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2008年8月23日 (土)

千駄木庵日乗八月二十二日

午前は父母のお世話。訪問看護師の方と共なり。

昼は知人と懇談。

午後は「政治文化情報」の原稿執筆。完成。印刷所に送付。

その後、書状執筆など。

                   ○

以下の文章は、湾岸戦争の翌年すなわち平成三年にある雑誌に書いた拙文である。独りよがりかもしれないが、いささか先見の明を誇りたいと思い、掲載させていただく。

『平成の御代になり世界は文字通り激変した。ソ連および東欧の共産主義体制の崩壊はその最大のものであった。のみならずこれまで長い間世界を侵略し共産化せんとして来たソ連という国家そのものが瓦解し地上から無くなってしまった。それに伴い東西冷戦構造も消滅した。しかしこれで世界は平和になるなどと考える人はそう多くはあるまい。もしそういう人がいるとすればあまりにも愚かと言うべきである。

 これまでの東西冷戦構造の時代はアメリカとソ連という二超大国の世界支配が強大であったので民族間・国家間の対立抗争は押さえられてきた。言ってみればソ連とアメリカという重石が「冷戦構造」という名の「平和」を維持して来たと言って良い。今日それが無くなってしまったのだ。そして国家と国家・民族と民族・宗教と宗教の鋭い対立抗争の時代に突入したのだ。とてもとても「対立と分断」の時代が終結し「尊敬と協調」の時代が到来したなどと手放しで喜ぶわけにはいかないのである。このことは昨年の湾岸戦争という事実が何よりも雄弁に証明している。

 また、民族主義は急速な科学技術の進歩と世界の統合化現象によって、人類の中に吸収され消滅するという見方がある。しかし歴史的社会的に長い時間をかけて形成されて来た運命共同意識としての民族主義は如何に世界の統合が進んでも消滅するものではない。このことは、民族を超え国家を超えんとした共産主義が破滅した後において、民族主義が破滅しなかったどころか逆に勃興したという事実によってと明白である。どんなに科学技術が進歩し世界統合化現象が顕著になってきたように見えても民族主義はなお根強く生き続けるのである。

 共産主義という誤れるイデオロギーの呪縛から解放されたソ連東欧の人々は民族主義へ回帰しつつある。しかもそれはかなり尖鋭的にして排他的な民族エゴ国家エゴとして噴出している。ユーゴスラビアや旧ソ連の国内紛争を見てもわかるように経済の不均衡と民族間の武力抗争問題が新たなそして深刻な問題として浮上してきた。アジアにおいてもしかりである。朝鮮半島の統一はまだまだ実現しそうにないが、仮に実現したとしたら、今度は新たに日本にとって大きな脅威となる反日軍事大国の出現という事態になるという見方もある。中国の共産主義体制が崩壊した場合の中国大陸の混乱はソ連東欧の比ではなかろう。さらに日本にとって問題なのは、大東亜戦争開戦以来五十一年を経過した今日、日米の経済対立がかなり深刻化していることである。

 「今は昭和十六年当時と同じ新たな『戦前』だ」と言う人までいる。しかもさらに問題なのは、「新たな戦前」が始まっていると言われているにもかかわらず、日本にとっての「戦後」は終わっていないことである。アメリカは今になって「リメンバー・パールハーバー」を再び言い出しているのに、日本は今でも相変わらず「ノーモア・ヒロシマ」を言い続けているのである。これは実に危険なことなのである。

 要するに戦後四十数年間の米ソ二超大国支配という旧秩序が崩壊した後、それに代わる新秩序が構築されず混乱と闘争の世界が現出しつつあるのである。しかもわが日本はこうした事態に正しく対応できる国家体制を確立していない。大東亜戦争侵略史観(東京裁判史観)に呪縛されたまま、戦後体制(護憲安保体制)を解体することもできず、「平和国家」の虚名に酔い、ただただ経済大国・技術大国として「富と技術」の力で激動の世界をわたっていこうとしているのみである。「富と技術」で世界の貢献するというのは良い。しかし、今日の日本は確かに豊かであり技術もあり平和であるかもしれないが、反面日本を正しくリードすべき政界も官界も財界も言論界もそして宗教界までもが腐敗堕落の極に達している。

 現代社会は精神的にも物質的にも大きな困難に直面している。各地で民族紛争・宗教紛争が起こり、資源が枯渇し、自然破壊が進み、人類は不幸への道を歩んでいるといっても過言ではない。

 この根本原因は、砂漠に生まれ、神と人間が隔絶した関係にあり、自然を人間の対立物ととらえ、一つの神・一つの教義を絶対視して他を排除する一神教的思想を淵源としている西洋の文化・文明にあると考えられる。これを根本的に是正すべき時に来ている。

 そのためには、自然と共に生き多くの神々や思想を融合調和してきた東洋の精神文化文明の多神教の精神、とりわけ、稲作生活を基本とした神代以来の天皇中心の祭祀国家・信仰共同体を今日まで保持しつつ、西洋文化・文明を受容し、それを発展せしめ、もっとも発達した工業国なった日本の精神伝統が大きな役目を果たすと考える。

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