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2012年6月21日 (木)

永井荷風の文明批評は今日においてもその輝きを失ってゐない

現代日本に対する警告・批判となり得る永井荷風の文章を紹介したい。

「丸善明治屋三越白木屋などクリスマスの窓飾を壮麗にす子女またクリスマスとて互に物を贈りて賀すといふ近年人心夷狄の祭祀を重んじ我邦在來の豊かにめでたき行事を忘るゝことを歎ずべしといふ者あり。」(『毎月見聞録」大正五年十二月二十四日)

「若し直に國辱の何たるかを問はば獨り對外交渉のみに止まらず現代の世態人情悉く國辱となすに足る…試みに停車場に入りて掲示を見よ。蟇口を開いて貨幣を見よ。皆外國の文字あり。此の如きは欧米何處の國に至るも決して見る事能はざるものなり。…我邦人もしそれ博愛仁義の意を以て外夷の便宜を圖るものとなさば、世界外交文書の例に倣ひて須らく仏蘭西語を以てすべきなり。…全國停車場掲示の英語は屡々人をして神國六十餘州宛ら英米の植民地たるの思ひあらしむ。そもそも異郷人の異國に遊場むとするや先づその國の言語を習得するの用意なかるべからず。外客の便不便は元来その國人の深く問ふべき處にあらず。」(『麻布寿襍記』・大正十三年)

           ○

かかる傾向は、今日のわが國に於いてますますひどくなってゐる。いはゆる横文字の氾濫は、日本國が一体どこの國かと思はしめるやうな状況である。横文字とは英語のことであるが、最近はハングル文字・支那簡体字までもが其処此処に掲示されてゐる。

以前、当時の駐日韓國大使と懇談する機會があり、小生が「ソウルに行くとハングル文字ばかりで漢字が使はれてゐないので、何にもわからない。道路標識などには感じも使ったらどうですか」と言ったら、大使に「日本人に分かってもらふために書かれてゐるのではない」と反駁されたことがある。

日本が支那や南北朝鮮に対して軟弱な外交姿勢をとるに比例してわが国内に支那簡体字やハングル文字の標識や案内板が増えたやうである。

『日本國憲法』といふ名の占領憲法は、昭和二十二年五月三日に施行された。この日の永井荷風の日記『断腸亭日乗』には、「五月初三。雨。米人の作りし日本新憲法今日より實施の由。笑ふべし。」と記されてゐる。

永井荷風の文明批評は、今日においてもその輝きを失ってゐない。

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