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2011年8月22日 (月)

猪瀬直樹氏の講演

八月十七日の『一水会フォーラム』における猪瀬直樹東京都副知事の講演

「明治維新で、日本人が世界史の中に入って行った。時間的・空間的に自分たちが何処にいるのかを発見した。それまではガラパゴス(独立した小宇宙)であった。黒船が来て世界史の扉が開いた。黒船の射程距離に江戸城があった。黒船はヨーロッパ文明の化身。近代が我々の前に現れた。

アリューシャンから台湾までの列島は、大陸が外に出る通路を塞いでいる。日本列島以外のアジアは帝国主義に呑み込まれてしまった。一九四五年八月十五日以降、日本は戦争を想定外にした社会になった。そういう時代は人類の歴史には無い。戦争を想定して全てのコミュニティ・国家・村を作って来た。戦後の日本はディズニーランドのような世界にいる。門番のアメリカ兵は見えなくなっている。ディズニーランドの内側は平和。日本の戦後は幸福な時代を生きた。東日本大震災で、戦後は終わった。震災後社会に入った。想定外は無い。

東京湾に天然ガス発電所を作る。東京水道の海外進出を開始。国際貢献ビジネス。東京の水は世界一の水。去年の今頃マレイシアに売り込みに行った。水道は大変な技術の結晶。江戸の町には辻々に水道があった。羽村の堰から玉川上水を通って太い木簡の水道が江戸の町に来ていた。緻密な設計だった。高低差で設計して八王寺の水が江戸に流れた。

二宮金次郎が薪を背負っていたのは、お金になるから。エネルギーを売っていた。近世と近代の違いは電気というエネルギーがあるかないか。近世のエネルギーは焚き木。『桃太郎』の『お爺さんは山に柴刈りに』というのは、エネルギー源の枯れ木を狩りに行ったのだ。その日の燃料を山に取りに行った。黒船も『薪をよこせ』と言った。産業革命は近代革命の基本パワー。日本はヨーロッパの制度のみならずエネルギーを受け入れた。それが石炭であり電気だった。

『江戸交通百年』とは『電気百年』。芝浦に火力発電所を作った。明治四十四年、東京市電気局創設。路面電車(市電)事業と電気供給事業を開始。西武・東急などは自分で電力を供給しなければならなかった。小さな発電所は数多くあった。戦時統制で一つになった。昭和十七年、電力管理法に基づく電力統制により配電部門を東京市電気局から分割、関東配電(東京電力の前身会社)に移譲。こうした経緯から、東京都は東電の設立当初から大量の株を取得している。東京都のバス事業会計に東京電力の配当金が入る。それで何とか赤字にならない。

夕張に東京都職員を派遣した。それが被災地支援のモデルになっている。森ビルは、六本木ヒルズに外資の店子を得るために六本木ヒルズの地下に発電所を作った。ゴールドマンサックスにとって想定外はあり得ない。大規模ビルでは一定期間の電力を賄う非常用電源が装備されているケースが多いが、震災後に燃料不足が起これば、機能を停止せざるを得ない。しかし、六本木ヒルズの場合、ガスタービンを活用したシステムのため、燃料である都市ガスが供給されている間は発電が可能。まさに都心の発電所の機能を果している。

東京が大地震に襲われても、分散型で生き残れる余地を作る。『東京エリアの地下発電所として東京湾に百万キロワットの天然ガス発電所を作ろう』と石原都知事に提案した。急場をしのぐには天然ガスでないと駄目。八月二日にプロジェクトチームを立ち上げた。

全国知事会で、福島県知事から、『東京は福島の原発から電気の供給を受けているのに、感謝の気持ちが無い。その代り原発反対のデモ隊を寄こす』と文句を言われた。フラストレーションがたまっていた。こういう時に福島を助けないといけない。節電が大事だと言っても、電気の生産者の姿が見えないと実態が分からない。

昭和十六年夏、総力戦研究所で日米戦争の展開を研究予測した。その結果、『開戦後、緒戦の勝利は見込まれるが、その後の推移は長期戦必至であり、その負担に日本の国力は耐えられない。戦争終末期にはソ連の参戦もあり、敗北は避けられない。ゆえに戦争は不可能』という『日本必敗』の結論を導き出した。これは現実の日米戦争における戦局推移とほぼ合致するものであった。

昭和十二年から十三年にかけて人造石油計画(石炭液化)を立てたが、工場で生産できるまでにはいかなかった。ドイツは成功した。

中東石油一辺倒では危ない。油母頁岩(ゆぽけつがん・オイルシェール。油母を熱分解することで、合成石油にすることができる。石油の代替エネルギーとなり得るという)はカナダなどに無尽蔵にある。当面は、天然ガスしかない」。

         ○

大変勉強になった。私の母は、戦前の独身時代に、東京市電気局に勤務していた。電気局の由来というか故事来歴を初めて知ることができた。

東京の大震災が来た時に、エネルギー源の確保が大問題となる。我々は原子力発電の危険性を、身を以て体験した。代替えエネルギーを真剣にそして早急に確保しなければならない。

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