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2006年2月17日 (金)

千駄木庵日乗二月十六日

午後一時半より、豊島区千早社会教育会館にて、『萬葉會』開催。中大兄皇子の『大和三山』の御歌を講義。

「香具山は 畝火ををしと 耳梨と 相爭ひき 神代より かくなるらし いにしへも しかなれこそ うつせみも つまを 爭ふらしき 」

といふ御歌である。

この御歌を、額田王をめぐる中大兄皇子と大海人皇子との争ひの歌であると解釈する説がある。そしてこの「争ひ」が、後の「壬申の乱」の遠因であったとするのである。         

しかしこの御歌は、「神代の神ですら妻争ひをするのだから、人間が妻争ひをするのは当然である」と歌はれてゐるだけである。この御歌は、斉明天皇が、百済救援のために筑紫に赴かれた時、播州の印南・加古に立ち寄られた際、天皇に供奉した中大兄皇子が、出雲の阿菩大神が夫婦喧嘩の仲裁のためにお出ましになったといふ「伝説」をお詠みになったにすぎないものである。

 古代の男女関係を現代の道義感覚で判断すべきではない。古代の貞操観念は後世のそれとは異なってゐた。皇子二人の妻争ひから大動乱になったと考へるのは、後代人の考へ方である。『萬葉集』から歴史的事実を引き出して来ようとするのは、間違ひに陥り易い。

古代日本の道義観・神観・人間観は、外来思想がふかく染み込んだ後世のそれとは異なるところがあるのである。

そもそも、畝火山は男性の山であり、香具山と耳梨山は女性の山なのである。つまり、この歌は一人の男性をめぐる二人の女性の争ひを歌った御歌なのである。

帰宅後は、原稿執筆。

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