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2009年3月23日 (月)

千駄木庵日乗三月二十二日

午前は父母のお世話。

午後からは在宅して資料の整理。

         ○

神奈川県大磯町の旧吉田茂邸が全焼した。まことに残念なことである。

先帝・昭和天皇さまは、昭和三十年に次のような御歌を詠ませられた。

 小田原に往復の折、吉田茂元首相の家の前を通りて詠める

往きかへり 枝折戸を見て 思ひけり しばし相見ぬ あるじいかにと

                          」

昭和天皇が大磯の吉田邸の前をお通りになった時の御製である。政権の座を追われて失意の状態にあった吉田氏をお励ましになった御製と拝する。昭和天皇におかせられては、吉田元総理を本当にご信頼になっていたと拝察する。占領下にあって、苦労を共にされたからであろう。昭和天皇と吉田茂元総理との関係はまさに、「君臣水魚の交わり」に近い麗しい関係だったのではないかと、小生は考える。

 吉田茂氏は、昭和二十六年のサンフランシスコ講和条約調印式出席前後の心境について、「唯奉敕使萬里外 五洲視聴聚一身」と揮毫した。天皇の勅命を奉じて外交にあたるという自覚を吐露した漢詩である。

昭和二十七年十一月十日、今上天皇が立太子の礼の時、吉田茂総理大臣は寿詞(お祝いの言葉)で、自らを「臣 茂」と読み上げた。

 

「占領憲法」には「主権在民」と規定され、曲學阿世の憲法學者にの中には「日本の元首は内閣総理大臣だ」などと論ずる輩もいるのに、吉田氏は天皇の臣下としての自覚と矜持を持っていた偉大なる政治家であり、まさに昭和の忠臣と言って良いであろう。

 最近の政治家と官僚の質の低下は目を覆いたくなる。その根本原因は、彼らの道義心・正義感・使命感の欠如にあると指摘されている。わが國の道義心・倫理観の根本は天皇への忠節の心と國を愛する心である。現下日本の政治・行政の腐敗の根本原因は、政治家や官僚に「尊皇愛國の心」が希薄になっているからである。

 

政治家や官僚は、日本國の神聖なる君主であらせられ日本國民の道義心の鏡であらせられる日本天皇へのかしこみの心が基本になければならない。歴史を回顧すれば明らかなように「天皇の臣下」という自覚があれば、極悪非道なことはできない。今日の政治家・官僚のみならず一般國民にも、天皇の臣下・天皇の民としての自覚の回復が大切である。

 

 天皇陛下に対し奉り、吉田茂元総理と正反対の考えを持っていたのが、後藤田正晴氏であった。後藤田氏は、平成十二年十二月五日号の『日本経済新聞』で、中央省庁再編に関するインタビューに答えて、「まず大臣という名前を変えたらどうか。だれの臣下ですか?行政の長なんだから『長官』でいい」などと述べた。

 これは天皇を君主と仰ぐ神代以来の日本國體を否定し、さらに現行憲法体制においても日本は立憲君主國であるという事実を否定する許しがたい発言である。社民党や共産党や極左分子がこのような発言をするならともかく、警察庁長官・内閣官房長官・自治大臣・内閣副総理を歴任し体制側の頂点に立ったと言ってもいい政治家が、國體否定の思想を持っていたのである。政治家・官僚の道義感・尊皇精神の低下を体現した人物が後藤田氏であった。

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