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2012年2月14日 (火)

この頃詠みし歌

父への挽歌

まだ温かき父の體に手を当てて永久の別れを告げにけるかも

永久の眠りにつきたまひたるわが父の胸に手を当てればまだ温かし

ぬくもりの残りたる胸に手を当てて永久の別れを告げにけるかも

つらいよといふ言の葉を幾度(いくたび)か聞きし切なさに胸張り裂ける

とことはに覚めることなき眠りにぞつきたまひたる父に手を合はす

九十二年生き来し父は悲しくも一人でこの世を去りたまひたり

體のぬくもり次第に無くなりゆく時に我は一人で嘆くのみなり

逝きませし父の亡骸は悲しくも今看護師に清められゐる

冬の世に父は逝きたり雪降れば雪も悲しきなべて悲しき

可愛がられし甥がさめざめと泣きをれば肩をさすりてなぐさめにけり

喪服来て葬儀場に来たる冬の朝 今日はわが父のみはふりの日ぞ

般若心経誦すれば父はやすらけく浄土への道を歩みたまふか

父上のやさしき遺影に向ひ坐し南無大師遍照金剛唱へまつれり

父上の遺詠に向かひ合掌す たゞやすらかに眠りませとて

これの世を去りたまひたるわが父の遺影の笑顔を見つめつゝをり

朝夕に父の遺影を拝ろがめば やさしき笑顔で我()を見そなはす

手を合はす我をやさしく見そなはす 父の遺影はなつかしきかな

夜の闇に舞ひ落ちる雪を眺めつゝ逝きませし父を一人偲ぶも

胃瘻といふ延命策は苦しみを延ばせしのみと思ふ悔しさ

苦しみの果てに逝きたる父のことを思へば胸も張り裂けむかも

血のつながりある人々がうち集ひ食事するなりみはふりの後

丘の上のみ寺の墓地にわが父に永久の眠りにつきたまひたり

光明真言唱へまつりてわが父のやすらけき眠りを祈りまつれり

           ◎

茶房にて立川談志の本を読む立川談志の住みゐし町で

萬葉人の歌は今も生き生きと わが魂(たま)にひびくことのうれしさ

あと三十年生きることをば決意して心身ともに老いを拒否せむ

凛として生きよとの声がわが内より聞こえ来るなる一人居の部屋

久方ぶりに食せしカレーの美味きかな 新宿中村屋は親しかりけり

スカイツリー冬の日の下にすっきりと立つを眺める冬の朝かな

両の手を太陽に向けて深呼吸すればうれしき冬の朝かな

「反米はいかん」と我にのたまひし赤尾敏先生逝きて幾年

生きてゐることの喜びかみしめて今昇り来る朝日拝ろがむ

冬枯れの木々を眺めて 木々の命蘇り来る春をし待たむ

寒風の吹き来る夜に一人して酒房に行かむと信号を待つ

見晴るかす美しき海が突然に襲ひ来るなる恐ろしさかな

天然の美といふ歌をうたひつつ日本に生まれし幸を思へり

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