この頃詠みし歌
朝の雲しばし眺めて今日もまた ただひたすらに生きんとぞ思ふ
咲き盛る路地の花々 その名をば知らぬ我にも美しきかな
いしにゑを生きたる人を今日もまた偲ぶ心に霊園を歩む
飴なめて疲れを癒す時の間に幼き頃を思ひ出しをり
老人がフルスピードで自転車を操り行くを見て危ぶみぬ
線香に火をつけて手を合はすなり 紫煙たなびく父の霊前
頭上げ晴れたる空を眺むれば爽やかにこそ初夏の風吹く
満月の照り輝ける下にしてスカイツリーの灯り美し
淡路島で獲れし小魚食しつつ原稿を書く静かなる夜
子の親にも人の夫にもならずしてあはれ齢は六十路半ばに
根津嘉一郎の屋敷の跡の庭園を経巡りて新緑の光り楽しむ(根津美術館)
深山に入り来たりし思ひにて歩み行く庭の緑瑞々し(同)
美しき面の佛に真向ひて与謝野晶子の歌思ひ出す(同)
青山の道を歩みてこれの地が焼き盡されし空襲を思ふ
谷中寺町狭き路地裏歩み行く夕暮時に題目の声
雨に濡れ歩み行くなる男一人 生きてゆかねばならぬ思ひで
またしても降りだしし雨に濡れつつも忙しなく街を歩み行きたり
火鉢とか炬燵といふものなくなりて電気に頼る生活(たつき)なりけり
ワイシャツを買はむとすれど押しつける如き物言ひに腹立ちにけり
無理矢理に売りつけむとする店員を厭ふ心に店を出で来ぬ
窓の外に新緑燃ゆる部屋にゐて恋歌のことを語る真昼間
洗ひ終りし衣類をベランダに干しにけり明るく晴れし五月の朝(あした)
初夏の光り新緑をなほ際立たせ若き命が甦りたり
日出づれば五月の空は明るくて心すがしくなりにけるかも
かがまりて床拭きをればわが顔より汗流れ落ち夏は来にけり
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