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2010年7月13日 (火)

永井荷風の愛国心

荷風は「愛國主義」について次のやうに論じてゐる。「われ等は徒に議員選擧に奔走する事を以てのみ國民の義務とは思はない。われ等の意味する愛國主義は、郷土の美を永遠に保護し、國語の純化洗練に力むる事を以て第一の義務なりと考ふるのである。」(『日和下駄』・大正四年)

麗しい祖國の自然と純粋なる國語を護ることが愛國であると主張するのである。この主張は現代日本においてこそ、重要な意義を持つ。わが國の維新の道統は、政治経済体制の変革のみではない。その根本に國民精神の変革浄化が為されなければならない。日本固有の美、傳統信仰、秀麗なる日本の自然そして自然に宿る神への畏敬の念、祖靈に対する尊崇の思ひを涵養することが根本である。

また終戦直後、荷風はすでに自ら好んで世捨て人のやうな生活をしてゐたにもかかはらず、国語の傳統維持の重要さについてさらに次のやうに論じた。

「いづこの國に限らず、國民は祖先傳來の言語を愛護し、それを丁重に使用しなければならない責任があります。いかなるものでも放擲して時勢の赴くまゝにして置けば破壞されてしまひます。絶えず之を矯正したり訓練したりして行かねばなりません。言語と文章の崩れて行くのを矯正して行くのが文學者の任務でせう。」(『亜米利加の思出』・昭和二十年十二月)

日本人はやまとことば・言霊への信がなければならない。それが真の愛國であり國粋精神である。そして言葉の乱れを正すのが文学者の使命であり責任である。それを世間を韜晦する人生を歩んでゐたとされる荷風であったがそのことは正しく自覚してゐたのである。

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