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2011年12月 5日 (月)

黒田勝弘産経新聞論説委員・ソウル駐在特別記者の講演

『アジア問題懇話会』における黒田勝弘産経新聞論説委員・ソウル駐在特別記者の講演内容は次の通り。

「十月に満七十歳になった。ソウルの外人記者クラブでお祝いパーティーをやってくれた。ソウル駐在の外国記者で六十歳を超えた人は、タス通信とCSラジオの記者と私の三人のみ。七十歳という気分にならない。

共同通信の記者だったが、一九九八年、ソウル五輪直後に産経に移った。一九七八年に語学研修で韓国に来て以来、三十年間韓国ウォッチングをしている。若干ぬるま湯的で外に出ると風邪をひきそうな気がする。日本では通用しないのではないかという感覚がある。ソウルは壮大な田舎という感じがする。キチキチしていない。必ずしも法治主義ではない。個人の意思や情が通用する。大きな声を出すと得する。コネを使えば出来ないことでも出来る。ゲマインシャフト的社会。こういう社会に住むと日本に帰って来ると疲れる。日本では人間の情に立脚した弁明を応対してくれない。韓国は隙間社会が厳然と残っている。融通が利く。臨機応変。プラスマイナスはあるが、長く韓国にいると日本には住めなくなる。七十歳で支局長を辞めた。韓国・中国は肩書き社会。韓国では新聞社の支局長とは販売店主のこと。論説委員は韓国ではすごい権威。

現時点での僕と駐韓国日本大使館の最大の懸案は、日本大使館前に慰安婦記念碑を建設される計画。十二月十四日に大使館前で慰安婦たちの水曜デモがある。千回記念で記念碑を作る。『朝日』は『平和の碑』と報道している。僕は、これはとんでもないことと思って怒っている。これを許したら駐韓国日本大使は本国召還ものだと言っている。日本大使館の真正面の十メートル離れたところに慰安婦の碑が建てられることを阻止できねば、外交的大失態となる。大使館は何とか抑えようとしている。あと二週間もない。ソウルの道路上の構造物は区役所の管轄事項。区長の許可が必要。昨日(注・十二月二日)女性代表が区長に談判に行った。結果はまだ聞いていない。許可が出れば彼らは碑を作るし、不許可でも集会をやる。日本の支援団体も東京で集会をやる。

台湾は来月十四日に総統選挙が行われる。民進党総統候補は女性候補の蔡英文。韓国の与党ハンナラ党の次期大統領候補は朴槿恵。韓国は女性のリーダーシップに否定的。朴槿恵は独身。韓国の古い世代には『夫も持たず子供も育てない人間が大統領になれるのか』という批判がある。台湾で蔡英文が勝利すれば韓国の朴槿恵にとって有利になる。

韓国はもう一回保守が勝たないと社会的に北朝鮮融和に転じる。日米韓の信頼関係が揺らぐ。親北左翼政権が十年続いたので、教育が北融和に傾いた。革新系NGO出身の人がソウル市長になった。弱者保護・福祉強化の人が当選した。李明博は経済人。分配より成長、働く人より企業を重視。格差社会が出来た。世の中は金持ちより貧乏人が多いから、福祉論争は野党が有利。あと一年あるから起伏があるが、朴槿恵は楽観出来ない。

ロシア・中国・台湾・日本は政権交代期。北朝鮮は様子見という事になるのか、政権交代期に何かを仕掛けるのか、私は前者だと思う。北朝鮮は強盛大国(注・政治思想軍事経済強国を築くこと)を叫んできた。ニ〇〇五年は、金日成生誕百年・金正日七十歳・金正恩三十歳の記念の年と設定している。思想と軍事はある程度達成できた。次は経済思っている。国民に経済でも良いことがありましたよという事を国民に見せねばならない。来年はコメを確保せねばならない。『食糧危機だ』と言ってコメの備蓄を集めている。北が対外軍事的冒険をやるかことがプラスかマイナスか、私はこの一年は静かにするのではないかという判断。

日本には中国脅威論があるが、日本人には中国ファンが多い。心底中国が嫌いという日本人はいない。日本人にとって中国は遠くから見る富士山だから美しい。コリアにとって中国は近くから見る富士山だからゴツゴツした溶岩が見える。ソウルで中国が好きな人は少ない。中華料理屋は少ないしまずい。華僑は二万人くらいしかいない。北朝鮮は三万から五万。大陸周辺では少ない。華僑ですらコリアは住みにくい。嫌われる。韓国人は中国が本当に嫌いだが、いつも気を使わねばならない。韓国には親中国の文化人・知識人はいないのではないか。朝鮮戦争では中国が攻めてきた。韓国人は『中国人は貧しく汚い』と露骨に言う。中国観光から帰ってきた人は中国を悪く言う。中国に対して日本は甘く、韓国はリアリズム。日本文明は平安時代から成立している。韓国はかなり中国文化を受け容れている。漢字を簡単に捨ててしまったのはハングルナショナリズムのせい。強制したわけではない。漢字ハングル併用論も大きくならない。公務員試験で漢字は使えない。中国は漢字を捨てた韓国より漢字を使う日本が可愛い。韓国には『北の核は民族の核だ』と言う若者がいる。」

     

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