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2009年4月17日 (金)

千駄木庵日乗四月十六日

午前は、医師の往診あり。父母に付き添う。

その後、訪問看護師と共に父母のお世話。

午後二時より、豊島区立千早地域文化創造館にて、「萬葉會」開催。小生が、狭野茅上娘子(さののちがみのおとめ)と中臣宅守(なかとみのやかもり)の歌を講義。

狭野茅上娘子は萬葉後期を代表する女性歌人。激しい恋愛歌を残している。それが次の歌である。

  

君が行く道の長手を繰りたたね 焼き滅ぼさむ天の火もがも

「あなたが行く長い道を、くるくると手繰り寄せるようにして、焼き滅ぼしてくれる天の火がないだろうか。(そうすれば、あなたは私から離れて遠くに行くことが出来なくなるだろうから)」という意。

 狭野茅上娘子は女嬬(天皇のお側で奉仕する女官)であった。そういう立場の女性は、天皇の寵愛を受ける可能性がある。従って、臣下の男性と密かに恋愛関係になることを厳しく禁じられていた。結婚する時は、朝廷の許しを得なければならなかった。ところが狭野茅上娘子は中臣宅守と密かに結ばれてしまった。そのため宅守は越前に流された。この歌は、宅守が越前に出発する時に歌った歌。

激しい思ひをそのまま歌いあげた歌。女官をつとめる女性だけあって、天から降って来る火が愛する男が歩いて行く道を焼き滅ぼすという、神秘的・宗教的発想である。

中古時代の代表的な女性歌人・和泉式部には

「つれづれと 空ぞ見らるる 思ふ人あまくだりこむ ものならなくに」(『玉葉』所収)

「何となく空が眺められることよ。恋い慕っている人が天から降りて来ることなどありはしないのに。」という意。

という歌がある。

これも宗教的・神秘的発想の恋愛歌。「天降り」というのは神話的発想ですらある。わが国の傳統的信仰精神である「天上の世界への憧れの心」と、戀愛の心が一体となった歌。

狭野茅上娘子と和泉式部という二人の女性歌人の美しくも激しい恋愛歌は、不滅の価値を持って、現代にまで伝えられている。

帰途、講義に参加された二人の法律家の方と懇談。「萬葉集」・憲法問題などが話題になった。

帰宅後は「政治文化情報」の発送準備など。

         ○

森田健作さんは、千葉県知事当選後は、少しはしゃぎ過ぎたのではないだろうか。思想的には、我々に近いものがあると思われるので、心配である。

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