍事・農業を司りたまふ天皇の御権能が「三種の神器」にそれぞれ表象されてゐる。

 剣は武勇、そして克己の精神を象徴してゐる。『日本書紀』の「仲哀天皇紀」に、天皇の軍が筑紫に進軍したのを歓迎して筑紫の県主五十迹手が、「この十握剣(とつかのつるぎ)を堤(ひきさげ)て、天下(あめのした)を平(む)けたまへ」と奏上したと記されてゐる。剣は天下を平らげる武力を表してゐるのである。

また常設展示品である「国宝・普賢菩薩騎象像」なども拝観した。

さらに、屋外展示品も参観した。「大蔵鶴彦翁之略伝碑」(大倉喜八郎氏の略伝を記した石碑)があった。これは東宮大儒・勲二等・文学博士三島毅撰、日下部鳴鶴書である。三島毅(号・中洲)は、私の母校二松学舎の創立者である。明治初期の漢学者で、重野安繹、川田甕江と共に明治三大漢学者と言はれた。大審院判事、大審院検事長、宮中顧問官、東宮侍講(大正天皇に漢学・漢詩を進講申し上げた)などを歴任した。

日下部鳴鶴は、近代書家の最高峰と言はれる人。近代書道の確立者の一人である。二松学舎大学の書道教授であられた石橋犀水先生はこの方の門人。

大倉喜八郎墓碑銘も展示されてゐたが、これも三島毅篆額、日下部鳴鶴書であった。

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